【ELGOLAZO × DAZN NEWS 連動企画（前編）】識者二人が見た6 月シリーズの戦果 Vol.1 PARAGUAY。〜8番タイプの二人が台頭。“6番”との融合にも期待〜 ｜ キリンチャレンジカップ2022

本人たちが待ち望んだIH起用

（C）Norio Rokukawa

インサイドハーフ（以下IH）の起用法に、一石を投じる――。

いまや森保ジャパンの鉄板コンビとなった、守田英正と田中碧のIH。その中盤中央に、パラグアイ戦で新風が吹き込まれた。鎌田大地と原口元気。いずれも、IHでのプレーを熱望していた二人である。

まずは鎌田。今回の6月シリーズに入ってからも、「IHをやりたいということは、鳥栖時代から言い続けてきた」と話していた。19年3月の森保ジャパン初招集時は1トップに配置され、その後は［4-2-3-1］のトップ下に。昨秋に調子を落とし代表から招集外となったが、ちょうど同時期にチームは［4-3-3］に布陣変更。IHに守田と田中が台頭した。

「強いチームには、攻撃的なIHがいる」

かねてから、鎌田はこう主張していた。マンチェスターCのケビン・デ・ブライネを例に挙げたことも。そして自らの適正も、そこにある。「10番、トップ下をやることもあるけど、僕がこの世界で上にいくためには8番（IH）でプレーすることだと思う」（鎌田）。

今回、W杯まで半年を切ったこのタイミングで、そのときはやってきた。

原口はどうか。彼はヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代に、当初IHで起用された過去があった。本人は乗り気ではなかったというが、普段プレーするドイツでも徐々に中央で起用されることが増えていく。

「サイド以上に頭で考える必要があるポジション。もちろん攻撃も守備も、運動量と強度の両面が求められる。いまは自分の力を一番発揮できる場所だと思う」

渡欧後、原口のプレー強度は年々向上。ドリブル自慢のサイドアタッカーが、ここ数年で新たなポジションで新たなサッカーの楽しさや奥深さに触れ、自分の中に確かな変化を感じ取っていた。変身した姿を日本代表で証明したい。原口にとっても、IH起用は待望の瞬間だった。

“8番”台頭が広げる可能性

（C）Norio Rokukawa

パラグアイの強度は想定以下のレベルだったが、それを差し引いても、二人のプレーは際立っていた。巧みなポジショニングで敵の隙間を縫う鎌田。その一連の動きは「リアルポジションはIH」という主張を後押しするプレーに映った。原口は、より激しく振る舞った。特に攻撃から守備への切り替えとその強度は出色。さらに縦に速く行く場面と冷静にパスをさばく場面の使い分けを、シンプルかつ迅速な判断で繰り返した。

そして、鎌田は1ゴール1アシスト、原口も2アシストと見事に得点にも絡んだ。IHとして合格のプレーだった。

守田と田中はIHでもボランチ系、いわゆる6番タイプだ。一方、鎌田と原口はより攻撃的な8番タイプ。彼らは互いに相棒として共存できるバランス関係にある。

6番と8番のフュージョン――。W杯本番では攻勢、守勢を調節していくことが必要だ。それを担うIHの多彩なハンドリング。彼ら選手間の競争はもちろんだが、何より融合こそが、森保ジャパンの器量を大きくする。

文・ エル・ゴラッソ日本代表担当　西川結城

サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の日本代表担当記者兼、事業開発部統括マネージャー。過去に名古屋、川崎F、FC東京担当を歴任。名古屋担当時代に本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その他雑誌『Number』や新聞各紙にも寄稿する。

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