ヘビー級の注目ファイトがついに戻ってきた
新型コロナウイルスの影響により世界のボクシングシーンが中断を余儀なくされて早5ヶ月。ついにヘビー級の注目ファイトが私たちのもとに返ってくることになった。それがWBC暫定王者ホワイトと元世界王者ポベトキンの一戦だ。
世界各国のボクシングは6月から徐々に再開しているが、十分な準備期間が取れなかったこともあり、調整試合的なカードや、軽いクラスの世界タイトルマッチが中心だった。ここにきてようやく無観客ながら、ヘビー級のトップ選手が激突することになったことは、世界のボクシングファンにとって大きな喜びと言えるだろう。
対する04年アテネ五輪金メダリストのポベトキンは11年にWBAヘビー級正規王座を獲得し、4度防衛後の13年10月、スーパー王者に君臨していたウラジミール・クリチコ(ウクライナ)に敗れてプロ初黒星。18年には3冠王者のジョシュアに挑戦して敗れており、7年ぶりの世界王座復帰を狙っている。
ホワイト擁するマッチルーム・ボクシングの名物プロモーター、エディ・ハーン氏は「この試合は2020年のヘビー級ファイトの中で最も重要な試合の一つだ」とこの一戦をアピールする。ただの宣伝文句ではない。その心は、ホワイトとポベトキンの勝者がWBCチャンピオンに確実に絡んでくるところにある。
勝利して王座挑戦なるか、ホワイトの運命や如何に
現在のヘビー級はWBC王者のフューリーとWBAスーパー、IBF、WBO王座を保持するジョシュアが主要4団体のベルトを独占し、最重量級を牽引している。
元3冠王者のフューリーは今年2月、第1戦で引き分けた前王者デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)との再戦に完勝してWBC王座を獲得、ヘビー級ナンバーワンの実力を満天下にアピールした。これに納得しないワイルダーは即リマッチを宣言し、両者は12月にも第3戦で激突する見込みだ。
ホワイトは長らくランキング1位に甘んじ、昨年7月に暫定王座を獲得した際にはワイルダーに挑戦するレールが敷かれていたが、ドーピング違反問題が発覚したこともあってチャンスは遠のいた(のちに違反薬物は非常に少量と判明して不問に)。
こうした結果、長く待たされる形となったホワイトは、今度こそ勝利と引き換えにフューリーvs.ワイルダーの勝者との対戦をWBCが確約しているだけに、このチャンスを逃したくないという思いは人一倍強いことだろう。
一方で、ホワイトはフューリーとの対戦を強く望みながらも、フューリーが自分とは対戦しないのではないか、とも感じているようだ。フューリーがワイルダーを返り討ちにした暁には2021年のジョシュア戦に向かっていく。その場合はWBC王座を返上して、暫定王者であるホワイトが“正規”王者に昇格する――、そんな可能性もささやかれている。
いずれにしてもヘビー級はフューリー、ジョシュア、ワイルダーの3トップが存在感を示し、この3人にいかに絡んでいくのかが、ほかのトップ選手の重要なテーマと言える。ホワイトとポベトキンは彼らを追うだけでなく、ダニエル・デュボア、ジョー・ジョイスといった新興勢力から突き上げを食らっている立場であることも付け加えておこう。
この先、どのようなシナリオが待っているにしても、ホワイトは40歳にしてもうひと花咲かせようとしている経験豊富な難敵、ポベトキンを退治しなければ先へは進めない。
「ポベトキンは15年間もトップ選手であり、元オリンピックの金メダリストにして、元世界チャンピオンだ。彼は非常に危険な存在で、私に勝てば彼のキャリアはよみがえる。私はリングに混乱を、そしてバイオレンスを持ち込むつもりだ」(ホワイト)
下馬評でホワイト有利と言われる一戦は、はたしてどんな結末を迎えるのか。半年ぶりにリングに戻ってきたヘビー級のトップ選手対決のゴングはまもなく鳴る。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
日時(日本時間) | カード | 詳細 |
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8月23日(日) 03:00 | ディリアン・ホワイト vs.アレクサンドル・ポベトキン | WBC世界ヘビー級暫定タイトル戦 |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
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