衝撃の結末から7カ月──。WBC世界ヘビー級暫定王者のアレクサンデル・ポベトキンとディリアン・ホワイトが再び拳を交えることになった。3月27日(日本時間28日)、会場は前回と所変わってイギリス領ジブラルタルのヨーロッパ・ポイント・スポーツ・コンプレックス。地中海の出入り口でダイレクトリマッチの実現だ。
まずは2020年8月に行われた第1戦を振り返りたい。40歳のポベトキンは元WBA世界ヘビー級王者ながらタイトルを失ったのは2013年5月と7年も前の話。対する32歳のホワイトは2015年に現ヘビー級3冠王者のアンソニー・ジョシュアに敗れた試合がキャリア唯一の敗北で、大方の予想はホワイト有利と出ていた。
試合は挑戦者のポベトキンが好調なスタートを切ったものの、ホワイトが徐々に実力を発揮し、4回に左フックを決めてポベトキンからダウンを奪う。このラウンド、ホワイトは挑戦者に左アッパーを炸裂させてさらにダウンを追加。ポベトキンは立ち上がったものの、だれの目にもホワイトの勝利は目前と思われた。
ところがである。5回が始まって間もなくだった。劣勢のポベトキンが左アッパーを振り抜くと、これがホワイトのアゴを直撃して巨体がバッタリとキャンバスに落下。ホワイトはピクリとも動かず、レフェリーはカウントを数えずに試合をストップしたのだ。
めったにお目に掛かることができない鮮やかな逆転KO劇に、主催者であるマッチルームボクシングの名物プロモーター、エディ・ハーン氏は「信じられないことが起こった」と驚愕のコメント。殊勲の勝利を挙げたロシア人は「2度ダウンしたけどダメージはなかった。ホワイトが無事であることを祈るよ」と粋なセリフを発したのである。
大いに盛り上がった試合は“もう一度”がボクシングの世界では常識だ。雪辱を誓うホワイトは汚名返上を、ポベトキンは前回の勝利がフロックでなかったことを証明するためにリングに上がる。まずはポベトキンの意気込みを紹介しよう。
「ホワイトは強く、戦うに値する選手だ。今回は復讐にくるホワイトに対し、うまく、美しく対処しようと思っている。前回の試合で犯したいくつかの間違いを修正すべく、戦術を変える必要性も十分に理解している」
一方のホワイトは「今回はもう少しスイッチを入れて防御を固めないといけない」と自らを戒めながらも、「私は彼をノックアウトしたい。彼に対して本当に激しい攻撃を仕掛けたい」と本音をのぞかせている。
本人が防御のことを指摘しているように、ホワイトは今回ばかりは同じ轍を踏まないように慎重に試合を進めるだろう。ノックアウしたい気持ちを抑えながら、判定でもかまわないという気持ちでラウンドを重ねるのだ。第2戦を「ホワイトの判定勝ち」と予想する声があるのはこうした理由から。戦前の予想は前回の結果にもかかわらずホワイトの有利と出ているが、前回も下馬評を覆して劇的な勝利を飾ったのがポベトキンだ。相性の問題もあり、試合の行方はまったく分からないと言うしかない。
ヘビー級のトップを走るのはWBC王者のタイソン・フューリー、そして3冠王者のジョシュアだ。このイギリスのツートップは対戦に合意したと伝えられており、もし実現すればイギリスヘビー級史上最大のビッグマッチ、いや、世界中のボクシングファンが注目するメガファイトになることは間違いないだろう。
ポベトキンvsホワイトⅡを観るにあたっては、この試合の勝者がツートップとの対戦に近づくことも頭に入れておきたい。ホワイトがポベトキンとの再戦を「キャリア最大の試合」と位置づけるのは、リベンジだけでなく、その先も見据えてのことだろう。ヘビー級の今後を占う意味でも見逃すことのできない一戦だ。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
ディリアン・ホワイトの戦績
- 国籍: 英国
- 生年月日: 1988年4月11日
- 身長: 193 cm
- リーチ: 198.1 cm
- 対戦数: 29試合
- 戦績: 27勝2敗、18KO
アレクサンドル・ポベトキンの戦績
- 国籍: ロシア
- 生年月日: 1979年9月2日
- 身長: 187.9 cm
- リーチ: 190.5 cm
- 試合数: 39試合
- 対戦成績: 36勝2敗1分、25KO
ディリアン・ホワイト vs アレクサンドル・ポベトキンのファイトカード
- ディリアン・ホワイト vs アレクサンドル・ポベトキン(WBCヘビー級暫定王座戦)
- テッド・チーズマン vs JJ メトカーフ(ブリティッシュ・スーパーウェルター級王座戦)
- クリス・コンゴ vs マイケル・マッキンソン(コンゴのWBOウェルター級グローバル王座防衛戦)
- ファビオ・ワードリー vs エリック・モリーナ(ヘビー級)
- ユーセフ・クマリ vs ケイン・ベイカー(スーパーフェザー級)
- キャンベル・ハットン (対戦相手調整中)(スーパーフェザー級)
ボクシング注目選手
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
日時(日本時間) | カード | 詳細 |
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3月28日(日) 4:00 | ポベトキン vs.ホワイト | ヘビー級12回戦 |
4月3日(土) 23:00 | アフマダリエフ vs.岩佐亮佑 | WBAスーパー&IBF世界Sバンダム級王座統一戦 |
4月18日(日) 8:00 | アンドラーデ vs.ウィリアムス | WBO世界ミドル級タイトルマッチ |
4月24日(日) 3:00 | マーティン vs.プロスパー | EBU ヨーロッパスーパーライト級 |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
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