ボクシング界を牽引するスーパーミドル級4団体統一王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)と、ミドル級2団体統一王者ゲンナジー“GGG”ゴロフキンによる3度目の対決は17日(日本時間18日)、ラスベガスのT-モバイル・アリーナでいよいよゴングが鳴る。ファンが待ちに待った第3戦(トリロジー)はいかなる結末を見せるのだろうか──。
“因縁の対決”とは使い古されたフレーズだが、この2人ほどいがみ合っているライバルはなかなかいない。6月に開催された発表記者会見で、カネロは「ヤツは人前ではいつも紳士づらをしているが、SNSでは私の悪口を言いたい放題に言っている。とんだゲス野郎だ!」と宿敵を痛烈に批判。ゴロフキンは汚い言葉こそ口にしなかったが、会見は終始ピリピリしたムードに包まれた。
なぜ、カネロはこれだけ怒っているのか。トップスターに登り詰めたカネロとミドル級で圧倒的な強さを誇った3団体統一王者ゴロフキンは2017年9月に初対戦してドロー。しかし、この試合はどちらかといえばゴロフキンの勝利を支持する声が多く、これがカネロのプライドを大いに傷つけた。
1年後の第2戦、カネロがゴロフキンに小差判定勝ちすると、今度はゴロフキンが収まらない。加えて試合前にカネロのドーピング違反が発覚し、延期を余儀なくされたこともGGGには許せなかった。カネロは潔白を主張したものの、ゴロフキンがこれを激しく批判したことで、両者の溝はさらに深まったのである。
そうした中でトリロジーは模索されたが、カネロ陣営が後ろ向きな姿勢を見せ続けたことで両者の関係はさらにこじれていった。待たされるゴロフキンは苛立ち、ファンから「逃げている」と見なされたカネロもストレスをためた。カネロはその後、スーパーミドル級で4団体統一をはたしたものの、今年4月にWBAライトヘビー級王者のドミトリー・ビボル(ロシア)にまさかの敗退。そしてスーパーミドル級に戻し、ついにゴロフキン戦を選択したのである。
4年の歳月をへて実現した第3戦の予想はカネロ有利に大きく傾いている。最大の理由は今回の試合が過去2戦と違い、スーパーミドル級でのファイトだということだ。カネロは同級で4団体統一に成功したのに対し、ゴロフキンがこのクラスで戦うのは初めて。カネロ有利の予想が多いのはある意味当然だろう。
加えて40歳になったゴロフキンの衰えを指摘する声もある。ゴロフキンは4月、日本で村田諒太(帝拳)を下してWBA王座を吸収し、ミドル級2冠王者となった。ただし、序盤は村田のボディ攻撃に苦しそうな表情を見せる場面もあり、かつて連続KO防衛を重ねて無敵だったころの迫力を感じさせなくなっている。
ならば、ゴロフキンに勝機はないのかといえばそうではない。たとえばゴロフキンの不安材料とされる階級アップが逆にプラスに働くという見方があるのだ。4月の村田戦で、ゴロフキンは減量にかなり苦しんでいたと伝えられており、減量苦から解放されればパフォーマンスは必ず向上するというのである。
前回の試合で敗れたゴロフキンが雪辱に燃えるのは当然だが、連敗が許されないカネロも尻に火がついている。ビボル戦の前まで、カネロの敗北は2013年のフロイド・メイウェザー戦だけだった。まだ若かったカネロが無敗のまま引退したスーパースター、メイウェザーに敗れたのは仕方がない。周囲はそう思ってくれた。しかし、スーパースターの地位を確立したあとの敗北は意味がまったく違う。今回の試合、カネロはビボル戦で揺らいだスーパースターの威信を回復させるという大きなミッションを背負っているのだ。
試合は過去2戦と同じようにハイレベルな技術戦になると予想される。ゴロフキンの好戦的なボクシングを、試合巧者のカネロが迎え撃つ。その構図に変わりはないだろう。スーパースターのカネロがライバル対決にケリをつけ、ビボルへの雪辱戦にコマを進めるのか。不惑のGGGが待ちに待ったリベンジのチャンスを生かすのか。因縁のライバル対決にいよいよ終止符が打たれようとしている。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
日時(日本時間) | カード | 詳細 |
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9月18日(日) 9:00 | カネロ vs.ゴロフキン | 4団体統一世界スーパーミドル級タイトル戦 |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
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