2017年にデリー・マシューズは2度目の引退を表明したが、誰も本当に引退するとは信じていなかった。リヴァプール出身の有名なファイターは人々の印象に残るジェットコースターのようなキャリアを描いてきたが、何度も引退を口にしていたからだ。しかし今回の引退が、以前と違うというのはなぜだろうか?
トニー・ベリュー対デビッド・ヘイのアンダーカードでオハラ・デイヴィスに一方的にやられ3Rで敗戦を喫した後、マシューズは心が折れた。リングを降りるという決断は正しい選択だった。マシューズはそれまで何度も挫折を経験してきたが、その度に復活の道筋を見出し、それがマシューズの素晴らしい性質の一つだった。だが今回はそうではなかった。
デイヴィス戦の敗戦でマシューは3連敗を喫した。テリー・フラナガンとルーク・キャンベルという世界クラスの二人に連敗を喫したあとの3戦目だった。それぞれの試合でマシューズの忍耐力はどんどん削ぎ落とされていき、2003年にプロとなって以来築いてきた立ち位置をもはや守ることができなくなっていた。
プロファイターとして14年間を過ごしたマシューズは、驚くべき功績を残した。たくさんのベルトを身に着けた彼は、タイトルを獲得して引退を迎えただけでなく、ファンにたくさんの価値あるものを提供できたことを悟って去っていったのだ。たとえばアンソニー・クロラ、ゲビン・リース、トミー・コイルらとの試合は伝説級の試合に昇華されている。だが、今マシューズがボクシング界で担っているのはもっと大きな役割だ。
日本時間日曜未明、マシューズはトレーナーとして新たな役割を負い、自身の元コーチであるジョージ・ヴォーンと共にヤッツァ・ディケンズのIBFフライ級王座獲得を後押しする。ディケンズはキッド・ガラハッドと相対し世界王座獲得を目指す。ディケンズとチームの眼前にあるチャンスはとても大きな価値のあるものだ。特にマシューズにとっては、非常に大きな意味を持つ。
「ヤッツァが世界チャンピオンになるためなら、これまで自分がやってきたことはすぐにでも全部あきらめるよ」とDAZNの独占インタビューに語ったマシューズ。「世界王者になるためにどれだけのことが必要か、よくわかっている。このスポーツに全身全霊をかけて取り組んだのに、世界王者になったと言えるチャンスが自分にはなかったからね」
「トニー・ルイスとの戦いで暫定王者になることはできたが、テリー・フラナガンとの試合では惜しくも負けてしまった。だが、努力したことはわかっていて、それでも勝てないということは、それがいかに大変かということだ。ヤッツァを長い間ジムで見てきたし、彼が子供の頃からの知り合いだ。ヤッツァには才能があるし、練習に打ち込んでいる。これからはジムでいつもやっていることを試合で実戦していかなければいけない」
マシューズとディケンズは今はプロ同士の間柄だが、これまでずっとそうだったわけではない。リヴァプールで有名なソールズベリー・ジムでアマチュアとして活躍していたマシューズは、6歳年下のディケンズがジムに入会したとき、尊敬の対象だった。
スポーツの世界ではよくあることだが、未来の栄光を夢見る若者は、同じ色のユニフォームを着た先輩たちに大きな刺激を受ける。マシューズとディケンズもそういう関係だった。マシューズが幼少を過ごした場所を離れプロで活躍するようになると、ディケンズはその穴を埋めるかのようにアマチュアで活躍しはじめた。
「アマチュアボクシングではよくあることだ。子供の頃は尊敬の対象をいつでも探している。若手ファイターたちが自分をそういう視線で見てくれるのは嬉しく思うが、自分も子供の頃は同じようにしていた。自分にとってはデビッド・バークがヒーローで、一番尊敬するファイターだった。ヤッツァ自身は私のことをそう言ってくれている。けれど、信じて欲しい。あの子は自分が思っている以上に俺に影響を与えているんだよ」
マシューズのジムに移籍して以来、ディケンズはマシューズとヴォーンの指導を受け、成功を収めている。ボクシングトーナメント「ゴールデン・コントラクト」では現WBA正規王者のリー・ウッドを破る快挙を達成。今回のガラハッド戦は、ウッドと同じ世界王者のステータスを自分の経歴に加えるチャンスなのだ。
シェフィールド出身のガラハッドに前回敗れたのは2013年。この前回対戦が今回の試合に多くの味わいをもたらしている。これまで両者は何度もスパーリングを重ねてきたので、二人は互いの手の内を十分に理解している。これまで多くの練習を見てきたマシューズは、今回の再戦は適切なタイミングだと考えている。
「ヤッツァはまさに今最高の状態だ。挫折も経験したが、そこで立ち止まって何もしなかったわけではない。負けた後には必ず改善してきたので、ファイターとして正しい進化を遂げてきたのだ」
「ヤッツァはガラハッドとの再戦を長いこと待っていた。この試合が彼にとってどれだけ大きな意味を持つのか理解しているし、彼にとって最高の形で実現したと思っている。この試合は、全てのファイターが初めてグローブをつけた瞬間から抱く夢を実現できるチャンスだ。彼なら成し遂げるはず。ヤッツァはこのために多くのことを犠牲にしてきたし、土曜日(※日本時間日曜日未明)に報われるはずさ」
キッド・ガラハッド データと記録
- 国籍:英国/イエメン
- 生年月日:1990年3月30日
- 身長:168.9 cm
- リーチ:168.9 cm
- 全試合数:28試合
- 対戦成績:27勝1敗(16KO)
ヤッツァ・ディケンズ データと記録
- 国籍:英国
- 生年月日:1991年4月12日
- 身長:165.1 cm
- リーチ:データなし
- 全試合数:33試合
- 対戦成績:30勝3敗(11KO)
キッド・ガラハッド vs ヤッツァ・ディケンズ 全対戦カード
- キッド・ガラハッド vs ヤッツァ・ディケンズ (IBFフェザー級王者決定戦)
- ファビオ・ワードリー vs ニック・ウェブ(ヘビー級英国王座戦)
- アレン・バビッチ vs マーク・ベネット
- エバニー・ブリッジス vs ベック・コノリー
- ジョニー・フィッシャー vs ジョシュ・サンドランド
- アキブ・フィアス vs ケヴィン・バルドスピノ
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
日時(日本時間) | カード | 詳細 |
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8月8日(日) 08:00 | キッド・ガラハッド vs.ヤッツァ・ディケンズ | IBF世界フェザー級王座決定戦 |
8月15日(日) 03:00 | ブアツィ vs.ボロトニック | WBAインターナショナル・ライトヘビー級タイトルマッチ |
8月15日(日) 09:00 | オルティスJr. vs.カバラウスカス | WBOウェルター級インターナショナル戦 |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
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