勝ち点の計算で言えば、引き分けという結果はバルセロナの勝利となる。ここ最近のチャビは負傷者の影響で、“偉大なるバルサのフットボールの本質”よりも結果を優先してきたが、マドリーとの勝ち点9差をキープできれば上出来となる今回の一戦でもその優先順位を変えず、しかしながらそのプレーアイデアを“深化”させてくるかもしれない。対して、アンチェロッティに出し惜しみをしている余裕はない。マドリーは優勝争いの行方を分からなくするため、可能な限りアグレッシブに行くことを義務付けられている。
■バルセロナはペドリ不在でもMF4枚起用へ
以上のことを踏まえると、バルセロナとマドリーはここ最近に見せてきた強みをしっかり発揮しなくてはならない。チャビは再び、MF4枚を同時起用するシステムを使うだろう。ライン間でビルドアップからフィニッシュの連結役を務め、二列目からの飛び出しでゴールも請け負うペドリが間に合わなかったのは、確かに痛手と言うほかない。それでもチャビは、ペドリの代わりにケシエを起用して、システムを変えることなくやり繰りするはずだ。
ケシエは器用な選手で、フィジカル的にチームを支えるだけでなく、ボールを保持する上でも一役買うことができ、攻撃を仕掛ける意思も忘れない。バルセロナはケシエのほかガビがアンカー(カマヴィンガ)の両脇を突き、ハフィーニャが中央へ切り込むダイアゴナル・ランでDFラインに亀裂を入れ、レヴァンドフスキがポストプレーから優位な状況をつくり出す……。彼らにはマドリーの守備に問題を生じさせるポテンシャルがあり、誰が何と言おうとも、やはりボールを持っていないときよりも持っているときの方が、ずっと優れたチームであり続けている。
バルセロナは前回のコパ・クラシコで失ったポゼッションを取り戻しつつ、しかし極めて慎重にボールを扱わなくてはならない。マドリーのトランジションからの攻撃を許してはならず、また前線からプレスに行くタイミングもちゃんと判断する必要がある。ここ最近のクラシコで、バルセロナはプレスの回数をあからさまに減らしており、プレーのリスタート時やボールを奪えると感じるタイミングでしか行かなくなった。この傾向は間違いなく、それまでの対戦で生まれてきたゴールが相手陣地でのボール奪取に端を発しているためだ。チャビはボールを奪われて後方に走ることを避けたがっている。そして間違って速攻を許してしまったときの二重の保険がアラウホ、クンデ、クリステンセンの3枚のCB起用と、Gテア・シュテーゲンの存在である。ドイツ人GKは今季絶好調。本来のクオリティーを各試合で示して、バルセロナが1失点ものの危機を迎える度に救世主となっている。
そして、アラウホの貢献も再び鍵を握ることになるだろう。彼は今回も右サイドバックとしてプレーする。機能しているものをわざわざ変える必要などないのだから。アラウホはおそらく、ヴィニシウスを終始止めることができる唯一のDFだ。相手のドリブルに対する素早い反応、体の動きの修正能力、フィジカルの強さでもってブラジル人FWを完全に抑え込んでしまえる。加えてチャビはブスケツ、またはフレンキー・デ・ヨングを動かしてヴィニシウスが内に切り込むコースも塞いでいる。バルサ指揮官は知っているのだ。マドリーが焦りを募らせていくと、その攻撃が背番号20の個人技頼みになってしまうことを。Getty Images
■マドリーはモドリッチ&クロース、サイドチェンジが鍵を握る
さて、ではアンチェロッティはどうするのだろうか。マドリーにとっては勝利しか価値のないクラシコであり、勝つために最善の状況をつくり出さなければならない。先のリヴァプール戦ではボール回しにおけるクロースとモドリッチの重要性を改めて実感することになったが、カンプ・ノウでもサイドからもう片方のサイドまでピッチを幅広く使うことが肝要となり、両ベテランMFは必要不可欠となる。マドリーは彼らを起用して、テア・シュテーゲンの近くで守備ブロックをつくるバルセロナを穿つ術を見つけなければならない。
マドリーは攻撃の重心はもちろんヴィニシウスが位置する左サイドに偏っているが、バルセロナの守備の重心もそちらに傾かせておいて、一気に逆サイドを突くのは有効な手となるだろう(ここ最近のマドリーはこうしたサイドチェンジを使っていなかった)。右サイドで深みを取るのは、バルベルデかカルバハル。または“アンフィールドでの5-2”のときのようにロドリゴをスタメンで起用して、重心をどちらかに偏らせることなく、よりワイドに攻撃を展開してもいいかもしれない。Getty Images
リヴァプールとのセカンドレグは、クロップのチームがあまりに情けなかった試合ではあったものの、それでもマドリーはある程度の手応えをつかんでいる。彼らはチャンピオンズの夜に、またもや断固たる決意と才能を誇示したのである。ボールを素早く回しながらサイド、中央に選手を密集させて攻撃を仕掛け、ミドルシュートからゴールをうかがうことも忘れない。そう、バルセロナが引いて守るときにそのDFラインを上げさせるためにも、攻守が激しく入れ替わる殴り合いの展開を避けるためにも、プレーを切ることができるミドルを打っていくことは重要だ。またここ最近プレーへの参加数が少なくなっているベンゼマが、ライン間でパスの受け手となってボール回しをさらに活性化させることも大切だろう。
マドリーはここ最近のクラシコのようにヴィニシウスのドリブル突破だけに頼ってはいけない(しかもアラウホに無効化されている)。加えて、激しく、執拗にプレッシングを仕掛けることも不可欠だ。ブスケツとフレンキー・デ・ヨングを自由にさせず、バルセロナが中央ではなくサイドから攻撃を展開させるようにした方がいいだろう。いずれにしてもカルバハル、ミリトン、リュディガー、ナチョは中盤との距離をしっかり狭めて、リスクを減らさなくてはいけない。そうできなければ、バルセロナが前を向いて走るスペースを手にし、ラ・リーガ優勝を決定づけるゴールをかっさらうことになる。
今回のクラシコはラ・リーガ優勝争いの終点にも、最終節まで続くかもしれないデッドヒートの始点にもなり得る。マドリーかバルサ、バルサかマドリー……果たして、どちらが笑うことになるのだろうか。試合終了のホイッスルが吹かれた後、両者ともに笑っていることは、あり得ない。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』副編集長
翻訳=江間慎一郎
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