女子を銀メダル獲得に導いた『走るバスケ』へスタイル変更
バスケ男子日本代表は7月1日と3日にワールドカップ予選のWindow3、いずれも敵地オーストラリアでのオーストラリア戦、チャイニーズ・タイペイ戦に臨む。
昨年11月のWindow1、今年2月のWindow2の4試合で1勝3敗。東京オリンピック終了後にトム・ホーバスを新たな指揮官に迎えた日本代表は、いまだ思うような結果を出せていない。しかし、NBAウィザーズで主力を務める八村塁を中心に、サイズのある選手で世界の強豪と真っ向勝負を挑んだフリオ・ラマスの前体制から180度転換、ホーバスが女子日本代表を率いて東京オリンピック銀メダル獲得の快挙を成し遂げた、女子の『走るバスケ』を採用している。
スピードと3ポイントシュートを軸とするバスケに取り組み始めたばかりなので、結果が出ないのは仕方のない面もある。来年夏のワールドカップは日本とフィリピン、インドネシアの共催で、日本は開催国枠での出場を与えられているため、今回の予選を通してホーバスの新たなスタイルに合う選手を見つけ出し、チーム戦術を浸透させることは、勝敗よりも重要な要素となる。
ラマス体制では3ポイントシュートを得意とするシューターが重宝されたとは言い難い。また高さとフィジカルを優先したため、小さくてスキルのあるガードは富樫勇樹の実質1枠で、残る選手にはほとんどチャンスが与えられなかった。それが指揮官交代により、ガードはスピードとスキルがあればサイズを問わず抜擢され、シューターはチームの生命線として大きな期待を寄せられるようになっている。ガードのポジションでは齋藤拓実が、シューターとしては西田優大がWindow1とWindow2ですでに主力級の存在感を見せている。
富永啓生と河村勇輝が「満を持して」日本代表入り
そして、今回のWindow3に向けた代表候補で注目されるのは、富永啓生と河村勇輝だ。
富永は桜丘高校3年だった2018年、高校バスケ日本一を決めるウインターカップで6試合で平均39.8得点を記録して大会得点王に。その後はアメリカに渡り、昨シーズンはネブラスカ大の一員としてNCAAでプレー。昨夏は3人制バスケ3x3の日本代表として東京オリンピックに参加した。本人が「50%は決めたい」と意気込む3ポイントシュートはもちろん、中に切り込んでビッグマンのマークを受けてもシュートを決めきる得点能力はオリンピックで実証済み。日本人離れしたオフェンス能力が5人制の日本代表でどう生かされるのかは楽しみで、エース級の活躍を期待したい。
河村は富永とともにウインターカップを盛り上げたポイントガードで、圧倒的な得点能力を見せる富永を退けて福岡第一を優勝に導いている。この頃から自分のスピードだけでなく、判断力の良さを生かしたパスで高速トランジションを繰り出していた。その後は東海大でプレーしつつ、特別指定選手としてBリーグでも経験を積み、スピードという長所を損なうことなくプレーの精度を高め、身体的にも強くなっている。
富永も河村も今回の代表合宿参加メンバーで最年少の21歳だが、「満を持してのA代表入り」の感がある。いずれもホーバスの求めるスピーディーな攻守の切り替え、3ポイントシュート重視のスタイルにフィットできるはず。代表ではルーキーとなるが、実績ある選手たちを上回るインパクトを求めたいところだ。
オーストラリアは『世界』を経験させてくれるバスケ大国
7月1日に対戦するオーストラリアは、2018年6月に行われた前回のワールドカップ予選で、八村やニック・ファジーカスの活躍で大金星を挙げた相手。苦戦続きの日本代表にとってターニングポイントとなる勝利だったが、それは過去の話。オーストラリアは多くのNBAプレーヤーを擁しながら国内組と上手く組み合わせて強力なチームを作り、東京オリンピックでは銅メダルを獲得。現在の世界ランキングは3位となっている。
今回はオーストラリア国内でプレーする選手のみでチームを編成しているが、NBA経験豊富なマシュー・デラベドバがチームを束ねることになりそうだ。高さとフィジカルで日本代表を圧倒してくるのは間違いなく、スキルも高い。日本の『走るバスケ』がどれだけ機能し、相手を振り回せるかがカギになる。
前述した齋藤と西田、富永と河村はもちろん、テーブス海や吉井裕鷹、またベテラン組でも藤井祐眞やエヴァンス ルークなど、ホーバスのスタイルに噛み合うことでポテンシャルを爆発させるであろう可能性を持った選手たちは多い。
オーストラリアはアジアの大会で『世界』を経験させてくれるバスケ大国で、チーム作りの進捗を図るには格好の相手。今の日本代表の力がどれぐらい通用するのか、全力でぶつかって、一つでも多くのチャレンジをしてほしい。
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