スペインフットボール連盟（RFEF）の競技委員会は3日、ラージョ・マハダオンダ（スペインリーグ3部所属）のセネガル人GKシェイク・カネ・サール（23）を2試合の出場停止とした。
スペイン首都に本拠を構え、レアル・マドリー下部組織のMF中井卓大がレンタルで在籍しているクラブとしても知られるマハダオンダ。同クラブは30日にバスク州ビスカヤ県のクラブ、セスタオ・リーベル・クラブとのアウェー戦に臨み、試合終盤に嘆かわしい出来事が起こった（なお中井は招集外）。
2-1でセスタオがリードしていた87分、マハダオンダの守護神シェイクは観客から「クソッタレの黒人」や「走れ、クソ猿」など人種差別の言葉を浴びせられたとして、激昂してスタンドに駆けつけ、観客のマフラーを思い切りつかんだ。審判は観客に対して攻撃的行為に及んだとして、シェイクにレッドカードを提示。するとマハダオンダは差別への抗議としてプレーの再開を拒み、試合を放棄している。
そしてRFEFの競技委員会は3日に当該試合に関する処分を発表。この試合をマハダオンダの0-3敗戦とする没収試合とし、さらに同クラブに罰金3006ユーロ（約49万円）を科した。シェイクは軽度ながらスポーツマンシップに反する行為に及んだとして、2試合の出場停止処分を命じられている。その一方で、観客が人種差別行為に及んだとされるセスタオは6001ユーロ（98万6000円）の罰金を科されるとともに、2試合を無観客で開催することを義務付けられた。
なおシェイクはこの処分が科される前日に記者会見を開き、自身の行動が軽率であったことを謝罪しながらも、人種差別に対しては絶対的に拒絶する意思を示していた。
「自分の振る舞いについて、フットボール界に謝りたい。もう一度同じことが起こったとき、同じようなリアクションを取ることはない。然るべき振る舞いを見せようと思う」
「本当にひどいことだった。自分が犠牲者ではあるが、それでもフットボール界に謝る必要があると思う。あの人間（人種差別を行なったとされる観客）のためではなく、フットボールのイメージを守るために謝らせてもらうよ」
「侮辱を受けていたときは、本当に辛かった。僕はあらゆることを叫ばれていた。彼をつかんだのは、なぜ僕が侮辱を受けなければいけないのか、彼に家族がいるのかを聞くためだった。それに彼は高齢者だったし、模範的な振る舞いを見せなければいけないはずだ」
シェイクは同会見で、自身に対する支持を表明し、「その勇敢さは僕たちのインスピレーションになる」とも語ったレアル・マドリードFWヴィニシウス・ジュニオールへの感謝の言葉も伝えている。
「同じことを経験したヴィニシウスと、この命が尽きるまで寄り添う覚悟だ。人種差別に意味なんてない。僕は彼のことを本当に誇りに思っている。彼が僕への支持を表明してくれたことに感謝をしたい」
「もし、すべての有色人種がヴィニシウスのようだったら、人種差別は終わりを迎えるだろう」
対して、セスタオ側は処分が科される前、「試合の主役たちに対して人種差別的なチャントは行われなかった。その証拠に、審判もエルツァンツァ（バスク州警察）も何も報告しなかった。テレビでもそうした映像は確認されていない」との声明を発表していた。またシェイクに差別的な言葉を投げかけたとされる人物は同選手から暴力を受けたとして、警察に被害を届け出ることを検討したと報じられている。
ただ、スペインのスポーツ紙『マルカ』が3日付の1面で「もし人種差別を本当に終わらせたいならば、シェイクは処分を受けるべきではない」と記すなど、今回シェイクが処分を受けたことは同国で賛否両論となっている。
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