車いすテニス・小田凱人 全豪オープン2025激闘録[1]
文=細江克弥
日本のエース
日本のテニス界には、4人のエースがいる。
男子シングルスは2015年に世界ランキング4位にまで上り詰め、35歳になった今も最前線で戦い続ける錦織圭。女子シングルスは4度のグランドスラム制覇を誇り、2019年に世界ランキング1位に君臨した大坂なおみ。彼らに加えて世界が注目するのは、昨夏のパリ・パラリンピックで金メダルを獲得した車いすテニスの両エース・小田凱人と上地結衣だ。
とりわけ小田は、18歳の若さ、そしてその若さが生む独特の鋭さも手伝って、さらなるブレイクの予感を漂わせる。
“車いすテニスを引っ張ってくれ”
2006年5月に愛知県で生まれた小田は、プロサッカー選手を夢見る普通の少年だった。9歳の時に骨肉腫を発症したことで車いす生活がスタートとしたものの、導かれるようにして車いすテニスと出会い、その面白さに気づいて熱中した。四六時中ラケットを握り、車いすと一体となってボールを打ち続けた。
14歳で出場した18歳以下の世界一決定戦で優勝すると、翌年にはジュニア世界ランキング1位に君臨。16歳の誕生日を直前にしてプロ転向を表明すると、同年の年間王者を決めるマスターズで優勝し、史上最年少で世界王者となった。
そこからのセンセーショナルなるブレイクはまさに一瞬の出来事だ。
プロ2年目の2023年は1月の全豪オープンで2位。6月の全仏オープンでグランドスラム(4大大会)初優勝を飾り、史上最年少(17歳1カ月2日)で世界ランキング1位を確定させた。その勢いを止めることなく、続く7月の全英オープンでも頂点に立ち、世界にその名を轟かせた。
「車いすテニスを引っ張ってくれ」
同年1月に現役引退を発表した国枝は、そんなメッセージをわずかな躊躇もなく17歳の小田に贈ったという。受け取った小田は、翌2024年のパリ・パラリンピックで頂点に立ってその想いに応えた。
「このために生まれてきたんだなと今日、再確認することができました」
金メダルを手にそう話した小田は、偉大なる先人の名誉を守りながら自らが先頭に立つ新しい世界を作る、そのスタート地点に立った。
トップアスリートの中でも際立つキャラクター
車いすテニス界のトッププレーヤーとして世界を飛び回る彼に対する興味は、もちろんテニス界の外にもものすごいスピードで波及している。
日本ではスマートフォン『Google Pixel』のCM出演をはじめ、スポーツ関連のコンテンツはもちろん、この年末年始もさまざまなメディアへの出演によってすっかりお馴染みの顔となりつつある。
それにしても、八面六臂の活躍でメディアを賑わせる彼を見るたびに思う。
18歳にしてはあまりにも強すぎる。18歳にしてはあまりにも聡明すぎる。言葉のチョイスが秀逸すぎるし、あまりにも大人びている——。
あくまで「ように見える」という印象論でしかないのだが、受け取る側にそう思わせるだけのパワーが、彼のフィジカルとメンタルには間違いなくある。ポジティブに解釈すれば“リスペクト”、ネガティブに解釈すれ
ば“生意気”とも取れらかねないその不確かさこそ、トップアスリートの魅力をさらに引き出す特別なエネルギーだ。
ベストショットを求めて
プロ4年目を迎えた彼は、シーズン最初のグランドスラム『全豪オープンテニス』に臨む。
スポーツストリーミングサービス『DAZN』は、全豪オープンの公式スマートフォンパートナーであり「TEAM Pixel」として彼をサポートする『Google』とともに決戦の地メルボルンに渡った。
聞きたいことはひとつ。
小田凱人にとっての「ベストショット」とは——。
DAZN NEWSでは連覇を目指して戦う全豪オープンの奮闘記を詳細に伝え、ストリーミングサービス『DAZN』では現地で行われた臨場感あるインタビューを収録したドキュメンタリーを配信する。