ホワイトが雪辱を果たした。 イギリス領ジブラルタルのヨーロッパ・ポイント・スポーツ・コンプレックスで行われたWBCヘビー級暫定タイトルマッチは、挑戦者のディリアン・ホワイトが王者のアレクサンデル・ポベトキンに4回2分39秒TKO勝ち。7カ月前の悪夢を払拭する勝利でベルトを取り戻した。
雪辱に燃えるジャマイカ出身のイギリス人、ホワイトがスタートから遺憾なく実力を発揮した。初回、鋭いジャブで先制攻撃を仕掛けて右につなげると、ロシア人のアテネ五輪金メダリスト、ポベトキンがよろめいて後退。早くも観客はヒートアップだ。この日のホワイトはジャブがいい。2回にはジャブから右ストレートをヒット。ポベトキンの左目下が早くも腫れてきた。
劣勢のポベトキンも懸命に前に出て豪打を振るうが、ホワイトはバックステップを冷静に使ってポベトキンに反撃を許さない。逆に3回にも右カウンターを決めて、試合のペースを完全に掌握する。そしてフィニッシュは4回に訪れた。
開始ゴング早々、ホワイトが右フックを振り下ろすとこれを食らったポベトキンが大きくグラついた。すかさす畳みかけるホワイト。ここは一気に勝負をつけられなかったものの、呼吸を整えるとジワジワと真綿で首を絞めるようにロシア人を追い込んでいく。
ラウンド終盤、ホワイトの右が立て続けにヒット。ポベトキンはダウン寸前となり、巨体を揺らしてロープへ後退。追いかけるホワイトが左フックをたたきつけると、ポベトキンがキャンバスに沈む。フラフラと立ち上がると、レフェリーが両腕を交錯して試合をストップ。同時にコーナーからタオルが舞った。
昨年8月の第1戦は有利を伝えられながらまさかのKO負け。会心のリベンジ成功でホワイトは勝利の瞬間、大喜びするかと思いきや、コーナーからスツールをリングに上げて反対コーナーへ向かった。立ったままだったポベトキンにスツールをすすめ、敗者の頭に水をかける。2試合連続で拳を交えた宿敵の体を気遣い、健闘を称えることを優先したのだった。
ホワイトをプロモートするマッチルームボクシングのエディ・ハーン氏は試合後、「今晩はディリアンのキャリアを再び軌道に戻すことが目的だった。私たちは望んだ場所に戻ってきた。狙いは同じだ。ディリアンは世界タイトルを狙う」とホワイトを全面バックアップすると約束した。
ただし、ヘビー級のトップ戦線は今、3冠王者のアンソニー・ジョシュア、WBC王者のタイソン・フューリーというイギリスのツートップが主要4団体のベルトを支配しており、さらにはこの2人が2021年に2試合の契約を結ぶ──という壮大なプランが進行している。契約が正式に締結されれば、他の選手がベルト争いに入っていく余地はしばらくなさそうな状況というわけだ。
ホワイトの次戦についてハーン氏は8月と具体的な時期を示した。普通に考えれば1勝1敗となったポベトキンとの第3戦というプランが考えられ、ホワイトも「もし彼が望むなら」と“決着戦”を拒否していないが、41歳のポベトキンは引退するのではないかとも伝えられ、実現するかどうかは疑問が残る。
次戦にどんな舞台が用意されるかは現時点で分からないが、ホワイトがヘビー級トップ戦線の主要キャストとして生き残った事実は大きい。ヘビー級はジョシュア、フューリーだけでなく、前WBC王者のデオンテイ・ワイルダーや、ダニエル・デュボアとの英国ヘビー級無敗対決に勝利したジョー・ジョイス、クルーザー級4冠王者からヘビー級に転向したオレクサンデル・ウシクら豪華な顔ぶれが並ぶ。
ホワイトの完全復活により、ジョシュア、フューリーに続くヘビー級トップファイターたちの争いが面白くなってきたと言えるだろう。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
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