9月28日、AFCフットサルアジアカップの初戦に臨んだ日本代表は、サウジアラビアに1-2で敗戦し、まさかの黒星スタート。3大会ぶりの優勝を至上命題に掲げながら、いきなり追い詰められた日本は、30日に韓国とのグループステージ第2戦を迎える。アジアカップで優勝経験を持つ元日本代表・渡邉知晃が試合のポイントを伝える。
韓国は、勝ち点3だけではなく圧勝したい相手
(C)AFC
サウジアラビアは2大会ぶり2回目のアジアカップ出場であり、”ジャイアントキリングを起こされてしまった”というのが、優勝候補に推される日本側の見方だろう。いずれにせよ、グループステージ初戦でサウジアラビアに敗れ、日本代表は残り2試合を「絶対に負けられない」状況に追い込まれた。
しかし、幸いにも4チーム中2チームがノックアウトステージに進出できるため、2試合で連勝すればグループ突破の可能性は十分に残されている。
第2戦の対戦相手は韓国。今年5月のアジアカップ東地区予選でも対戦し、日本はそこで9-0の大勝を収めている。サッカーでは長らく日本のライバルとして立ちはだかってきた韓国だが、フットサルにおいては“日本より格下”という関係である。実際、筆者自身も現役時代には同じアジア東地区の国であることから何度も韓国と対戦した経験があるが、一度も負けたことはない。
日本フットサルの歴史や実力を考えても絶対に勝たなければいけない相手である。ただし、サウジアラビア戦がそうだったように、試合に”絶対”はない。韓国は国民的にも闘争心や強い気持ちを前面に出してくるため、日本は気を引き締めて試合の立ち上がりから相手を圧倒する勢いを出して戦いたい。
さらには、グループステージ突破を確実なものとするためにも、この試合に大量得点で勝っておくことがプラスになる。初戦の悔しさを晴らすためにも、そして自信を取り戻すためにも、勝つだけではなく圧勝を期待したい。
1点も与えなければ大量得点で勝てる
(C)AFC
日本と韓国には何かの縁があるのかもしれない。今大会だけではなく近年のアジアカップでは、2018年大会、2014年大会でも本戦のグループステージで同組に入っている。ちなみに2016年大会は韓国が東地区予選で敗れており、本戦に出場していない。これまで本戦、予選で何度も対戦してきた相手だ。
2014年大会のグループステージでは12-0で勝利しており、今大会の東地区予選では9-0で勝利と大勝したが、一方で苦戦したこともある。
2018年大会では、日本が幸先よく先制するも、第1ピリオドのうちに追いつかれて1-1でハーフタイムを迎えた。第2ピリオドも日本が先にゴールを奪いながらも直後に同点に追いつかれてしまった。最後は自力の差で引き離し、5-2で勝利できたものの、本当に苦しい試合だったことを覚えている。
直近の3回の対戦からわかることは韓国に得点を許してはいけない、ということだ。無失点なら大量得点で勝利できるが、失点すると接戦になりがちだ。
これは筆者の個人的な印象ではあるが、韓国は前述したように闘争心があり、気持ちが強い特性を感じている。対戦した際にはいつも、「日韓戦」ということもあってさらに気持ちが昂り、“食ってやろう”という気概を感じていた。
その反面、気持ちが折れやすいようにも感じる。立ち上がりこそ勢いよく来るが、こちらがいなして得点を重ねることで「無理かもしれない」「勝てない」という思考になっていく。気持ちが折れてしまえば、勝負は決したようなものだ。そのためには日本が先制し、次の1点を早い段階で奪って得点を重ねること、そして”失点をしないこと”が重要だ。韓国がゴールで勢いに乗ってしまい、チームとして「やれる」という雰囲気になってしまわないようにコントロールしたい。これまでの対戦が物語るように、それくらい実力差はあると確信している。
早い段階での先制点、そしてゴールを重ねることで試合を終わらせにいくことが大事であり、それくらいの実力差があると思っている。
韓国に緻密な戦術はない
(C)AFC
韓国にはサウジアラビアのような緻密な戦術はない。これまでもそうだったように、戦術的なフットサルというより、個の能力を生かした戦い方をしてくる傾向にある。フィジカル的に強い選手、サッカースキルが高い選手が多い。サイドでの1対1の仕掛けや、フィジカルの強いピヴォの選手に簡単にボールを入れて攻撃を仕掛けてくるため、対人で負けないことが求められる。
カウンターのスピードもあるため、サウジアラビア戦と同様に敵陣での不用意なボールロストには気をつけたい。個人個人が1対1の対応をしっかりとできていれば、大きなピンチを招くことはそこまで多くないだろう。
良くも悪くも個人技頼みであり、フットサルの常識にとらわれない、予想もしない動きや仕掛けをしてくることがある。Fリーグの試合とは一味違った戦い方をしてくるという点では、相手への対応の方法には注意が必要だ。
韓国のキープレイヤーは、かつて名古屋オーシャンズにも所属していた申宗勲(シン・ジョンフン)だ。背番号10を背負い、長らく韓国フットサルを支えるエースだ。フィジカルがとても強く、左右両足から強烈なシュートを放つ。今大会のグループステージ初戦のベトナム戦でもコーナーキックから左足のボレーシュートで先制点を決めており、日本としても注意が必要だ。
とにかく是が非でも「勝利」が必要なこの試合。追い込まれた状況の時こそチームとして一つになり、”一体感”を持って試合に臨みたい。優勝に向かう残り5連戦の初戦。サウジアラビア戦の敗戦を払拭する勝利を期待したい。
■プロフィール
文=渡邉 知晃(わたなべ・ともあき)
1986年4月29日生まれ。福島県出身。小学2年生からサッカーを始め、順天堂大2年時にフットサルに転向。BOTSWANA FC MEGURO、ステラミーゴいわて花巻、名古屋オーシャンズ、立川・府中アスレティックFC、大連元朝足蹴倶楽部(中国)でプレー。日本代表として国際Aマッチ59試合出場・20得点、Fリーグ2017-2018シーズン得点王(45得点)、通算323試合出場・201得点など数々の実績を残し、2020-2021シーズン限りで現役を引退。子供への指導のかたわら、フットボールライターとして執筆業にも挑戦中。
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