【ELGOLAZO × DAZN NEWS 連動企画（前編）】識者二人が見た6月シリーズの戦果 Vol.3 GHANA。〜課題はボールを受けるプレー。柴崎よ、「止まれ」〜 ｜ キリンカップサッカー2022

ふわり、ひらりとピッチを浮遊

ふわふわと浮遊していた。ガーナ戦にフル出場した柴崎岳である。ただ、それはネガティブな意味ではない。

この試合の中盤の基本陣形は、アンカーに遠藤航、インサイドハーフに久保建英と柴崎。きれいな逆三角形が維持される時間は少なく、特に柴崎が味方の位置を見ながら前後左右に流動した。本人はこう振り返る。

「タケ（久保）が10番タイプで、自分はリンクマンとしてアンカーの（遠藤）航とタケの間のポジションをサポートした。航が出て行ったときは空いたスペースを埋めようと思っていたし、タケが流れてきたら僕が違うサイドに流れていくとか、ある程度指示らしい指示は言わずに自由に動かしながら、その逆にしっかり動く形は意識してやっていた」

味方の位置を見て、ふわり、ひらりとミドルエリアを移動する背番号7。このボールのないところでの動きの質が高かった。

プレーメーカー。そう、世間やサッカーファンが柴崎に抱くイメージは、パスをさばいて中盤から攻撃を構築するプレーだろう。4年前、ロシアW杯のベルギー戦で、原口元気の先制点をお膳立てしたあの一撃スルーパスは、彼のハイライトでもある。

いまの柴崎は、ボールを受けるプレーに正直物足りなさがある。自陣に引いて守るガーナに対して、後方のビルドアップをサポートする位置取りをすること。また、CBやSBからビルドアップしていくパスの流れの“出口役”として、敵と敵の中間ポジションでパスを受けること。この日、柴崎の動きを注視していたが、本来であれば期待したいこのあたりのプレーの精度に課題が残る。

田中や守田はあえて「止まる」

相手の立ち位置を見ながら、自分がどこに動きパスを受けることが効果的か。相手と相手の中間ポジションをとりながら、ボールを動かしていくことに長けているのが、守田英正や田中碧である。同じ川崎Fでプレーした中村憲剛氏は、彼らのプレーを言語化する上で「止まることの大切さ」という表現を使う。つまり、中盤でパスを引き出す上で常に動くのではなく、狭小スペースでもあえて「止まる」。止まった自分にマークがつけば、その動いた敵がいた場所にスペースが生まれる。もちろん、止まることで自分と相手の間に適度な距離感も生まれる。正確な技術をもつ選手であればあるほど、それを生かすために、この「止まる」という行為が重要となる。

柴崎は、細かい動き直しをよくしている。止まれば“一瞬の間”を作れるような場面でも、動いていることが多い。結果、無用に敵との距離が縮まり、パスを受けにくくなる。技術は申し分ないだけに、「止まる」感覚が体に染み付いていないのが、とても惜しい。

オフ・ザ・ボールの働きはよく、循環役としては機能していた。物足りないのは、オン・ザ・ボールのプレー。有機的にボールを引き出し、紡いでいく動きが、柴崎には欲しい。

文・ エル・ゴラッソ日本代表担当　西川結城

サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の日本代表担当記者兼、事業開発部統括マネージャー。過去に名古屋、川崎F、FC東京担当を歴任。名古屋担当時代に本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その他雑誌『Number』や新聞各紙にも寄稿する。

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