中野信治氏が1998年ベルギーGP、F1史上最大の多重事故を回顧「本当に突然…水煙で何も見えない」｜F1

元F1ドライバーの中野信治氏が、F1史上最大の多重事故が起こった1998年のベルギーGPについて回顧している。

1998年のベルギーGPと言えば、元王者デイモン・ヒルが大波乱のウェットレースを制し、ジョーダンに初のF1優勝をもたらしたレースとして知られる。だがこのレースで最大のハイライトとされるのが、オープニングラップでのターン1～2間の多重事故だ。

ラップリーダー以外は水しぶきにより視界がほとんどゼロという状況下、2番手スタートのデヴィッド・クルサードがターン1過ぎ、オールージュ手前でコース内側のウォールに激突した。

後方のマシンは視界のない中でクラッシュを避けることができず、次々に玉突き状態で追突。クルサードを発端にエディ・アーバイン、アレクサンダー・ヴルツ、ジョニー・ハーバート、オリヴィエ・パニス、ヤルノ・トゥルーリ、ルーベンス・バリチェロ、ペドロ・ディニス、ミカ・サロ、高木虎之介、リカルド・ロセット、そして中野氏と12台が絡むF1史上最大の多重事故となった。

同レースでは21番グリッドからのスタートだった中野氏は「何も見えなかったです」と当時のスタートの状況を振り返った。「WEDNESDAY F1 TIME#23」で該当映像を見ながら語っている。

「だいぶ後ろの方なんですけど、何も見えていないですね。左のフロントに僕も当たってたと思うんですけど。本当に突然です。水煙で何も見えなくて。目の前1メートル2メートルで視界が、と思ったらもうクルマのパーツが散乱していて。避ける場所はどこにもなかった」

F1中継で実況を務めるサッシャ氏が「今（のルール）だったらスタートディレイとか赤旗でしたよね」と語ると中野氏は「この雨だとそうなる可能性が高いですね」と同意を示している。

1998年当時はTカーのルールがあったため、中野氏はミナルディのスペアカーに乗り換え、再スタートを切った。だがスパの天候は良化せず、リスタート後トップを独走していたミハエル・シューマッハが周回遅れとなっていたクルサードのマシンに追突し、右フロントタイヤが吹き飛ぶクラッシュを起こす。

さらに、中野氏もレース中盤、ピットインしようとしたジャンカルロ・フィジケラに後方から追突され、マシンのリアウイングが大破するアクシデントに巻き込まれた。

「すごい勢いで（フィジケラが）ぶつかりましたね。このときの衝撃は今でも覚えています。強烈でしたね。後ろからぶん殴られたみたいな。この後ピットに入って、すぐリアウイングを直してもらって。（コースに）送り出してもらいなんとか完走できたんですけども。なかなか衝撃的でしたね」

「見ている側もそうだと思うんですが、水煙が上がっている感じしかわからないような状況で。まさか来ないよな、と思ったらまさかそのまま（追突された）、という」

結局“スパ・ウェザー”に翻ろうされた大波乱の1998年ベルギーGPは、8台のみ完走。デイモン・ヒルはこれがキャリア最後の優勝となり、2位に僚友ラルフ・シューマッハが入ったためにジョーダン無限ホンダ勢のワン・ツーフィニッシュとなった。3位にはザウバーのジャン・アレジが入り、中野氏は5ラップダウンながら、8位で完走扱いとなっている。

いまだにF1ファンの間で語り草となっている1998年のスパは、度重なるクラッシュに巻き込まれた中野氏にとっても忘れがたい一戦となっている模様。

8月29日決勝、2021年のF1第12戦ベルギーGPは、果たして予測不可能＆荒れ模様の“スパ・ウェザー”となるのか、それともドライでのハイスピードレースとなるのか、レース時間の天候やコースコンディションも大きな注目ポイントとなりそうだ。

なお、中野氏がエピソードを語った「WEDNESDAY F1 TIME #23」は『DAZN』で配信されており、9月1日夜まで視聴可能となっている。

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