文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在はDAZNのモータースポーツ中継でも解説を務める。
第1回「角田が義経に見えてきた!?」
6日間の開幕前テストが終わり、今季のF1にはいつも以上のワクワク感を感じています。
いくつか理由はありますが、一番は新しいF1マシンの純粋な美しさでしょうか。車体の技術規約が大きく変わる中、各チームがこんなにも個性的なマシンを繰り出してくるとは正直想定外でした。そのどれもがカッコよく、しっかり作り込んである。しかも速い!
去年まで最後尾近くが指定席だったアルファロメオ、ハース、ウィリアムズも、いずれも上位タイムを叩き出しました。10チームの戦闘力が、かつてないほど接近していることは間違いないでしょう。
そんな状況を踏まえて、今季は次の2点に特に注目しようと思います。実力伯仲のシーズンを制するのは誰か。そして角田裕毅はどれだけ戦えるか、です。
バルセロナ、バーレーンのテストを通じて、終始速かったのがフェラーリでした。一発タイムが速いだけでなく、ロングランでも安定していた。さらにほとんどトラブルフリーと、信頼性も高いレベルを見せていました。
しかしフェラーリをしのぐ速さを見せていたチームが、ひとつだけありました。レッドブルです。最終日のマックス・フェルスタッペンは終了間際までずっと固いタイヤでロングランを続け、その間1分37秒台後半のラップタイムをコンスタントに出していました。対照的にフェラーリのシャルル・ルクレールやメルセデスのジョージ・ラッセルは、ソフトによるロングランでタイムの落ちが大きいことを差し引いても、1分42~43秒台とかなりのギャップがありました。
そして終了8分前、フェルスタッペンは総合ベストとなる1分31秒720を叩き出して、テストを締めくくりました。ただしこれは最も柔らかいC5タイヤによるもので、一発タイムはフェラーリのポテンシャルも十分高そうです。
一方でメルセデスは、かなり手こずっている印象です。「サイドポッドゼロ」の斬新な改良マシンを投入してきた時には、攻め続ける王者の姿勢に感銘を受けましたが、バウンシング(激しい縦揺れ現象)を最後まで収束できませんでした。フェルスタッペンと同じC5タイヤのラッセルが1秒以上の大差をつけられたのは、縦揺れを抑えようと車高を上げるなどして、本来のポテンシャルを犠牲にしたのでしょう。
ということでメルセデスの出遅れはほぼ明らかで、少なくとも開幕数戦はフェルスタッペンVSルクレール(あるいはカルロス・サインツ)という構図で、優勝争いは推移していきそうです。もちろんメルセデスも遠からず巻き返してくるでしょうが、もしフェルスタッペンがスタートダッシュに成功したら、そのまま連覇へと突っ走りそうです。
さらに言えば今年のレッドブルRB18の挙動は、去年までのようなピーキーさがない。ということはセルジオ・ペレスにとっても運転しやすい車のはずで、去年逃したコンストラクターズタイトルも獲ってしまうかもしれません。
では2年目の角田裕毅は、どれだけ戦えるでしょう。
デビューシーズンの去年は予想外の苦戦を強いられ、これまで築いてきたレーシングドライバーとしての自信を粉々に砕かれた1年でした。しかしシーズン後半から徐々に自分を取り戻し、最終戦アブダビGPで自己最高位の4位をもぎ取って、きっちり落とし前をつけました。
4位入賞の結果以上に大きかったのが、初日フリー走行から予選、レースとすべてのセッションで、この年まったくかなわなかったチームメイトのピエール・ガスリーをしのぐ速さを見せたことです。角田が自信を取り戻す過程で、これがダメ押しになったことは容易に想像できます。
今年の抱負を本人に尋ねると、「ピエールに勝つこと」と、即答してました。1年前も同じように答えていたと記憶しますが、今回は十分な根拠を感じます。もちろんアルファタウリのマシンに戦闘力があることが大前提ですが、チームメイトを凌ぐ速さを披露できれば、結果は自ずと付いてくる。小林可夢偉以来となる10年ぶりの日本人F1ドライバー表彰台も、決して夢ではないでしょう。
最後にちょっと、脱線させてください。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観ていたら、菅田将暉演じる義経が、「わずかな手勢を貰えば勝ってみせる」と大見栄を切るシーンが出てきました。「いくさの経験もないくせに」と冷笑する、大ベテランの武将たち。すると義経は、「経験もないのに自信もなかったら、何もできない!」と、彼らを一喝するのです。その姿、飛躍を期す今季の角田くんにまんまダブって見えて、ちょっと愉快な気分になったのでした。
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月18日(金) ~19日(土) | 3月20日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月25日(金) ~26日(土) | 3月27日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 4月8日(金) ~4月9日(土) | 4月10日(日) |
第4戦 | エミリア・ロマーニャGP | 4月22日(金) ~ 23日(土) | 4月24日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月6日(木) ~7日(土) | 5月8日(日) |
第6戦 | スペインGP | 5月20日(金) ~21日(土) | 5月22日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月27日(金) ~ 28日(土) | 5月29日(日) |
第8戦 | アゼルバイジャンGP | 6月10日(金) ~11日(土) | 6月12日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月17日(金) ~ 18日(土) | 6月19日(日) |
第10戦 | イギリスGP | 7月1日(金) ~ 2日(土) | 7月3日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 7月8日(金) ~9日(土) | 7月10日(日) |
第12戦 | フランスGP | 7月22日(金) ~23日(土) | 7月24日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月29日(金) ~ 30日(土) | 7月31日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 8月26日(金) ~ 27日(土) | 8月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 9月2日(金) ~3日(土) | 9月4日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月9日(金) ~ 10日(土) | 9月11日(日) |
第18戦 | シンガポールGP | 9月30日(金) ~10月 1日(土) | 10月2日(日) |
第19戦 | 日本GP | 10月7日(金) ~ 8日(土) | 10月9日(日) |
第20戦 | アメリカGP | 10月21日(金) ~ 22日(土) | 10月23日(日) |
第21戦 | メキシコGP | 10月28日(金) ~ 29日(土) | 10月30日(日) |
第22戦 | サンパウロGP | 11月11日(金) ~ 12日(土) | 11月13日(日) |
第23戦 | アブダビGP | 11月18日(金) ~ 19日(土) | 11月20日(日) |