【小倉茂徳の視点】第3回・F1各チームの今季勢力図が露見…ハンガロリンクも熱戦必至｜F1

文・小倉茂徳（おぐら・しげのり）

モータースポーツジャーナリスト・解説者。鈴鹿サーキットと同じ1962年生まれ。1987-88年ホンダのF1チームの広報スタッフとしてF1を転戦。以後、現職に。子供向けにレーシングカーの仕組みと面白さを伝えながらSTEM教育への入り口となるレクチャーも行っている。2016年からは、スポーツのネット配信DAZNのF1解説を担当。

2週連続開催でもドラマあり

F1第2戦シュタイアーマルクGPは、第1戦からの2週連続開催、同じサーキット、タイヤも同じ選択肢。こうなると、第2戦は第1戦のデジャヴのようになるのか? と危惧する声もありました。

でも、それは杞憂でした。

チームは前回の改善点を見つけ、改良部品も投入してきている、ドライバーもさらにコースを学習して、より高みを目指す走りと戦い方になった。

わずか数日でも、日進月歩ならぬ分進日歩以上の急速な進歩をする。まさにF1ならではのすごさと底力を見せつけられたレースでもありました。

速いメルセデスとハミルトン

第1戦に引き続き、第2戦でもメルセデスチームは強さと速さを見せました。晴れの金曜フリー走行と決勝、そして雨の土曜日の予選でも、全天候に対応した速さもありました。

とくに、ルイス・ハミルトンの予選の速さは驚異的で、2番手のマックス・フェルスタッペンに約1.2秒もの大差をつけていました。そして、決勝でもまさに横綱相撲のような他を寄せ付けない速さで圧勝しました。相撲の言葉を借りれば、近年のハミルトンは「心・技・体」がすべて整った状態のように見えます。

雨の予選のプレゼント

雨の予選ではさらに興味深い結果になりました。

今季進境著しいマクラーレンチームは、カルロス・サインツが3位、ランド・ノリスが6位になりました。また、ルノーもトップ10に入ってきます。さらに、ウィリアムズのジョージ・ラッセルが12番手につけ、一昨年のF2チャンピオンはドライビング技術がただ者ではでないところも見せてくれました。

マクラーレンとレーシングポイントの躍進

一方、雨の予選で大きく順位を落としたのは、レーシングポイント勢でした。今季のレーシングポイントは、昨年のメルセデスそっくりなクルマとなりましたが、その性能もメルセデスに近く、ストレートでもコーナーでもバランスよく速いマシンになっています。ところが、予選では雨に足元を取られるように、ランス・ストロールは13番手、セルジオ・ペレスは17番手に沈みました。

しかし、決勝は晴れ。

路面はドライコンディション。

スタート前の実況のなかで、レーシングポイント勢がどこまでくるかが今日の注目のひとつと言いましたが、まさにそのようになりました。

ぺレスは表彰台にも届きそうな勢いでした。

しかし、最後は他車と接触してペースが落ち、ペレス6位、ストロール7位に終わります。一方、最終ラップにこのペレス、ストロールを抜いて5位を勝ち取ったのが、マクラーレンのノリスでした。これもまた、近年低迷を続けてきたマクラーレンの戦力回復ぶりと、ノリスの速さと強さが見られました。この3人の三つ巴のバトルはまさに熱戦でした。そして、今季のF1はバトルと追い抜きが多くなって、より熱い展開になっていることもわかります。

第3戦はまったく異なるコースへ

今週は開幕3連戦の3戦目、ハンガリーGPです。

舞台となるハンガロリンクは、タイトな低速コーナーが多く、かつては退屈なコースと言われました。でも今は、現代のF1マシンの強烈なコーナリング性能と加速性能の魅力がよく現われるコースと言われます。

高速型のレッドブルリンクとは異なるコース特性にうまく対応するマシンとドライバーは? さらなるアップデートでまたマシンの性能と勢力図が変わるのか? メルセデスとハミルトンを止める者が出てくるのか? ここを得意としてきたレッドブルとホンダは? レーシングポイント、マクラーレン、ルノーなど中段グループの激戦は? など。

第3戦ハンガリーGPはどんな戦いになるでしょうか。また熱戦になることは間違いないでしょう。ほんとうに楽しみですね。

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