ハイペースのオフェンス合戦に持ち込んで奮闘
ワールドカップ開幕まであと1週間。バスケットボール日本代表は大会直前の強化試合3連戦の2試合目として、フランス代表と対戦した。
フランス代表は東京オリンピックにユーロバスケットと国際大会で2年連続でファイナル進出を果たした強豪チーム。今年のNBAドラフトで1位指名を受けた注目の若手、ビクター・ウェンバンヤマは代表参加を辞退したが、その分だけ経験と実績のあるチームとなっており、今回のワールドカップでもアメリカ代表と並ぶ優勝候補と見られている。
対する日本代表は、先のアンゴラ戦で足首を痛めた渡邊雄太が欠場。ケガの程度は軽いものの大事を取り、ベンチから声を出す盛り上げ役に回った。
試合開始から3ポイントシュートを射抜かれ、NBAのスタービッグマンであるルディ・ゴベアにフリースローとゴール下で連続得点を奪われて0-7とされるも、河村勇輝のアシストから富永啓生の3ポイントシュートで初得点を記録してからは互角の攻防を繰り広げる。出足の鋭いディフェンスで相手のターンオーバーを誘い、速い展開から3ポイントシュートを放つ狙い通りのバスケを展開。第1クォーターは2点シュート5本、3ポイントシュートと14本と完全にアウトサイド主体の攻めで一時は逆転、20-23という上々の内容で終えた。
第1クォーターから選手を矢継ぎ早に入れ替える日本に対し、主力が長くプレーするフランスは第2クォーターがセカンドユニットの時間帯。ここで流れを引き寄せたかったが、ベテランのナンド・デ・コロに巧みな動きから9得点を固められ、ジョシュ・ホーキンソンとルーク・エヴァンス、帰化選手が1人もコートに立たない時間帯にはインサイドを止められず、40-45で前半を終えた。
後半も流れは変わらず。ハイペースのオフェンス合戦に持ち込むまでは良いのだが、そこで打ち負けてしまう。コートに立つどの選手も攻守にハッスルし、序盤から飛ばした結果、終盤にはやや疲れが見えてペースダウン。最終スコア70-88で敗れた。
チームディフェンスの連携にはいまだ課題
(C)JBA
攻守に速いペースを作り出し、チーム全員が全力でハッスルするところまではできている。それでもフランスが日本の3ポイントシュート主体の攻めに大して対策を打たず、オープンで打てる機会が多いにもかかわらず試合を通じて3ポイントシュート成功率は29.5%と低かった。本大会では相手が入念に3ポイントシュート対策をしてくる中で、40%の成功率が求められる。
3ポイントシュートの成功率は物足りないにせよ、シュート総数72本のうち44本が3ポイントシュートで、チームで良いチャンスメークはできている。それでも富永が10本、富樫勇樹が9本と3ポイントシュートを打つ選手には偏りがあり、警戒すべき選手が少なければ相手ディフェンスは対応しやすい。原修太や比江島慎、西田優大、井上宗一郎など3ポイントシュートを得意とする選手はより積極的に打ち、打つ中でシュートタッチを調整して成功率を上げてもらいたい。
オフェンス以上に問題なのはディフェンスだ。全員が足を動かし、世界トップレベルのプレー強度を誇るフランスを相手に押し負けないよう全力でプレーしていたために「健闘した」という印象はあるものの、チームディフェンスの甘さはかなり目立った。自分のマークマンを見失いゴール下でフリーにしてしまったり、マークの受け渡しが遅れたりと、単純かつ致命的なミスが何度もあり、フランスの2点シュートは42本中27本、成功率64%で決まった。
ズレが生じていない時はハッスルして、よく頑張っているように見えるが、単純なミスからイージーバスケットを許す場面が多い。トム・ホーバスが率いて世界で上位に食い込んだ女子日本代表ではほとんど見ることのなかったミスが頻発するのは、チームの成熟度がいまだ足りないからだが、あと1週間でどこまで仕上げられるか。組織ディフェンスの課題は渡邊がラインナップに戻っても解決しない。オフェンスは及第点以上のパフォーマンスができているだけに、ディフェンスでどれだけ単純なミスを減らせるかが日本のカギとなる。
セカンドユニットを引っ張る富樫勇樹
(C)JBA
それでもフランス戦では収穫も多かった。日本よりもチームの始動が遅かったフランス代表はまだまだ『慣らし運転』ではあったが、それでも個人能力は圧倒的に高く、個々のマッチアップで日本の選手が粉砕されてもおかしくなかったのだが、むしろ個人レベルでは健闘が目立った。
ポイントガードの河村勇輝は何人かの選手と阿吽の呼吸が成立しており、富永の欲しいタイミングでボールを共有して気持ち良くシュートを打たせているし、フランスのプレッシャーに負けることなくコントロールしてホーキンソンの3ポイントシュート、ダンクシュートを連続でアシストするなど、見事なプレーメークを見せた。若き司令塔は7得点5アシストのスタッツ以上の存在感を見せている。
その一方でベテランも存在感を発揮。チームの得点源である富永が河村とセットで起用される状況で、富樫は自ら積極的にアタックすることで富永の20得点に次ぐ15得点を記録。Bリーグでのプレーに比べると代表では得点よりプレーメークに重点を置くが、「今チームが何を必要としているか」を把握して結果を出せる点で非常に心強い。アンゴラ戦では存在感のなかった比江島慎も、フランスのディフェンスを個人でこじ開けるパフォーマンスで13得点を記録。フランスが気を緩めたり、少し疲れが見えた時間帯を見逃さず、少しのズレがあれば果敢にアタックして結果を残した。
渡邊が欠場し、ホーキンソンも調整段階で23分しかプレーしない状況で、先発組では河村と富永が、セカンドユニットでは富樫と比江島がオフェンスを牽引し、得点力不足を感じさせなかったのは大きな収穫だ。馬場雄大もアンゴラ戦に続き好調をキープ。フランスの個人能力にやられる場面もあったが、それでも負けん気を奮い起こして、消極的になるのではなくより積極的になる、馬場本来の気持ちの強さが出ている。
調整段階のフランス代表にあっさり敗れた試合ではあったが、収穫も課題もはっきりとあった良い強化試合となった。8月19日に行われる最後の強化試合、スロベニア戦では渡邊雄太も復帰する見込み。課題を克服し、さらに大きな収穫を得て、ワールドカップ開幕を迎えてもらいたい。
ハイライト
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