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【プレビュー】元フットサル日本代表・渡邉知晃が伝授する“アジアの戦い方”決定版!日本、3大会ぶり4回目のアジア制覇のカギとは?|AFCフットサルアジアカップ

渡邉 知晃
【プレビュー】元フットサル日本代表・渡邉知晃が伝授する“アジアの戦い方”決定版!日本、3大会ぶり4回目のアジア制覇のカギとは?|AFCフットサルアジアカップ(C)AFC
【フットサル日本代表 プレビュー】9月27日にAFCフットサルアジアカップが開幕。4年ぶりに行われる今大会について、アジアカップを熟知する元日本代表・渡邉知晃が展望する。
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AFCフットサルアジアカップが9月27日、クウェートで開幕する。2021年11月に木暮賢一郎監督が就任し、世代交代に着手しながら迎える大会で、日本代表は8年ぶりの大会制覇を果たせるか。アジアカップを熟知する元日本代表・渡邉知晃が、各国の勢力図を踏まえた展望および“アジアの戦い方”を伝える。

イランと日本の2強時代はいつまで続くのか?

20220926-futsal-japan-watanabe(C)Getty Images

AFCフットサルアジアカップが9月27日に開幕する。日本代表は2021年にリトアニアで行われたフットサルワールドカップをベスト16で終え、5年間指揮を執ったブルーノ・ガルシア監督が退任し、10年以上、日本のエースとして君臨した元日本代表・木暮賢一郎氏を新監督に擁立した。今大会の登録メンバー14名中、前回W杯を経験した選手はピレス・イゴール、オリベイラ・アルトゥール、吉川智貴の3名のみ。新チームとしてスタートを切った“木暮ジャパン”は、アジアカップ東地区予選を全勝で突破し、本大会への切符を手にした。迎えた本番で日本は、2014年以来、8年ぶりのアジア王座を目指す。

アジアカップ(前回大会までの名称は「AFCフットサルアジア選手権」)の15回の歴史において、優勝経験があるのはイランと日本であり2強を形成してアジアをけん引してきた。しかし、イランが12回、日本が3回という優勝数が物語るように、“アジアの盟主”に君臨してきたのはイランだ。前回の2018年大会も両チームが決勝で対戦したが、イランは4-0で勝利し、磐石の強さを誇示していた。イランの強さはアジアのみならず世界的にも有名である。記憶に新しいのが、2016年にコロンビアで行われたW杯だ。ラウンド16で、W杯最多5回の優勝を誇るブラジル代表を相手に互角の戦いを見せ、PK戦の末に破ったのだ。イランが今回のアジアカップも優勝候補であることは間違いない。

1999年に始まり、2010年までは毎年開催されてきた今大会。2012年から隔年開催となったが、2020年大会は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止となり、今年は4年ぶりに行われることになる。近年では、イラン、日本に続く強国であるタイやウズベキスタン、ベトナムに加え、インドネシアやイラク、バーレーンといった中東勢も力をつけてきており、アジア全体のレベルが上がってきている。そのことを象徴しているのが、2021年のW杯であり、アジアから出場した5カ国(イラン、日本、ウズベキスタン、タイ、ベトナム)全てグループステージを突破して16強入りを果たした(イランはベスト8)。そうした結果を踏まえても、4年ぶりに行われる今大会は群雄割拠となる可能性をはらんでいる。

優勝には“アジアの戦い方”への適応が必要

20220926-futsal-japan-Arthur(C)AFC

開幕を前に、3回のアジアカップ出場経験を持つ筆者が“アジアの勝ち方”を伝えたい。ここでは主に、“日本が優勝するために”という目線でポイントを紹介していく。

大前提として、「アジアの戦い方にアジャストできるか」が重要である。

過去の傾向として、特にグループステージでは、優勝候補の一角である日本に対してリスペクトを持った戦い方をしてくるチームが多い。特にディフェンス面が顕著であり、前から積極的にプレッシングをかけるのではなく、自陣に引いてブロックを敷き、日本の攻撃に耐えながらウンターでワンチャンスを狙う戦略を軸に戦ってくるチームがほとんどだ。

当然、試合を通して日本がボールを保持する時間は増えるが、リスクもある。不用意なミスやボールロストからカウンターを受けて先に失点してしまえば、相手にとってそれは理想の展開であり、さらに守備を固めてくるために日本が得点を奪うことが難しくなる。

フットサルにおいて、完全に自陣に引いて守る相手を崩して得点を奪うのは簡単ではない。特に中東の国は上背もあって体が大きく、フィジカルも強い選手が多い特徴があるため、なおさら相手を崩すハードルが上がる。加えて、攻めている間も常にカウンターのリスクを伴っているため、時間の経過とともに焦りが生じやすく、精神的なタフさが求められる。それらを踏まえると、最初のポイントは「我慢」と「先制点」が大事であろう。

次に、ファウルの判定基準の理解と、アジアのフィジカルに対応することが必要だ。イランはもちろんのこと、ウズベキスタンや中東勢はフィジカルに優れる選手が多く、さらに審判の判定基準もFリーグとは異なるケースがあるため、試合中、どういったプレーがファウルになるか見極めることが重要だ。筆者の体感として、アジアの審判は強めのコンタクトに対してファウルを取らない傾向があり、ぶつかり合いが激しくなる印象を持っている。

すなわちそれは、ディフェンスにおいてファウルにならないギリギリの強度でコンタクトする必要があるということ。どう守備し、どう攻撃するか。フィジカルが強い相手と対峙する上で、ファウルの基準を理解しておかないと致命的な事態を招きかねない。フットサル特有の“6つ目から第2PKを与えてしまう”5ファウルや、エリア内でのコンタクトなど、失点に直結するファウルトラブルをいかに回避するかは、アジアの戦いでは非常に重要だ。

優勝した2014年大会の一体感・総合力を再び示す

20220926-futsal-japan-2(C)AFC

我慢、先制点、ファウルの基準、アジアのフィジカル。これらのポイントを攻略するためにはやはり、前述したように「アジアの戦い方」への適応が重要だ。すなわち、スタイルの異なる相手にいかにいち早くアジャストできるか、ということでもある。

フィジカルに優れるイランやウズベキスタン、中東勢、運動量とスピード、連動したパス回しが得意なタイ、ベトナムなど、国によってさまざまな特徴がある。最大6試合で優勝が決まるアジアカップは、基本的に決勝まで中1日で戦うため、毎試合スタイルが異なる相手に短期決戦で勝ち続けていく必要がある。もちろん、監督を中心としたコーチングスタッフ陣は毎試合スカウティングをして相手の分析をしているが、実際にピッチで戦うのは選手である。選手一人ひとりが試合中に相手の戦いにアジャストしなければならない。

例えばドリブラーの選手は、アジア独特の足の長さやフィジカルを生かしたディフェンスに苦労することが多く、試合中に“間合い”や“雰囲気”などの感覚をつかむ必要がある。

そうやって適応しながらも、日本のスタイルを示すことも重要だ。特にイランやウズベキスタン、タイといったライバルとの戦いでは、相手に合わせるというよりもむしろ、真っ向勝負で戦い、自分たちのスタイルで相手を上回り、勝ち切ることが日本の使命だ。

最後に、一番重要なことを。それは、「チームが一つになる」こと。当たり前のことではあるが、アジアカップのような短期決戦において、“一体感”とは勝敗に直結するほど侮ってはいけない超重要事項である。同じベクトルを保てているか、ということだ。

グループステージから、出場時間が多い選手、少ない選手、出場機会がない選手など、出番に偏りが出てくるなかで、全員が「優勝」に向かえるか。全員が試合に向けて準備すること、大会を通して怪我人や累積で出られない選手が出た時や、試合状況によって新たに起用された選手が活躍することも、優勝チームにはよくある出来事だ。実際、2014年大会は決勝のイラン戦で、これまで出場時間が長かったエース・森岡薫が怪我の影響で出場できなくなったなかで、日本は優勝を果たした。チームとしての総合力を示せた大会だった。

日本は元来、「一体感」に秀でるチームでもある。監督が代わり、若返ったチームだが、上述したポイントと、この一体感を醸成できれば、3大会ぶり4回目のアジア制覇を十分に狙える。アジアにおける日本の立ち位置を、我々は証明しなければならない──。

文=渡邉 知晃(わたなべ・ともあき)

1986年4月29日生まれ。福島県出身。小学2年生からサッカーを始め、順天堂大2年時にフットサルに転向。BOTSWANA FC MEGURO、ステラミーゴいわて花巻、名古屋オーシャンズ、立川・府中アスレティックFC、大連元朝足蹴倶楽部(中国)でプレー。日本代表として国際Aマッチ59試合出場・20得点、Fリーグ2017-2018シーズン得点王(45得点)、通算323試合出場・201得点など数々の実績を残し、2020-2021シーズン限りで現役を引退。子供への指導のかたわら、フットボールライターとして執筆業にも挑戦中。

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