物語はコロナウィルス陽性反応から始まった。
昨年行なわれたボクシングイベント「Fight Camp」の第一夜、イングランドのウェルター級プロスペクト、コナー・ベンがアドリアン・グラナドスと対戦することになっていた。
メインイベントの一つ前に戦うことになっていたのが、ノッティンガム出身のリー・ウッド。WBAフェザー級正規王座を保有していたシュ・ツァンに挑戦することになっていた。
迎えた大会2日前、ベンはコロナウィルス陽性が判明し、グラナドスとの対決は延期。その結果、ウッドvsツァンがメインイベントに昇格したのだ。
ウッドにとっては、イングランド最高峰のトレーナーとなりつつあるベン・デヴィッドソンをヘッドトレーナーに迎え、2戦目となる試合だった。その好影響は、33歳のウッドがリングに上がった瞬間から現れていた。
ファイトスタイルを変えたウッドの戦いにを不安視する声もあったが、メインイベントのゴングが鳴ると、絶対王者を恐れずに立ち向かった。
積極的に動き、リング中央を陣取って試合をコントロール。徐々にツァンを疲労させると、最終ラウンドに右をヒットさせ、WBAタイトルホルダーを仕留めることに成功した。
『DAZN News』の独占インタビューに応じたウッドは、この試合について振り返ってくれた。これまで最大のビッグファイトに勝利したことは、彼の実力を疑う人たちを黙らせるよい手段だったと考えている。
「下馬評を覆し、ほとんどのラウンドで勝利し、試合終了間際にヤツを止めることができた。俺にとっては指を突き立てて『F○○k you』と言っているようなものだった」
試合終了直後のセレブレーションは、溜め込んだエネルギーを吐き出すようなものだった。ロープにもたれて、駆けつけた少数の観客に敬意を表したウッドは、自身がキャリア最高のパフォーマンスを出すことができたと思っている。
また、2014年にカール・フローチが引退して以来スーパースター不在となっていたノッティンガムに世界タイトルをもたらすことができたとことに満足しているようだ。
ツァン戦での戦略の話になると、あまり多くを明かそうとしなかったウッド。だが、WBAフェザー級ベルトをイースト・ミッドランズに取り戻すための唯一の方法は、ツァンをリスペクトしないことだったと明言した。
「将来の試合のためにあまり情報を出したくないから、いろいろ言わないでおくよ。俺の胸の中に収めておこう」
「彼は運動量の多いファイターだから、あの試合ではリングの主導権を奪うことがとても重要なことだった」
「パンチのあるファイターとの対戦では、ロープやコーナーを背にして、どこにも逃げられない状況に追い込まれることになる。左か右か、どちらかを選んだら捕まることになるかもしれない」
「勢いを殺すこと、相手の手を封じること、全てはゲームプランのうちだった」
サッカークラブが監督を交代するとしばしば「監督解任ブースト」と言われる効果が起こる。外から見ていると、ウッドとデヴィッドソンが組んだことで「新トレーナーブースト」を体験したように見えた。
だが、ウッドはこの考えをすぐに否定した。デヴィッドソンは周りの環境に委ねるタイプではなく、計算ずくでウッドのちからを開放する方法を見出したのだと語った。
「それよりも、教え方とかゲームプランの結果だ。世界でやれる力を持っている。だがベースが備わっていなければ、その力を出すことはできない」
「俺がリングを全力で動き回って、たとえパンチを当てることができたとしても、足の向きが時々間違っていたりする。動いていると、パンチを当てられる間合いにギリギリ入れなかったり、入り込めることもあったりする。そういう小さなことには当時思いも至らなかったんだ。俺はただ動けばいいと思っていたし、相手にミスさせられればいい、正しいショットを当てられるまで離れて戦えばいいと思っていたからね」
「振り返ってみればちょっと馬鹿げていたね。運任せで勝負していたんだから。当時の俺に忠告するならば、まず足をセットしないとパンチを放つことはできないということだ」
「Fight Camp」でツァンに勝利し、WBAフェザー級正規王座を手にしたことで、ウッドの前には多くの可能性が開けたことになる。だが、まず指名挑戦者マイケル・コンランと戦わなければならない。
二人は3月12日にノッティンガムのモーターポイント・アリーナで相対することになっている。試合の模様はDAZNから生中継される予定だ。
ウッドがコンランに勝利すれば、素晴らしい未来が待ち受ける。なお、同郷のイングランド人フェザー級ファイター、ジョシュ・ワーリントンは3月末にキコ・マルティネスと2度目の対戦を行い、IBF世界王座再戴冠を目指す。
ワーリントンがこの試合で勝利すれば、英国人同士のフェザー級統一戦が実現する可能性がある。ウッドの愛するノッティンガム・フォレストFCのホームグラウンドである、シティ・グラウンドが会場候補として挙がっている。
ボクシングが大人気のこの街で世界タイトル戦を行なうこと、シティ・グラウンドで世界タイトル戦を行なうという夢を叶えること。これらは全てウッドの野望である。
だが、未来の可能性に浮かれることなく、マッチルーム・スクエア・ガーデンでのシュ・ツァン戦のような生涯をかけた試合をもう一度実現しなければ、ウッドの思いは実現できないだろう。
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