文・小倉茂徳(おぐら・しげのり)
モータースポーツジャーナリスト・解説者。鈴鹿サーキットと同じ1962年生まれ。1987-88年ホンダのF1チームの広報スタッフとしてF1を転戦。以後、現職に。子供向けにレーシングカーの仕組みと面白さを伝えながらSTEM教育への入り口となるレクチャーも行っている。2016年からは、スポーツのネット配信DAZNのF1解説を担当。
未知のコース、アウガルヴェ
F1第12戦はポルトガルGPでした。ポルトガルGPは、1996年以来24年ぶり。でも、アウガルヴェ・インターナショナルサーキットでのF1開催は初めてでした。
初開催で未知なコースだったうえに、滑りやすい路面とマシンを揺さぶる強風に全員が苦しめられました。
そして、決勝日は時折ぱらつく小雨にも悩まされるという、きわめて難しい状況にドライバーたちは挑まなければなりませんでした。
ハミルトン92勝の新記録
予選からメルセデスのルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスの一騎打ちの様相でした。
予選最後のQ3で、ボッタスは最後の1回アタックに懸けました。一方、ハミルトンはそれを知って、ラスト3周で2回アタックをする方法をとりました。
結果は、ハミルトンのポールポジションとなりました。ボッタスは大事なアタックラップでコース上にいた他車の影響を受けていたのでした。
決勝でもハミルトンがスタートでトップに躍り出ました。ところが、オープニングラップで滑ったハミルトンはそこから3番手まで順位を落としてしまいました。
それでも20周目にトップへと戻り、以後ゴールまで独走。ミヒャエル・シューマッハ―が2006年中国GPで達成したF1史上最多勝の91勝を、14年ぶりに破る92勝目を記録しました。F1の歴史に新たなページが加えられました。
チャンピオン争い
ハミルトンが優勝し、ボッタスは序盤トップになったものの2位。これでハミルトン256点とボッタス179点で、点差は77点になりました。でも、まだボッタスには望みがつながっています。
3位はレッドブルのマックス・フェルスタッペンでした。フェルスタッペンはオープニングラップで、レーシングポイントのセルジオ・ペレスに接触されましたが、ダメージはなくレースを続行できました。
これでフェルスタッペンのポイントは162点になり、ハミルトンとの差は94点になりました。
次のレースでチャンピオンに望みをつなぐには、ハミルトンの順位次第ではありますが、フェルスタッペンは上位でフィニッシュすることが必須になります。
バトルいっぱいなレース
非常に難しいコンディションでのレースでしたが、随所にバトルがあったレースでした。しかも、高度なバトルでした。
まずオープニングラップでは16番手スタートのキミ・ライコネンが一気に7位までジャンプアップし、次のラップに入った直後に6位にまで上がりました。
さらにライコネンはレース中盤にはマクラーレンのカルロス・サインツJr.と入賞圏の10位をめぐって激しく争いました。
互いに全力を出しながらも、相手にきちんと走行ラインを残すフェアなバトルで、まさにプロの戦いを見せてくれました。
一方、10位を勝ち取ったサインツJr.は、序盤には小雨で滑りやすい路面のなかで7位スタートから一気に順位を上げて、2周目から6周目までトップを走行し、その技の巧みさを見せました。
バトルはまだ続きました。レース終盤の5位をめぐってペレスにアルファタウリのピエール・ガスリーが迫りました。
64周目、ガスリーは1コーナーに向かってイン側からペレスを抜こうとします。が、ペレスは大きくラインをイン側に変えて順位を守ります。
次の65周目、ペレスがイン側を守ろうしたのを受けて、ガスリーはアウト側から大回りをしてペレスから5位を勝ち取りました。この2周の激しい戦いぶりは、推しのシーンとして『DAZN』のSNSでも紹介しています。
ここに記した以外にも、今回はバトルと追い抜きシーンがいっぱいでした。
そして、かえすがえすも滑りやすい路面をさらに不安定なコンディションにさせた小雨に、終始車体を振り回すような風のなかで、F1ドライバーたちの絶妙なマシンコントロールの巧みさが光ったレースでもありました。
次戦はイタリアのイモラへ
ヨーロッパ大陸の南西端のポルトガル・アウガルヴェから、F1はイタリアのイモラへと向かいます。第13戦エミリア・ロマーニャGPは、ポルトガルGPからの2週連続開催です。
機材など移動の関係で、第13戦は金曜日の走行がなく、土曜日にフリー走行を1回(90分間)だけ走ったら、あとは予選、日曜日の決勝となります。
イモラのエンツォ・エ・ディーノ・フェラーリサーキットでのF1開催は、2006年のサンマリノGP以来。しかも、コースレイアウトは2007年に改修、変更されています。
またしても未知へと挑むF1とドライバーたち。注目です。
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | オーストリアGP | 7月3日(金) ~ 4日(土) | 7月5日(日) |
第2戦 | シュタイアーマルクGP | 7月10日(金) ~11日(土) | 7月12日(日) |
第3戦 | ハンガリーGP | 7月17日(金) ~18日(土) | 7月19日(日) |
第4戦 | イギリスGP | 7月31日(金) ~ 8月1日(土) | 8月2日(日) |
第5戦 | 70周年記念GP | 8月7日(金) ~ 8日(土) | 8月9日(日) |
第6戦 | スペインGP | 8月14日(金) ~15日(土) | 8月16日(日) |
第7戦 | ベルギーGP | 8月28日(金) ~29日(土) | 8月30日(日) |
第8戦 | イタリアGP | 9月4日(金) ~ 5日(土) | 9月6日(日) |
第9戦 | トスカーナ・フェラーリ1000GP | 9月11日(金) ~12日(土) | 9月13日(日) |
第10戦 | ロシアGP | 9月25日(金) ~ 26日(土) | 9月27日(日) |
第11戦 | アイフェルGP | 10月9日(金) ~ 10日(土) | 10月11日(日) |
第12戦 | ポルトガルGP | 10月23日(金) ~24日(土) | 10月25日(日) |
第13戦 | エミリア・ロマーニャGP | 10月31日(土) | 11月1日(日) |
第14戦 | トルコGP | 11月13日(金) ~ 14日(土) | 11月15日(日) |
第15戦 | バーレーンGP | 11月27日(金) ~ 28日(土) | 11月29日(日) |
第16戦 | サクヒールGP | 12月4日(金) ~5日(土) | 12月6日(日) |
第17戦 | アブダビGP | 12月11日(金) ~ 12日(土) | 12月13日(日) |