京口紘人がメキシコで魅せた! WBA世界ライト・フライ級タイトルマッチが10日(日本時間11日)、メキシコのグアダラハラで行われ、スーパー王者の京口紘人(ワタナベ)が正規王者のエステバン・ベルムデス(メキシコ)に8回24秒TKO勝ち。団体内の王座を統一するとともに4度目の防衛を成功させた。
自分が劣っているところは何もない──。
試合前、力強くそう公言していた京口が有言実行のパフォーマンスを見せた。初回からジャブ、左アッパー、右ストレートをリズム良く次々と打ち込んでいった。守ってはベルムデスのパンチをしっかりブロック。防いだ瞬間のリターンパンチも効果的で、試合は早いラウンドで終わるのではないかとさえ思えた。
しかし、母国で簡単に負ける訳にはいかないベルムデスがここから意地を見せる。中間距離で勝てないとみるや、体をつけて接近戦を挑んできたのだ。京口は落ち着いて対応し、アッパーでベルムデスの顔を何度も跳ね上げて、ベルムデスの顔面が早くも鼻血で赤く染まった。3回にはメキシカンが偶然のバッティングで前頭部から出血。京口も返り血を浴び、試合は流血戦となっていった。
それでもベルムデスはなりふり構わず頭を下げて前進を続けた。京口が徐々にメキシカンのラフなスタイルに手を焼き始める。ここぞとばかりにベルムデスはボディ攻撃で迫る。京口は相変わらずアッパーや右を決め続けるものの、相手のバッティングにフラストレーションを感じたのか、6回に頭で押し返して減点1を科せられた。
出血で負傷判定の可能性が頭をよぎったのだろうか京口は7回にピッチを上げ、コンパクトなコンビネーションを打ち込んでベルムデスを後手に回らせる。序盤からパンチをもらい、ダメージが蓄積してきたベルムデスは頭を下げてこれをかわそうとした。そこに京口がパンチを打ち下ろすと後頭部を直撃してしまい、レフェリーがラビットパンチによる減点を京口に告げた。
それでも8回、機を見るに敏な京口が一気にラッシュをかけた。再び右を打ち下ろしてベルムデスのヒザが折れると、そのままロープに押し込んでショートパンチの嵐だ。メキシカンの抵抗がないと見るや、レフェリーが試合を止めた。
京口はけがで1年3カ月のブランクを作った影響を一切感じさせないだけでなく、標高1500メートルという高地でもスタミナ切れしないたくましいパフォーマンスを見せた。さすがとしか言いようがない。勝利者インタビューでアウェーでの防衛戦をあえて選択した
理由を問われると、「熱いメキシコのファンの前で明確な勝利を収めることで自分の価値も高まると思った」と胸を張った。
これで海外での防衛は昨年のアメリカに次いで2度目。本人の言葉通り、チャンピオンとしての価値は着実に高まっていると言えるだろう。
この先、注目されるのはWBC王者、寺地拳四朗(BMB)との2団体統一戦だ。同じ階級でベルトを巻く両者には何年も前から統一戦が期待されていた。なかなか機は熟さなかったが、昨年に寺地がタイトルを失い、3月に再び王座に返り咲いたことで統一戦の話が再燃。寺地は京口の勝利を見届けると、すぐさまツイッターで「京口選手おめでとう! 準備は整ったね」とツイートした。
世界を目指す京口としては海外で2度防衛したのだから、次は国内で寺地と雌雄を決するのは悪くない話だ。軽量級離れした強打で注目を浴びてきた京口と、ディフェンスの良さとテクニックが自慢の寺地。以前はWBC王座を8度防衛した寺地が有利という見方が多かったが、今なら予想は拮抗するのではないだろうか。
京口も試合後のインタビューで寺地の名前こそださなかったものの統一戦を希望。今をときめくバンタム級の井上尚弥(大橋)が3団体統一で注目されたことを見れば分かるように、団体統一戦は最近のトレンドでもある。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
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