『3ポイントシュートが決まるかどうか次第』の日本代表
バスケットボール男子日本代表は今日、ワールドカップ予選でカザフスタン代表と対戦する。開催国枠でワールドカップ出場を決めている日本代表だが、この試合は来年夏のワールドカップに向けた貴重な強化の機会となる。
8月25日に行われたアウェイのイラン戦では、アメリカ政府が自国民に対してイランへの渡航を禁じていることから、ヘッドコーチのトム・ホーバスとアソシエイトヘッドコーチのコーリー・ゲインズが遠征に参加せず、登録メンバー12人の枠も満たさず11人で戦う、テスト要素の強い試合となり、結果として68-79の完敗を喫した。
ホーバスの志向する、トランジションを常に意識して3ポイントシュートで打ち勝つアグレッシブなんバスケは、この夏の代表活動期間を通して選手への浸透が進んだが、3ポイントシュートが決まるかどうか次第の部分も大きい。
ホーバスの下、東京オリンピックで銀メダルを獲得した女子日本代表は、同じスタイルで戦いながらも、3ポイントシュートが入らない間は粘り強いディフェンスを見せた。さらにオブボールの動きでフリーを作り、カットインにパスを合わせる絶妙なコンビネーションで2点を取っていくことで食い下がるなど、3ポイントシュートの爆発を待つことができた。だが、今の男子日本代表はまだその域にない。
3ポイントシュートを無理に打つことで確率が上がらない
イラン戦はその課題が露呈する試合となった。フィールドゴール64本のうち40本が3ポイントシュートであり、スピードに乗った素早い仕掛けから3ポイントシュートを打つ形は作れているが、相手も警戒するため確率が上がらず27.5%(40本中11本成功)だった。
選手個々が3ポイントシュートの精度を上げること、よりオープンなチャンスを作り出すチームオフェンスの成熟も必要だが、効果的にインサイドを攻めて2点シュートが奪えないことが課題となっている。イラン戦での2点シュートの成功率は58.3%(24本中14本成功)と高かったが、中を攻めきれずに時間がなくなり、強引に3ポイントシュートを打つことで、無理に打たない2点シュートの確率は高く、チームの生命線である3ポイントシュートは本数こそ多いが確率が伸びない。
そういう意味では今日のカザフスタン戦で久々の代表復帰を果たすニック・ファジーカスにかかる期待は大きい。ファジーカスはBリーグ以前から日本でプレーする最強の外国籍選手であり、日本国籍を取得して日本代表に加わると、得点力とリバウンド力でチームに大きく貢献した。
しかし、2019年のワールドカップで全敗に終わったことで風向きが変わり、スピードのないファジーカスは代表選考から次第に外れていくことになる。ファジーカスはその決定に内心では憤慨していただろうが、かねてから昵懇の仲であるホーバスの求めに応じて、日本代表に戻ってきた。
2点シュートを決める力、ファジーカスは今も突出
すでに37歳、スピードに難のあるファジーカスは今の日本代表の『走るバスケ』にはフィットしないと思われるかもしれないが、先に挙げた日本代表の課題の多くを解決できる選手でもある。2点シュートの精度、シュートに持ち込むまでのバリエーションの多さや駆け引きも含めたスキルで、ファジーカスを上回る選手はいない。
また、身長207cmでウイングスパンも長いファジーカスはゴール下のディフェンス、リバウンドでも機能する。外に引き出されてスピード勝負になると振り回されてしまうが、リムプロテクターとしての能力は高く、まだまだ若いシェーファー・アヴィ幸樹や井上宗一郎にはできない仕事がファジーカスにはできる。
ホーバス就任直後にファジーカスを招集していれば、彼を使ったセットオフェンスに頼ってしまい、3ポイントシュートを打つ意識の浸透を阻んだかもしれない。だが、その意識が定着した今、ファジーカスはチームに多くのプラスをもたらす『異物』になれる。それと同時に彼はBリーグでのキャリアを通じて3ポイントシュートの成功率が40%を超えており、3ポイントシュートでオフェンスを引っ張ることもできる。
ボール奪取から素早くプッシュする攻めの形はできた。そのままトランジションでチャンスを作れればシュートまで持ち込めばいいが、そうでなかった時にファジーカスがのしのしと上がってくる。そこにボールを入れてすぐに3ポイントシュートを打つもよし、彼がパスをさばいてインサイドアウトの攻めもできるし、彼を使ったピック&ロールもある。スピードという弱点はあるにせよ、そこをチームでカバーできれば、彼は代表にまだまだ多くのものをもたらせるはずだ。
【バスケ男子日本代表】カザフスタン戦の前日練習&インタビュー【FIBA】
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