オーストラリアの勢いに飲まれ、積極性を欠いて大敗
7月1日に行われたワールドカップ予選、日本代表はオーストラリアに52-98の完敗を喫した。オーストラリアは世界3位の強豪で、名実ともにアジアのトップチーム。昨夏の東京オリンピックを終えてトム・ホーバスを新たなヘッドコーチに迎え、スタイルを刷新したばかりで、成熟度の足りない今の日本代表が太刀打ちできる相手ではなかった。
来年のワールドカップは開催国枠で出場権を得ている日本にとって、今回の予選はチーム作りの進捗を確認する場だが、勝敗を抜きにしても成果があったとは言い難い。指揮官は試合後の会見で「練習でやってきたことを試合で見せられず、フラストレーションが溜まった」と感想を語っている。
勝敗が決した第4クォーターこそ25-30と持ち直したものの、この時点でオーストラリアは本気ではなかった。第1クォーターは富永啓生の連続3ポイントシュートがあっても13-22と差を付けられ、第2クォーターは4-25と攻守に良いところなし。第3クォーター終了時点で27-68と、最終スコア以上に試合展開は日本に分の悪いものだった。
NBA経験豊富なマシュー・デラベドバとソン・メイカーは、前回のワールドカップ予選で日本に敗れる屈辱を味わっている。その後に大躍進したオーストラリアにとっては過去のエピソードかもしれないが、この試合でも先発した彼ら2人は序盤にかなり強い気持ちを持ってプレーしていたようだ。日本はこの勢いに飲まれ、試合を通じて立て直すことができなかった。
特に目立ったのはオフェンスにおけるチームの連動性の欠如だ。指揮官は「何本かブロックを浴びたことでペイントアタックへの積極性を失ってしまった」と振り返るが、5アウト(コート上の5人全員が3ポイントラインの外にポジションを取る)の状態から相手ディフェンスを崩すアクションがほとんど見られず、スクリーンを掛けにいくビッグマンの動きも少なかった。今のバスケでは基本戦術となるピック&ロールが機能せず、かといって1対1を仕掛けて得点を奪えるわけでもない。相手のディフェンスを受けつつ放つ確率の悪い3ポイントシュートばかりが多く、3ポイントシュート成功率は27%と低調。この単調な攻めで日本のオフェンスにリズムが出るはずもなかった。
劣勢の中、富永啓生は18得点を記録
それでも、富永は5本の3ポイントシュート成功を含む18得点を記録。選手をテストする意味合いの強い試合でタイムシェアが徹底されていたが、23分半だったプレータイムがさらに増え、彼のオフェンス能力を生かすチーム戦術が加われば、まだまだ得点は伸びるはず。3ポイントシュートが代名詞ではあるが、スピードを生かしてレイアップを決めたシーンも伸びやかな動きでオーストラリアのディフェンスをこじ開けており、シューターの枠に留まらないエースとしての活躍が期待される。
さらに言えば、西田優大、この試合が代表デビュー戦となった吉井裕鷹も、チーム戦術が機能しない中でオフェンスの責任を自分が負うという気持ちを出し、チャレンジし続けていた。チームの中には早々に気持ちが折れてしまい、積極性を欠くプレーに終始した選手も少なくなかっただけに、23歳の西田、24歳の吉井が気持ちの入ったプレーを見せてくれたことには救われた感もある。
次戦は7月3日のチャイニーズ・タイペイ戦。練習でやってきた『新しい日本代表のバスケ』をどれだけのレベルで見せられるかが問われるのはもちろん、河村勇輝などオーストラリア戦ではベンチから外れた選手のプレーにも期待したい。
ただ、本当に期待したいのはオーストラリア戦で積極性を失った選手たちの奮起だ。1日夜には渡邊雄太がアジアカップ出場のため日本代表に加わることを表明した。渡邊が加われば、プレーの面でもリーダーシップの面でも日本代表は大きくレベルアップするだろうが、それでは『海外組頼み』の印象がさらに強まる。そうでないところを示すパフォーマンスを、特にベテラン勢には見せてもらいたい。
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