日本代表は10月6日、AFCフットサルアジアカップ2022準決勝に臨む。対戦相手は、アジアの強豪国の一つ、ウズベキスタン。2014年のアジアカップでウズベキスタンと戦い、アジア制覇を経験した元日本代表の渡邉知晃が、準決勝のポイントを伝える。
順当に勝ち上がってきたアジアの4強
(C)AFC
イラン、日本、ウズベキスタン、タイ。2021年にリトアニアで行われたW杯にも出場したアジアの4強が、順当に準決勝まで勝ち上がった。
イランは、今大会も変わらず圧倒的な強さを見せつけている。グループステージから全試合を大差で勝ち続け、危なげなく準決勝に進出。一方でタイは、グループステージ初戦のイラク戦でパワープレーから逆転勝利、開催国のクウェートに引き分けるなど、苦しみながら勝ち進んできた。
日本はご存知の通り、グループステージ初戦でサウジアラビアに敗れたところから這い上がった。準々決勝のインドネシア戦も、先制されながら逆転勝利を収めた。
準決勝の相手はウズベキスタン。アジアの舞台で、何度も対戦してきた。アジアの強国の一つとして君臨し続けるアジアカップベスト4の常連である。過去15回中、2004年大会以降でベスト4入りを逃したのは、2008年大会と2012年大会の2回のみだ。最高成績は準優勝で、これまで4回ファイナルに進出している。
歴史があり、アジアの戦い方を熟知しているのがウズベキスタンだ。日本が直近のアジアカップで対戦したのは、2018年大会のグループステージであり、その時は4-2で勝利している。この大会では、日本に負けたことでグループ2位となり、ノックアウトステージでは準決勝でイランに1-7で敗れている。
ウズベキスタンが最も優勝に近づいたのは、自国開催となった2016年大会だ。グループステージを全勝で抜け、決勝でイランと対戦した。ホームの大声援の後押しを受け、6分に幸先よく先制する。しかし9分、14分に失点し、そのまま1-2で敗戦を喫したが、最後までどちらに転ぶかわからない接戦を演じて、準優勝となった。
対日本ということでは、筆者の感覚として相性は悪くないように感じている。しかし2014年大会のグループステージや、2017年のアジアインドア&マーシャルアーツゲームズの準決勝では敗れるなど、両者の勝負に“絶対”は存在しない。
時代の変遷に合わせて互いのメンバー構成も変わっているため、過去の対戦成績はあくまでも“参考結果”だ。日本はきっちりと勝ちきり、決勝戦へと駒を進めたい。
ウズベキスタンの武器は堅守とセットプレー
(C)AFC
ウズベキスタンの伝統的な特徴の一つは「堅守」だ。背が高く、足が長い。それでいてスピードもある。インドネシアや中東の国ように、外見的にフィジカルが強そうな体つきをしているわけではないのだが、彼らはフィジカルにも優れている。
身体能力を生かした守備はとても堅く、今大会もグループステージのトルクメニスタン戦、準々決勝のクウェート戦で無失点に抑え、バーレーン戦の失点もパワープレーからだけだった。タジキスタン戦はセットプレーとパワープレーから2失点を喫したものの、今大会において“定位置攻撃”から崩されたり、カウンターを浴びたりした場面の失点は一つもない。この事実からも、ウズベキスタンの堅守が証明されている。
そして、強固な守備からのカウンターの精度が非常に高いことにも注意したい。ディフェンスでボールを奪ってから速攻で攻め上がり、単独でシュートに行くのではなく、人数をかけてしっかり崩しきってからの得点が多い。ゴール前での落ち着きがあり、シュートが打てる位置だとしても、得点の確率が高い選択肢を選び、セグンドへパスを出して決めたシーンが何度もあった。スピードにも優れているため、日本としてはこれまでの試合と同様、ボールロストの仕方には気をつけないと、即失点につながるリスクが高い。状況によってはファウルで相手を止めることも頭に入れておく必要がある。
攻撃面でもウズベキスタンは、精度の高い強烈なシュートを打てる選手が揃っている。多少、距離のある位置からでも正確かつスピードのあるシュートが飛んでくるため、特に「セットプレー」は彼らの大きな特徴であり、武器の一つである。
今大会もこれまで、セットプレーから4得点を挙げ、そのうちの3点はボレーシュートによるものだった。難易度の高いボレーがうまい選手もいるため、彼らに距離は関係ない。日本はセットプレーのディフェンスでしっかりと対応する必要がある。
これはセットプレーに限った話ではないが、ボールホルダーに対してはしっかりと寄せて、“シュートを打たせない”ことが優先事項だ。ウズベキスタンは今大会4試合で20点をたたき出しているため、これまでの対戦相手よりも決定力が高いチームだ。日本が決勝に進めるかは、ディフェンスの出来にかかっていると言っても過言ではない。
両者とも、目指すのはファイナルの舞台のみ
(C)AFC
ウズベキスタンもまた、他のアジアの国と同じように、外国人監督を招聘して強化を図ってきた。ポルトガルの強豪ベンフィカで指揮を執り、タイ代表やタイのクラブチーム、チョンブリ・ブルーウェーブで監督経験があるスペイン人、“プルピス”の愛称で知られる、ホセ・マリア・パゾス・メンデス・プルピス氏が、ウズベキスタンを強化し、発展へと導いてきた。
現在はその指導を継承し、ウズベキスタン代表として長らく活躍し、キャプテンも務めたレジェンド、アクメドフ・バコディルが監督を務めている。これは日本代表がミゲル・ロドリゴ前々監督、ブルーノ・ガルシア前監督という2人のスペイン人指導者の薫陶を受け、木暮賢一郎監督へとつなげた経緯と似ている部分がある。
ウズベキスタンもまた、アジアのタイトルを切望している。過去に4度のファイナリストになったが、いまだに優勝には手が届いていない。イランと日本しか優勝国が生まれていないアジアカップで、“3カ国目”は自分たちだと信じているに違いない。
今大会のウズベキスタンは、グループステージのタジキスタン戦こそ苦戦したものの、順当に全勝でグループを首位通過。準々決勝では自国開催の大声援の後押しを受けるクウェートを3-0で退け、完全アウェイの中で完勝を収めた。
注意すべきは背番号8番ニショノブだ。左足から放たれる強烈なシュートを武器に持ち、グループステージ第2戦のタジキスタン戦、第3戦のバーレーン戦、準々決勝のクウェート戦と、3試合連続ゴール中。ニショノブの左足には警戒が必要だ。
日本にとって難しい試合になることは間違いないものの、そもそもノックアウトステージに簡単な試合などない。今大会を通して成長を遂げ、日本代表チームの”一体感”は日に日に増している。インドネシア戦を終えた木暮監督が「経験のある選手たちは、ベンチにいる時も若い選手に声をかけてくれています。全員がピッチだけではなく、支え合っている」と語ったように、チーム一丸となって勝ち進んできた。
4強入りしたことで最終日までこのチームで戦えることは決まったが、目指すのは決勝以外にない。筆者自身も経験があるが、3位決定戦を戦うのと決勝を戦うのとでは、置かれている境遇も、選手のメンタリティも、周囲の注目度も、試合の熱狂も天と地の差があることを知っている。ファイナル行きをかけた勝負の大一番が始まる。
■プロフィール
文=渡邉 知晃(わたなべ・ともあき)
1986年4月29日生まれ。福島県出身。小学2年生からサッカーを始め、順天堂大2年時にフットサルに転向。BOTSWANA FC MEGURO、ステラミーゴいわて花巻、名古屋オーシャンズ、立川・府中アスレティックFC、大連元朝足蹴倶楽部(中国)でプレー。日本代表として国際Aマッチ59試合出場・20得点、Fリーグ2017-2018シーズン得点王(45得点)、通算323試合出場・201得点など数々の実績を残し、2020-2021シーズン限りで現役を引退。子供への指導のかたわら、フットボールライターとして執筆業にも挑戦中。
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