スーパースターのカネロが4団体統一に大きく前進した。
日本時間9日、アメリカのテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで挙行されたスーパーミドル級3団体統一戦は、WBAスーパー&WBC王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)がWBO王者のビリー・ジョー・サンダース(イギリス)に8回終了TKO勝ち。目標に掲げる4団体統一に王手をかけた。
スーパーミドル級4団体統一を目指すカネロが3本目のベルトをかけて迎えたのがサンダースだった。サウスポーの技巧派であり、曲者とも言える無敗のチャンピオンは、さすがのカネロといえども簡単に攻略できないのではないか、と予想されていた。
実際に試合がスタートするとカネロはいつも以上に慎重だった。ジャブを上下に散らしながら下がるサンダースに対し、しっかりガードを固めながらジワジワと前に出るボクシング。それでもリーチのあるサンダースのジャブをもらわないのはさすがだ。サンダースをロープに押し込んで右ボディを打ち込み、攻勢をアピールしてポイントを獲得するあたりにもゲームメイクのうまさが感じられた。
サンダースはサイドに動きながらパンチを散らし、カネロのリズムを狂わせようと試みた。しかしカネロは決して勝負を急がず、WBO王者が攻め気に出た瞬間はスッとバックステップでかわす。これはまずいと思ったのだろう。サンダースは4回に手数を増やして「来い!」と挑発するなど状況を打開しにかかるが、カネロはなかなか当たらない顔面へのパンチを自重し、ボディ打ちを軸に冷静に対応した。
中盤に入るとカネロが徐々にピッチを上げていく。ところが5回、圧力を強めたが故にスキが生まれたのか、サンダースのジャブと左ストレートをもらった。サンダースはこの機に乗じようとしたものの、これで崩れないのがカネロの一流たる所以だろう。6回は再び右ボディ、さらには右をダブルで打ち込んでイギリス人の思うようにはさせなかった。
クライマックスは8回に訪れた。カネロがサンダースの右フックをかわして右アッパーを叩き込むと、これでダメージを負ったサンダースの動きが止まった。カネロが攻める。7万人超の観衆で埋まったスタジアムの興奮がマックスに達する。歓声の後押しを受け、カネロは左右のボディ、右ストレート、左フックで攻め立てる。いよいよKO決着のカウントダウンが始まったと思いきや、右目を痛めたサンダースが8回終了のインターバルで棄権を申し出て、試合は唐突に終わった。
マッチルームボクシングのプロモーター、エディ・ハーン氏はリング上のインタビューで「サンダースは目が見えなくなったので、セコンドが試合を続行させなかった」と棄権の理由を明かした。そして「カネロはだれとでも戦う。カレブ・プラントとの試合はだれもが認める比類なきチャンピオンシップとなる。カネロはAJ(アンソニー・ジョシュア=ヘビー級3団体統一王者)と並んで全階級を通じてのスーパースターだ」と持ち上げた。
カネロは昨年、長年パートナーシップを結んでいたゴールデンボーイプロモーションズから独立し、フリーエージェントとして我が道を進み始めた。目標に定めたのがスーパーミドル級での4団体統一だった。昨年12月にWBAスーパー王者だったカラム・スミス(イギリス)を下し、今回はサンダースを撃破して残るスーパーミドル級のベルトは1本のみ。そのIBF王者のカレブ・プラント(アメリカ)との試合は9月の開催が期待されている。
この日、コロナパンデミックによる規制が取り払われたNFLダラスカウボーイズの本拠地、AT&Tスタジアムには7万3126人の観衆が集まった。これは1978年にマイアミのスーパードームで行われたヘビー級世界タイトルマッチ、モハメド・アリとレオン・スピンクスの第2戦がマークした6万3352人を23年ぶりに抜き、アメリカの屋内ボクシング興行の集客数の新記録となった。
新時代のスーパースターとしてボクシング界に君臨するカネロが圧倒的な強さと同時に、その人気ぶりをあらためて証明した。秋に4団体統一戦となれば、さらに注目を集めるビッグマッチになるのは間違いない。30歳にして旬を迎えているスーパースターの勢いはしばらく止まりそうにない。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
サウル“カネロ”アルバレスの戦績
- 国籍:メキシコ
- 生年月日:1990年6月8日
- 身長:175.3cm
- リーチ:177.8cm
- 対戦数:58試合
- 対戦記録:55勝1敗2分、37KO
ビリー・ジョー・サンダースの戦績
- 国籍:イングランド
- 生年月日:1989年8月30日
- 身長:180.3cm
- リーチ:180.3cm
- 対戦数:30試合
- 対戦記録:30勝0敗、14KO
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カネロ vs サンダースのファイトカード
カード | マッチデータ |
---|---|
カネロ・アルバレス vs.ビリー・ジョー・サンダース | WBC、WBA、WBOスーパーミドル級タイトルマッチ |
エルウィン・ソト vs.高山勝成 | WBOジュニアフライ級タイトルマッチ |
キエロン・コンウェイ vs.スレイマン・シソクホ | ジュニアミドル級 |
フランク・サンチェス vs.ナギー・アギレラ | ヘビー級 |
マーク・カストロ vs.アービング・マシアス・カスティーヨ | ジュニアライト級 |
キーショーン・デイビス vs.ホセ・アントニオ・メザ | ライト級 |
ケルビン・デイビス vs.ヤン・マルサレク | ウェルター級 |
クリスチャン・アラン・ゴメス・デュラン vs.TBA | ウェルター級 |
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
日時(日本時間) | カード | 詳細 |
---|---|---|
5月9日(日) 9:00 | カネロ・アルバレス vs.ビリー・ジョー・サンダース | スーパーミドル級3団体統一戦 |
5月16日(日) 3:00 | ハーパー vs.チェ・ヒョンミ | WBC、WBA世界女子Sフェザー級王座統一戦 |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
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