ミドル級とスーパー・ミドル級で世界王者のベルトを保持するサウル“カネロ”アルバレスが19日(日本時間20日)、米サンアントニオのアラモドームでWBAスーパー・ミドル級スーパー王者、カラム・スミスに12回大差判定勝ち。WBA王座を統一するとともに空位のWBC王座を獲得し、スーパー・ミドル級最強を世界に知らしめた。
階級の垣根を取り払った番付であるパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングで長年1位にランクされるカネロがスーパー・ミドル級で最強との呼び声高いスミスに完勝した。カネロは試合後、「この勝利が間違いなく今までのベストだった」と自画自賛。実際にベストかどうかは分からないが、理想に近いパフォーマンスを見せたことは確かだった。
191センチのスミスに対し、スーパー・ウェルター級からクラスを上げていったカネロは173センチ。リングに現れた両者の体格差は歴然としていた。しかし、試合が始まるとその差はまるでないかのごとくラウンドは進んでいった。
カネロはスミスにジワジワと圧力をかけながらジャブを突いていく立ち上がり。これがクリーンヒットではないにせよ、長身のスミスにしっかり届くのだからこの時点でカネロはある程度の手応えをつかんだに違いない。早くも余裕の生まれたスーパー・スターは尻上がりに圧力を強めていった。
無敗のスーパー王者も手をこまねいていたわけではない。背の低いカネロに対して左右のアッパーを再三狙い、右ストレート、左フックも打ち込んでいくのだが、目のいいカネロは上体を柔らかく動かしながらこれをスイスイとかわした。
4回、カネロの右でスミスがバランスを崩すとアラモドームに集まった1万1426人の観衆が沸いた。流れを食い止めたいスミスは5回に反撃を試みるも、これが大きな効果を上げられないと、あとはカネロが思いのままに試合をコントロールしていく。ボディブローを要所で打ち込みながら右ストレート、左フックにつなげ始めると、長身のイギリス人はダウンを回避するのがやっと。カネロは最終回も攻め立ててゴールテープを切る。スコアは119-109が2人、残りが117-112だった。
カネロがもう一つ上のライト・ヘビー級でWBO王座を獲得したのが昨年11月のこと。スーパー・ミドル級での試合となると18年12月のロッキー・フィールディング戦以来、2年ぶり2度目となる。階級制のスポーツで階級の移動はデリケートな話であり、カネロに不安材料がまったくないわけではなかった。にもかかわらず完勝したことが、カネロの「ベスト」発言につながったのだろう。
今回の勝利によりトップボクサーとしての地位をより確固たるものにしたカネロはこの先、どのような試合を選択していくのだろうか。長年連れ添った大手プロモーション、ゴールデンボーイプロモーションズとの契約を解消したカネロは現在フリーエージェントであり、すべてを自分で決めることができるという王様的な立場にある。
試合後、カネロは「168ポンド(スーパー・ミドル級)の王座を統一することが最初の目標」と話した。マッチルームボクシングのエディ・ハーン・プロモーターは傘下のWBO同級王者、ビリー・ジョー・サンダースの名前を上げ、ファンから期待の大きいIBFミドル級王者、ゲンナジー・ゴロフキン(こちらもハーン氏の契約選手)との因縁の第3戦は「サンダースの次」との見方を示した。
当面はスーパー・ミドル級を主戦場にすると宣言したカネロだが、ミドル級でもライト・ヘビー級でも戦えることを証明しており、「だれとでも戦う。ドアはいつでも開いている」と付け加えることを忘れなかった。通常であれば次の試合は来年5月5日のシンコ・デ・マヨ(メキシコ戦勝記念日)の週末になるはず。カネロが誰と戦えば最も魅力的な試合になるのか。しばらくはメディアの情報を参考にしながら対戦相手を予想して楽しむことになりそうだ。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
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