文・小倉茂徳(おぐら・しげのり)
モータースポーツジャーナリスト・解説者。鈴鹿サーキットと同じ1962年生まれ。1987-88年ホンダのF1チームの広報スタッフとしてF1を転戦。以後、現職に。子供向けにレーシングカーの仕組みと面白さを伝えながらSTEM教育への入り口となるレクチャーも行っている。2016年からは、スポーツのネット配信DAZNのF1解説を担当。
14年ぶりのコースで初の2日間開催
F1第13戦は、イタリアのイモラにあるエンツォ・エ・ディーノ・フェラーリサーキット(通称:イモラサーキット)で、エミリア・ロマーニャGPとして開催されました。このサーキットでは以前サン・マリノGPが2006年まで開催され、今回は14年ぶりのF1開催となりました。
このイモラサーキットは、2006年のF1開催のあと、ピットとその前のストレートなどコースが部分改修されたうえ、前回のポルトガルGPから連戦だったことで機材の移動の関係で土日の2日間のみの開催となりました。
結果、土曜日午前の90分間のフリー走行のみで、コース慣熟とマシンのセッティングを終え、あとは予選と決勝に挑むという難しい作業になりました。
メルセデスチーム7連覇
こうした難しい状況のなかでも、やはりメルセデス勢はいつも通りの抜群の速さを見せました。予選ではバルテリ・ボッタス-ルイス・ハミルトン、決勝ではルイス・ハミルトン-バルテリ・ボッタスの順で、1-2フィニッシュとなりました。
この1-2フィニッシュで、メルセデスチームは今季のコンストラクターズチャンピオンを確定させました。メルセデスにとってコンストラクターズチャンピオンは2014年から7連覇で、1999~2004年のフェラーリのコンストラクターズチャンピオン6連覇を超えるF1の新記録です。
メルセデスのコンストラクターズ7連覇は、ちょうど2014年に現在のハイブリッドシステムによるパワーユニット(PU)規定になってからで、現在最強のPUと言われる所以でもあります。
イモラの難しさ&空力の難しさ
メルセデス圧勝の1-2フィニッシュに見えたレースでしたが、ボッタスにとっては難しいレースでした。
スタートでトップ立ったボッタスでしたが、2周目に他車の車体の一部(フロントウイングの一部)が車体の下側に入り込んでしまいました。
これで車体の底面と路面との間で発生するダウンフォースがかなり減少してしまい、コーナーでは操縦がとても難しいマシンになってしまいました。とくに最終コーナーであるターン17、18のリバッツァコーナーで不安定になりました。
このリバッツァで不安定になって脱出加速が鈍ると、その後のメインストレートからターン2のタンブレロコーナー入り口までのスピードが鈍ってしまいます。こうして、ボッタスは43周目にレッドブルのマックス・フェルスタッペンに抜かれて3位に落ちてしまいました。
メルセデスチームは走行中のデータから、ボッタス車のダウンフォースがかなり失われたことには気づいていましたが、原因の破片をみつけて取り除けたのは、レース終盤51周目の2回目のピットストップのときでした。
51周目にフェルスタッペンがタイヤのトラブルでリタイヤしたことでボッタスが2位に戻りましたが、ハミルトンに優ることはできませんでした。2位となってしまったボッタスでしたが、ダメージのあったマシンでもかなりの速さを見せたのは見事でした。
コーナーではダウンフォースが沢山ほしいけれども、それで空気抵抗を増やすと追い抜きができなくなる。あるいは、接近するとダウンフォースが抜けて、スピンしやすくなる。今回のイモラは、現代のF1マシンの難しさがはっきり出るコースでした。
でも、2022年から登場する新型F1マシンはこうした問題をかなり解消できるものとされています。再来年に期待です。
それでも熱い戦いが
セーフティカー周回明けの58周目には、アルファタウリのダニール・クビアトがフェラーリのチャールズ・ルクレールを抜き、4位となりました。
クビアトはセーフティカーが終わるタイミングで、ルクレールのタイヤが温まりきらないところを狙って一気に勝負をかけました。
もしそのチャンスを逃したら、ルクレールもタイヤが温まってしまい、今度は自分のほうが接近するとダウンフォースが抜ける問題に悩まされて、ずっと抜けないままになっていたでしょう。
ダウンフォース量の変化による追い抜きの難しさ、タイヤの温まりと順位攻防、この両方の課題に上手く対処していたのは、ルノーチームのダニエル・リカルドでした。
結果、リカルドは第11戦アイフェルGPに続く今季2度目の3位を獲得しました。
また、このGP直前に来季のアルファロメオ契約継続が発表されたキミ・ライコネンとアントニオ・ジョヴィナッツィが9位と10位に入り、チームにとって今季初のダブル入賞となりました。
ドライバーズチャンピオン争いと新たな期待へ
今季のコンストラクターズチャンピオンは決まりましたが、F1でより歴史と伝統があるドライバーズチャンピオン争いはまだ決まっていません。
ただ、今回の1-2フィニッシュで、ハミルトンが王手をかけました。次戦のトルコGPで、ハミルトンがミヒャエル・シューマッハーと並ぶF1史上最多のワールドチャンピオン7回目を獲得するか注目です。
次戦のトルコGPは、2011年以来の開催です。バトルも多いコースで、高速の左コーナーのターン8を攻めるドライバーたちの走りも見どころです。
一方、エミリア・ロマーニャGP直後の11月4日には、角田裕毅がイモラでアルファタウリの単独走行テストを行いました。
この日のテストで角田は合計352㎞を走行し、金曜日のフリー走行出走に必要な条件である走行距離300㎞を満たしました。今季終盤戦で角田がF1のFP1に出走する可能性がきわめて高くなりました。
角田は現在F1直下のF2でランキング3位。F1第15、16戦の際にはバーレーンでF2のラスト2ラウンド(4レース)もあり、そこでF1に正式参戦するのに必要なスーパーライセンス獲得資格(角田の場合、ランキング4位以上)とF2のチャンピオンを目指します。
F1、F2ともども、まだまだ見逃せない展開です。
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | オーストリアGP | 7月3日(金) ~ 4日(土) | 7月5日(日) |
第2戦 | シュタイアーマルクGP | 7月10日(金) ~11日(土) | 7月12日(日) |
第3戦 | ハンガリーGP | 7月17日(金) ~18日(土) | 7月19日(日) |
第4戦 | イギリスGP | 7月31日(金) ~ 8月1日(土) | 8月2日(日) |
第5戦 | 70周年記念GP | 8月7日(金) ~ 8日(土) | 8月9日(日) |
第6戦 | スペインGP | 8月14日(金) ~15日(土) | 8月16日(日) |
第7戦 | ベルギーGP | 8月28日(金) ~29日(土) | 8月30日(日) |
第8戦 | イタリアGP | 9月4日(金) ~ 5日(土) | 9月6日(日) |
第9戦 | トスカーナ・フェラーリ1000GP | 9月11日(金) ~12日(土) | 9月13日(日) |
第10戦 | ロシアGP | 9月25日(金) ~ 26日(土) | 9月27日(日) |
第11戦 | アイフェルGP | 10月9日(金) ~ 10日(土) | 10月11日(日) |
第12戦 | ポルトガルGP | 10月23日(金) ~24日(土) | 10月25日(日) |
第13戦 | エミリア・ロマーニャGP | 10月31日(土) | 11月1日(日) |
第14戦 | トルコGP | 11月13日(金) ~ 14日(土) | 11月15日(日) |
第15戦 | バーレーンGP | 11月27日(金) ~ 28日(土) | 11月29日(日) |
第16戦 | サクヒールGP | 12月4日(金) ~5日(土) | 12月6日(日) |
第17戦 | アブダビGP | 12月11日(金) ~ 12日(土) | 12月13日(日) |