文・小倉茂徳(おぐら・しげのり)
モータースポーツジャーナリスト・解説者。鈴鹿サーキットと同じ1962年生まれ。1987-88年ホンダのF1チームの広報スタッフとしてF1を転戦。以後、現職に。子供向けにレーシングカーの仕組みと面白さを伝えながらSTEM教育への入り口となるレクチャーも行っている。2016年からは、スポーツのネット配信DAZNのF1解説を担当。
歴史と伝統のニュルブルクリンクへ
2020年のF1第11戦はドイツのニュルブルクリンクでのアイフェルGPとしての開催となりました。
「アイフェル」はニュルブルクリンクがある山系の名前です。ニュルブルクリンクは1926年にオープンという長い歴史を誇るサーキット。そこでは長年にわたってドイツGPとアイフェルレンネン(アイフェルレース)が開催され、こうしたレースでメルセデスが活躍してきたところでした。
1964年のドイツGPでは、ホンダがここでF1デビューをしました。また、映画『RUSH』にも描かれた1976年ニキ・ラウダが大けがをしたのもここニュルブルクリンクでした。
1984年に現代の形にコースが改修されたあともニュルブルクリンクは、ドイツGP、ヨーロッパGP、ルクセンブルクGPとして2013年までF1を開催してきました。今回は、7年ぶりの開催でした。
ニュルブルクリンクのあるアイフェル山系は、その西側がベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットのそばまで延びていて、両サーキットの気候は、冷涼、雨と霧が多いなど似通っています。
そして、今年のアイフェルGPも金曜日は雨と悪天候で医療用ヘリコプターが飛行不能となり、フリー走行の1回目と2回目が実施できないまま終わりました。医療用ヘリコプターが飛行できないと、コース上の走行は絶対にできないという決まりがあるからです。
結果、7年ぶりの開催にもかかわらず、土曜日のわずか1時間のフリー走行のみで、予選と決勝に臨むことになりました。まさに未知との戦いとなりました。
速いメルセデス
それでも速かったのは、地元のメルセデス勢でした。予選では、バルテリ・ボッタスがポールポジションを獲得。2番手もルイス・ハミルトンでした。
決勝でもメルセデス勢の速さは別格でした。ボッタスはハミルトンと激しくトップを争うなかで、ブレーキングに失敗。これでトップをハミルトンに明け渡すことになりましたが、ボッタスはタイヤを交換して、再度ハミルトンを追いました。
今季の王座争いを考えると、ボッタスはハミルトンの前で勝ちたいところでした。しかし、ボッタスのマシンにトラブルが発生。これでボッタスは無得点でレースを終えることになってしまいした。「まだあきらめない」というボッタスですが、王座争いが厳しくなるなか、次の戦いに期待をつなぎます。
一方、ハミルトンは好調にトップを走りました。終盤の44周目にセーフティカーが入り、2位との差が詰まりました。でも、50周目のレース再開のときには、後続との間隔ができるとストレートでも車体をウィービング(蛇行)させてタイヤを温め、万全な状態で1コーナーへと進入。ふたたびトップを揺るぎないものにしました。これは『DAZN』の公式Twitterで筆者の推しシーンとしても挙げてみました。
速さ、強さ、巧さを見せたハミルトンは、ミハエル・シューマッハーが保持するF1通算最多勝の91勝目に並んだのでした。
メルセデス勢の速さが目立った週末でしたが、それに唯一迫ったのはレッドブルのマックス・フェルスタッペンでした。予選ではメルセデス勢と並ぶ1分25秒台のタイムを出し、決勝ではハミルトンに次ぐ2位でした。
レッドブルのマシンもホンダのパワーユニットもまだメルセデスには並んでいません。でも、近づきつつあるところは見せてくれました。
このアイフェルGPの直前にホンダは、2021年限りでF1活動を終了すると発表しましたが、あと1年と少しでどこまで行けるのか?ホンダの技術者たちの頑張りに期待です。
リカルド久々の3位&頑張りの見えた人たち
今回のアイフェルGPでも頑張った人たちが際立ちました。
まずルノーのダニエル・リカルドです。最近好調なルノーを駆るリカルドは、レース序盤の9周目にフェラーリのチャールズ・ルクレールと熱く激しくもフェアという、見事なバトルで3位を獲得。
途中、コースアウトによるコース外通過のペナルティなどで順位を落としますが、レース中盤にはふたたび3位に浮上。リカルドにとって2018年モナコGP優勝以来となる表彰台に登りました。
ほかにも頑張った人たちがいました。ランス・ストロールの体調不良で、急きょレーシングポイントで代役参戦となったニコ・ヒュルケンベルクはその筆頭でしょう。予選アタックから走行開始となったヒュルケンベルクでしたが、決勝では徐々に順位を上げて、8位に入賞。チームに貴重なポイントとアドバイスをもたらしました。
また、普段はマシンの性能に苦しめられがちだったハースのロマン・グロジャンが9位、アルファロメオのアントニオ・ジョヴィナッツィが10位と、それぞれ入賞してみせました。グロジャンは今季初得点、ジョヴィナッツィは開幕戦以来のポイント獲得となりました。
ポルトガルのアウガルヴェへ
F1は第12戦ポルトガルGPへと向かいます。ポルトガルGPは1996年以来となりますが、今回は新しいアウガルヴェ(アルガルヴェ)サーキットでの開催です。
中低速のコーナーが多いコースレイアウトは、どこに有利に作用するのでしょう?
ヨーロッパ大陸の南西端にほど近いサーキットで、事前のテストデータがまったくないなかで、F1はまた未知へと挑みます。
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | オーストリアGP | 7月3日(金) ~ 4日(土) | 7月5日(日) |
第2戦 | シュタイアーマルクGP | 7月10日(金) ~11日(土) | 7月12日(日) |
第3戦 | ハンガリーGP | 7月17日(金) ~18日(土) | 7月19日(日) |
第4戦 | イギリスGP | 7月31日(金) ~ 8月1日(土) | 8月2日(日) |
第5戦 | 70周年記念GP | 8月7日(金) ~ 8日(土) | 8月9日(日) |
第6戦 | スペインGP | 8月14日(金) ~15日(土) | 8月16日(日) |
第7戦 | ベルギーGP | 8月28日(金) ~29日(土) | 8月30日(日) |
第8戦 | イタリアGP | 9月4日(金) ~ 5日(土) | 9月6日(日) |
第9戦 | トスカーナ・フェラーリ1000GP | 9月11日(金) ~12日(土) | 9月13日(日) |
第10戦 | ロシアGP | 9月25日(金) ~ 26日(土) | 9月27日(日) |
第11戦 | アイフェルGP | 10月9日(金) ~ 10日(土) | 10月11日(日) |
第12戦 | ポルトガルGP | 10月23日(金) ~24日(土) | 10月25日(日) |
第13戦 | エミリア・ロマーニャGP | 10月31日(土) | 11月1日(日) |
第14戦 | トルコGP | 11月13日(金) ~ 14日(土) | 11月15日(日) |
第15戦 | バーレーンGP | 11月27日(金) ~ 28日(土) | 11月29日(日) |
第16戦 | サクヒールGP | 12月4日(金) ~5日(土) | 12月6日(日) |
第17戦 | アブダビGP | 12月11日(金) ~ 12日(土) | 12月13日(日) |