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【小倉茂徳の視点】第20回・角田裕毅が2021年アルファタウリからF1参戦…F1に相応と言える角田の優れた資質とは?|F1

【小倉茂徳の視点】第20回・角田裕毅が2021年アルファタウリからF1参戦…F1に相応と言える角田の優れた資質とは?|F1DAZN
DAZNのF1中継で解説を務めるモータースポーツジャーナリスト、小倉茂徳氏が独自の視点でモータースポーツ界の今に迫る。7年ぶりの日本人F1ドライバーとなった角田裕毅についてどういう点が優れているのか、小倉氏の見解は?
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文・小倉茂徳(おぐら・しげのり)

モータースポーツジャーナリスト・解説者。鈴鹿サーキットと同じ1962年生まれ。1987-88年ホンダのF1チームの広報スタッフとしてF1を転戦。以後、現職に。子供向けにレーシングカーの仕組みと面白さを伝えながらSTEM教育への入り口となるレクチャーも行っている。2016年からは、スポーツのネット配信DAZNのF1解説を担当。

2020-12-12 Tsunoda Yuki Alphatauri F1 Formula 1

20歳の俊英がついにF1へステップアップ

12月16日、F1チームのスクーデリア・アルファタウリが、角田裕毅(20)を2021年からレギュラードライバーとして起用すると発表した。角田は来年からピエール・ガスリーのチームメイトとしてアルファタウリ・ホンダでF1を転戦する。

小林可夢偉以来の日本人F1ドライバー

2020-12-15 Kamui Kobayashi 2012 Suzuka Formula 1 F1

この角田のF1参戦は小林可夢偉が2014年、ケータハムF1チームを最後にF1から離れて以来、7年ぶりの日本人F1ドライバーの誕生となる。

小林可夢偉は、2009年からトヨタ、ザウバーでF1を転戦し、2012年に鈴鹿サーキットで開催された日本GPでは、1990年日本GPでの鈴木亜久里、2004年アメリカGPでの佐藤琢磨に続いて、日本人F1最上位の3位にもなっていた。

小林は2013年に一度F1を離れたが、自分がF1から離れると、日本の次の世代の夢が途絶えてしまうとして、2014年にF1に復帰していた。

その当時角田はレーシングカートドライバーとして頭角を現していた時期で、小林から7年の歳月を経て、日本の夢は角田に引き継がれることになった。

角田裕毅の強さ、持ち味とは?

2020-08-08 Formula 2 F2 Tsunoda

角田は2005年に4歳でレーシングカートを始めた。幼少期からカートを始めるのは、現在F1のチャンピオンやトップドライバーとほぼ同じである。その翌年にはキッズクラスのチャンピオンなど地方の大会で速さを示した。

レーシングカートで数々の栄冠を獲得して、2016年にはフォーミュラのスーパーFJに進出。フォーミュラでも目覚ましい活躍をし、 2018年はFIA F4日本でシリーズチャンピオンを獲得。

2019年からはレッドブルの育成ドライバーであるレッドブル・ジュニアチームのドライバーとなり、ユーロ・フォーミュラオープンとF1のサポートレースであり、F1の2ステップ下のクラスとなるFIA F3に参戦した。

今年はF1直下のカテゴリーであるF2に進出。ポールポジション4回、優勝3回、2位3回、3位1回などでシリーズランキング3位となり、F1に乗るために必要なスーパーライセンスを獲得した。

角田はとても速いうえに競り負けない強いドライバーとして、F3時代にも注目されていた。とくにブレーキングの巧さは、レーシングカート時代よりかなりの評判だった。これで誰にも負けずにコーナーに飛び込み、ライバルを凌駕した。

2020-12-05 F2 Formula 2 Tsunoda Yuki

今季のF2での角田はさらに大きな成長を見せていた。タイヤの使い方がトップクラスに巧かった。

F2のタイヤはF1用とほぼ同様に、負担をかけると性能が早く落ちてしまう作りになっている。そこで、角田は速さを維持しながらもタイヤに負担をかけない、とても丁寧な走りかたをしていた。

この技は、F1に上がったときにも大きな武器になる。際立った速さ、強さとともに、このタイヤの使い方の巧さもF1関係者の注目を集める要因となった。

また、今季は常に冷静な様子もレース中に公開された無線交信から伝わってきた。モータースポーツはメンタルな強さも要求されるスポーツであり、角田のメンタルトレーニングの成果が急成長で発揮されていることもうかがえた。

今季のF2最終戦で、角田はポールポジションとレース1優勝、レース2では2位とファステストラップポイントを獲得した(※最速タイムは18位フィニッシュのミック・シューマッハーだったが、入賞圏内最速の角田がファステストラップの2ポイント加算となった)。

これでランキングを5位から3位にしてスーパーライセンス獲得を揺るぎないものにした。ここ一番の勝負所で好結果を出せる落ち着きと強さ。これは、F1でも大きなプラスとなるだろう。

今季のF2は、最優秀新人賞にあたるアントワン・ユベール・アワードを角田に授けた。この栄誉も、角田の優れた資質にふさわしいものだった。

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レッドブルの期待の大きさ

レッドブル・ジュニアドライバーとして角田を育成するレッドブルの期待も極めて大きい。

11月4日には、F1第13戦エミリア・ロマ―ニャGP直後、イモラサーキットでアルファタウリチームによる角田のための単独テスト走行も行った。

F1の規定により2018年型マシンでの走行となったが、雨上がりのやや濡れた路面から始まった午前と、ドライ路面へと変わった午後に走行。合計72周の約352㎞を走った。

走行距離300㎞以上を走らせたことで、今季のF1終盤戦でのフリー走行起用も可能とさせていた。

F1の走行はとても費用がかかる。角田のためにテスト走行を準備したアルファタウリチーム(とレッドブル)による、角田への期待。その熱意がこのテストでもあらためて明確になった。

2020-12-15 Tsunoda Yuki Alphatauri F1 Formula 1

また、ホンダもこのテストで使う2年前の車両用のパワーユニット(エンジンなどのハイブリッド装置)を、あらためて整備して日本から運んだ。

角田は2016年にSRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクール※後述)を優秀な成績で卒業。ホンダの選手育成システムのHFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)のメンバーでもある。

テストのために旧型パワーユニットを整備して送り出したホンダの、角田への期待の大きさがここからもうかがえる。ホンダは2021年でF1の活動を終了するとすでに公式発表している。だが、先述のように角田はホンダとレッドブルの両方の育成選手である。アルファタウリのドライバーとしてF1で戦える道がすでにある。今後の戦いぶりによってはレッドブルチームへ行く可能性もある。

唯一気をつけなければいけないのは、レッドブルの育成システムは評価と判断がとても厳しく、見切りも早いことだ。成績がやや不振になるとすぐに代わりのドライバーを起用しようとする向きもある。だが、角田には速さと巧さと強さと安定感がある。

2020-11-05 Tsunoda Yuki Alphatauri

2021シーズンはあらたな幕開けに

角田裕毅がF1に参戦する2021年は、F1にとっても大きな刺激となる。F2で角田と戦ってチャンピオンを勝ち取ったミック・シューマッハーもハースF1チームからデビューする。

アルファタウリチームは前身のトロロッソの時代も含めると、2008年イタリアGPでのセバスティアン・フェテル、今年のイタリアGPでのピエール・ガスリーがF1で初優勝している。マシンの性能とレース展開しだいではあるが、この二人に続いて日本人初のF1優勝の可能性も見えてきそうなところでもある。

2020-12-15 Tsunoda Yuki Alphatauri F1 Formula 1

「鈴鹿で、日本のファンの前で走りたい」

F2最終戦のレース後に、2021年への抱負をこう英語で語った角田裕毅。2020年は中止となってしまったF1日本GPだが、新シーズンのF1開催カレンダーには鈴鹿での日本GPが掲載されている。

日本人F1ドライバーの復活は日本のモータースポーツ界にとっても大きな夢と期待となる。そして、日本人選手の海外最高峰競技での活躍は、多くの人々の注目と応援が集まることでしょう。

10月の日本GPはもちろんのこと、シーズン開幕から角田の戦いは全戦全セッション、ライブで見守りたいところ。新たなシーズンのF1は、日本のモータースポーツファンにとって、大きな期待を抱く1年となるはずです。

2020-03-31-F2-Yuki Tsunoda

※SRS=鈴鹿サーキットレーシングスクール。
角田在校時の校長は日本人初のレギュラーF1ドライバーとなった中嶋悟氏。2019年からは校長にあたるプリンシパルがインディ500で2度優勝した佐藤琢磨氏、副校長にあたるバイスプリンシパルにはF1をはじめ豊富な国際経験レース経年を持ち、DAZNのF1解説も務める中野信治氏が務めている。

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チーム・ドライバー

日程・番組表

 レースフリー走行・予選決勝
第1戦オーストリアGP 7月3日(金) ~ 4日(土)7月5日(日)
第2戦シュタイアーマルクGP 7月10日(金) ~11日(土)7月12日(日)
第3戦ハンガリーGP 7月17日(金) ~18日(土)7月19日(日)
第4戦イギリスGP 7月31日(金) ~ 8月1日(土)8月2日(日)
第5戦70周年記念GP 8月7日(金) ~ 8日(土)8月9日(日)
第6戦スペインGP 8月14日(金) ~15日(土)8月16日(日)
第7戦ベルギーGP 8月28日(金) ~29日(土)8月30日(日)
第8戦イタリアGP 9月4日(金) ~ 5日(土)9月6日(日)
第9戦トスカーナ・フェラーリ1000GP 9月11日(金) ~12日(土)9月13日(日)
第10戦ロシアGP 9月25日(金) ~ 26日(土)9月27日(日)
第11戦アイフェルGP 10月9日(金) ~ 10日(土)10月11日(日)
第12戦ポルトガルGP 10月23日(金) ~24日(土)10月25日(日)
第13戦エミリア・ロマーニャGP 10月31日(土)11月1日(日)
第14戦トルコGP 11月13日(金) ~ 14日(土)11月15日(日)
第15戦バーレーンGP 11月27日(金) ~ 28日(土)11月29日(日)
第16戦サクヒールGP 12月4日(金) ~5日(土)12月6日(日)
第17戦アブダビGP 12月11日(金) ~ 12日(土)12月13日(日)