経歴・人物像
欧米の主要メディアによる全階級を通じたパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングで軒並み1位に輝くボクサーがメキシコのサウル“カネロ”アルバレスだ。1試合で数10億円のファイトマネーを稼ぎ出す現役ナンバーワンのスーパー・スターである。
ボクシング一家に8人兄弟の末っ子として生まれたカネロは13歳でボクシングを始め、2005年に15歳にして早くもプロに転向した。ちなみにカネロとはスペイン語でシナモンを意味。髪の毛が赤かったことからこのニックネームがつき、欧米では通常、アルバレスではなくカネロと表記される。
赤毛の少年は体格にこそ恵まれてはいなかったが、瞬間的な反応の速さと相手の動きを読んだカウンターのタイミングに天賦の才があった。メキシコのリングを中心に積極的に試合を重ねてキャリアを積み上げ、2011年にWBCスーパー・ウェルター級王座に就き、初めて世界チャンピオンになった。
この王座を6度防衛して評価を高めていくと、13年9月にキャリア最初のビッグマッチを迎えることになる。無敵のPFPキング、フロイド・メイウェザーとWBA・WBCスーパー・ウェルター級タイトルマッチだった。
ボクシング界を牽引するメイウェザーと若きスター候補であるカネロの対戦は世界的に注目を集め、ペイ・パー・ビューの売り上げは過去最高記録を更新する220万件をマーク。試合はカネロが老獪なメイウェザーにあしらわれてプロ44戦目で初黒星を喫したが、振り返ってみればこの試合はカネロが大きく飛躍するターニングポイントとなった。
メイウェザーが15年の試合を最後に引退に向かってシフトし始めると、代わってカネロがキング・オブ・キングスへの階段を上り始める。ミドル級に進出して一度はWBC王座を手にすると17年9月、ファンが待ち望んだミドル級3冠王者、ゲンナジー・ゴロフキン戦が実現した。
この試合を分の悪いドローで終えたカネロだったが、1年後の再戦では文句なしの判定勝ちを収め、名実ともにボクシング界のナンバーワンに立った。この試合後にはDAZNと11試合で3億6500万ドル(当時のレートで約408億円)という超大型契約を結んでファンの度肝を抜き、世界で最も稼ぐボクサーの地位を不動のものとしたのである。
勢いに乗るカネロはさらにクラスを上げてスーパー・ミドル級で世界チャンピオンとなり、19年11月にはライト・ヘビー級に進出する離れ業を演じてWBO王者のセルゲイ“クラッシャー”コバレフを撃破。4階級制覇を達成して歴史に新たな1ページを刻んだ。
20年秋には長い付き合いだったゴールデンボーイプロモーションズとの契約を解消してフリーエージェントという立場に。12月の試合で無敗のWBAスーパー・ミドル級スーパー王者のカラム・スミスを突き放してさらに株を上げ、現在はスーパー・ミドル級でメジャー4団体制覇を目標に掲げている。
アメリカでも人気を博したメキシカンといえば真っ先に思い浮かぶのが93年、アステカ・スタジアムに13万人を動員した英雄、フリオ・セサール・チャベスだ。04年に史上初の6階級制覇を達成したオスカー・デラホーヤはメキシコ系アメリカ人だった。30歳にして業界のリーダーとなったカネロにはチャベスやデラホーヤを超えるような存在になることが期待されている。
ボクシング・スタイル
スピードとパワーに恵まれ、攻守にバランスの取れたオールラウンダー。相手の動きを見切ったカウンターパンチを得意としながら、自らプレッシャーをかけて相手を追い込む術にも長けている。もともとスーパー・ウェルター級を主戦場としており、ライト・ヘビー級に上げたときはさすがに無謀という声も聞かれたが、ライト・ヘビー級でも屈指の実力者、セルゲイ・コバレフに11回TKO勝ちして雑音をシャットアウト。チャンスを逃さない嗅覚もこのボクサーの強みだ。
基本情報・戦績
国籍 | メキシコ |
出身地 | グアダラハラ |
生年月日 | 1990年7月18日 |
身長 | 175cm |
階級 | スーパー・ミドル級 |
リーチ | 178cm |
試合数 | 57 |
レコード | 54勝1敗2分、36KO |
プロフィール
2005年10月 | 15歳でプロデビュー |
2011年3月 | マシュー・ハットンとの王座決定戦を制してWBCスーパー・ウェルター級王座獲得 |
2013年4月 | オースティン・トラウトに勝利してWBA王座吸収 WBCは6度目の防衛成功 |
2013年9月 | フロイド・メイウェザーに敗れてプロ初黒星、王座陥落 |
2015年11月 | ミゲール・コットを下してWBCミドル級王座獲得 |
2016年9月 | リアム・スミスに勝ってWBOスーパー・ウェルター級王座獲得 |
2017年9月 | ミドル級3冠王者のゲンナジー・ゴロフキンと引き分け |
2018年9月 | ゴロフキンに勝利してミドル級3団体統一王者に |
2018年12月 | ロッキー・フィールディングからWBAスーパー・ミドル級王座奪取 |
2019年5月 | ダニエル・ジェイコブスを退けWBAスーパー&WBC&IBFミドル級王座防衛 |
2019年11月 | WBOライト・ヘビー級王者のセルゲイ・コバレフを下して4階級制覇を達成 |
2020年12月 | カラム・スミスに判定勝ちしWBAスーパー・ミドル級スーパー王座とWBC同級王座を獲得 |
ボクシング注目選手
DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。