格上ベネズエラに苦戦した前半
(C)FIBA
バスケットボール日本代表はワールドカップで1次リーグ突破を果たせず、17-32位を決める順位決定戦に回ることになった。目指すはアジア勢で1位になれば手に入る来年のパリオリンピックの出場権だ。1次リーグでは日本を除くアジア勢がすべて3戦全敗。日本だけが1勝というアドバンテージを持ち、残る2試合を連勝すれば文句なしで目標達成となる。
8月31日に対戦したのはベネズエラ。FIBAランキングは17位、36位の日本より格上で、日本が撃破したフィンランドの24位よりも上位だが、攻守が噛み合わず主力にケガ人も出て、1次リーグを3戦全敗で終えている。それでも、仕切り直しとなった順位決定戦ではエネルギー全開で日本に挑みかかってきた。
これに対して日本は受け身に回ってしまった。ここまで攻守に大活躍してきたジョシュ・ホーキンソンがこの試合ではシュートタッチが悪く、フィールドゴール7本中成功なしと大ブレーキとなった。それでも課題だったインサイドのディフェンスで、ホーキンソンと渡邊雄太を軸によくしのぎ、オフェンスが機能しないなかでディフェンスから押し返そうとしたのだが、相手の外のシュートに当たりが出始めるとズルズルと引き離された。
第4クォーターに爆発した比江島慎の勝負強さ
(C)FIBA
第3クォーター終了時点で53-62。渡邊雄太が「今日はずっと相手のペース。勝てたのが不思議なぐらい相手のペースだった」と振り返る苦しい展開だった。
その悪い流れを終盤に払拭したのが比江島慎だ。シュートタッチは良かったがファウルトラブルでプレータイムを制限されていた比江島が、第4クォーターにコートに戻ってその勝負強さを爆発させる。
ちょうどこのタイミングで、主力を2人ケガで欠いて10人で戦っていたベネズエラが、序盤からエナジー全開で飛ばし続けた反動による疲労の色を見せ始めていた。比江島の3ポイントシュート、肩を痛めてロッカールームでテーピングを巻いて戻ってきた馬場雄大のスティールから河村勇輝のレイアップ、そしてタフショットをねじ込む比江島の連続得点と、活性化した日本のオフェンスがベネズエラを圧倒し始める。
こうなると満員の沖縄アリーナの観客も大いに盛り上がり、ホームの雰囲気でベネズエラの選手たちを圧倒する。相手は疲労に加えて精神的なプレッシャーも浴びたことでミスを連発。タイムアウトでも悪い流れを切れず、完全な日本のペースとなった。
ホーキンソンもシュートは最後まで入らなかったが、タフに戦って相手のファウルを引き出し、フリースローで貴重な得点を重ねていく。そして残り2分を切ったところで、馬場がスティールからそのまま速攻に転じて比江島のレイアップに繋ぎ、75-74と逆転する。絶好調の比江島はこの時、相手のブロックを予見してタイミングをずらし、ファウルを引き出しながら得点を決めている。
悔しさを味わってきたベテランたちが見せた最高のパフォーマンス
(C)FIBA
比江島がこのバスケット・カウントのフリースローを決めて76-74。日本の勢いはその後も増すばかりで、この後の2分間を10-3と圧倒して、ベネズエラに付け入る隙を与えなかった。
比江島は22分半のプレーでフィールドゴール12本中8本成功、3ポイントシュートに至っては7本中6本を決めて23得点を記録。試合後には「これまで本当に苦しい経験をしてきました。そのメンバーがチームを引っ張れて良かった」と語る。
フィンランド戦の勝利で主役となったのは河村勇輝と富永啓生、次世代のニュースターだったが、この試合では比江島と渡邊、馬場に富樫勇樹と、これまで国際大会で勝てない苦しさと悔しさを味わってきた選手たちが最高のパフォーマンスを見せた。
試合後のミックスゾーンで、渡邊は比江島の肩を抱いて「ずっと言ってるんですよ、マコは止められないって。信じてくれないからマコが。ずっと言ってたよな」と興奮して語る。照れ臭そうに「まあまあ」とはにかむ比江島に、渡邊が「今日のがオレらの知ってる比江島慎だから」とたたみかける。そこに富樫が「今日、普通ですよ」と割って入り、「毎試合やれよ！」と比江島の胸を叩いた。
チームとしてのパフォーマンスは決して高くなかったが、渡邊は「それで勝ち切るのもチームの力」と言い切る。9月2日に行われる最後の試合、カーボベルデ戦に勝てば文句なしでオリンピック出場権が手に入る。
万が一敗れても日本にはアジア首位になる可能性が高いものの、渡邊はそこに甘んじようとはしない。「負けたら多分、遅い時間の試合結果を待つことになります。オリンピックに行けるとしても、それじゃうれしくない。この場所で、ファンの皆さんがいるところで勝ち取って一緒に喜びたいです」
そう語る渡邊は、もう勝利の興奮状態から脱し、最後の試合へと意識を切り替えていた。
【日本×ベネズエラ｜ハイライト】FIBAバスケットボールワールドカップ2023
関連記事
● バスケットボール男子日本代表 2023年試合日程・結果・テレビ放送・ネット配信予定
DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信！今すぐ下の記事をチェックしよう。