WBA世界ライト・フライ級タイトルマッチが13日(日本時間14日)、米テキサス州ダラスのアメリカンエアラインズ・センターで行われ、スーパー王者の京口紘人(ワタナベ)が挑戦者同級10位のアクセル・アラゴン・ベガ(メキシコ)に5回1分32秒TKO勝ち。3度目の防衛に成功し、アメリカデビュー戦を飾った。
2階級制覇チャンピオンの京口が満を持して目標としていたアメリカのリングに上がった。リングアナウンサーはわざわざ日本語で「浪速のマッドボーイ!」と京口を紹介。期待の高さが伝わってきた。
3度目の世界挑戦にかけるベガが初回から闘志をむき出しにして京口に迫り、試合は幕開けと同時に白熱した。両雄が近距離の打撃戦に身を投じると、ボディ打ちとアッパーを激しく応酬。2回には身長147センチのベガが同じく162センチの京口をロープに押し込んで攻勢をアピール。このラウンドはベガの闘志が上回る形となった。
挑戦者に懐にもぐられて押され気味となった京口だが、2階級制覇王者はキャリアが違った。慌てることはなくボクシングを修正し、3回からはジャブを中心に試合を組み立て、中間距離で戦う時間を増やしていく。ベガは接近戦が仕掛けづらくなり、無理に距離を詰めると、京口は左ボディとアッパーで挑戦者を迎撃した。
京口が徐々にペースをつかみつつあった5回、フィナーレは意外な形で訪れた。ベガが右を振り下ろした直後、顔をしかめて京口に背を向けて後退。京口が殴りかかったところで主審が試合を止めた。どうやらベガが京口の側頭部を殴った際、右拳を激しく痛めてしまったようだった。
あっけない幕切れとはいえ、京口は試合後「試合が終わってほっとする時間というのは懐かしいなと思う。いまは日本じゃなくてアメリカの地で安堵できているのは幸せだと思う」と胸をなで下ろした。
京口が心の底からほっとするのも無理はなかった。何しろ試合をするのが2019年10月以来、1年5ヶ月ぶりで、しかも初めてとなるアメリカのリング。20年11月には地元、大阪で予定されていた防衛戦を自らの新型コロナウイルス感染により流してしまった。このときは引退も考えたというほど落ち込んだが、「引退は逃げだ」と現役続行を決意。今回の試合に向けては神経質なほどウイルス感染防止対策に気を遣い、ようやく手にした勝利だったのだ。
試合内容について京口は「ギリギリ合格点かなというところ」と辛めに採点したが、これは自らの軽量級離れした強打への期待をよく理解した上での発言だろう。試合そのものは決して悲観するような内容ではなかった。「欲を言えば倒したかった」と京口は試合後にコメントしたが、あのまま試合が続いていれば豪快なノックアウトも十分にあり得たのではないだろうか。
今後については未定ながら、契約するマッチルームボクシングのエディ・ハーン・プロモーターは京口のフライ級、スーパー・フライ級進出に期待する発言をしている。これに関して京口は「ベストの階級で長くチャンピオンでいたい」とまずはライト・フライ級で統一王者を目指す考え。ライト・フライ級でのビッグマッチ、将来の複数階級制覇と、京口の夢はアメリカでますます広がったと言えるだろう。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
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