レーシングドライバーの中野信治氏が、2022年の第4戦エミリア・ロマーニャGP終盤、3位から大きく順位を落としたシャルル・ルクレールのスピンについて言及した。
イモラで行われたエミリア・ロマーニャGP決勝で、ルクレールは3位走行中の終盤、50/64周目にミディアムの第2スティントに見切りを付け、ソフトタイヤへと履き替えた。
これはファステストラップを狙うために行った駆け引きだったが、53周目にルクレールはターン14~15のシケインで縁石に乗り上げ、コントロールを失いスピン。ルクレールのマシンはタイヤバリアに左横から当たり、フロントウイングが一部破損してしまった。
再びピットインを行い、ウイング&タイヤ交換をしたためにルクレールは一時9位までポジションを下げた。そこから終盤の追い上げでセバスチャン・ベッテルや角田裕毅を抜き、ルクレールはなんとか6位でレースを終えている。3位(15点)を狙える位置で周回していたルクレールだったが、結果的に6位フィニッシュ(8点)となり、7ポイントを失う形になってしまった。
ルクレールはスピンの後タイヤバリアに横から当たり、なんとかコースに戻ることができた。だがもし当たりどころが悪かった場合は、6位フィニッシュどころかそこでレースが終了だったのではないかという見方もある。
レーシングドライバーの中野信治氏、松下信治氏の2人が『DAZN』の『WEDNESDAY F1 TIME #7』で、ルクレールの行き過ぎた攻め方、そしてその後のリカバリーで見せたドライビングテクニックについて、レーサーならではの視点で見解を口にした。
中野氏は“言葉は正しいかは分からないが”と前置きしつつ、ルクレールのターン14~15は「雑な攻め方だった」との見解を示した。
「おそらくレースをしていて(ドライバーは)抜けないなと感覚的にわかっているんです。それがタイヤのせいにしているところ(ソフトではなくミディアムで行くべきだったというルクレールの無線)もあって、気持ち的にネガティブになっていた。そこで焦りを生んだのかな、と思います」
「(縁石を使って)カットすると速いんですけど、縁石を超えた時のリスクはかなり伴う。大事な場面でやることではないんですよ。そこの冷静さを欠いていたというのは、あの無線からつながっていたのかなと」
「(ターン14ではステアリングの)切り始めが早すぎますよね。いつもよりも大胆に、直線的に抜けていこうとしている。速く走って前(セルジオ・ペレス)との差を詰めて、(次の)ターン17と18で真後ろに着こうとして、プッシュしすぎた」
「黄色の縁石を(段差のあるソーセージ縁石)明らかに超えているので。両方のタイヤが浮いて、飛んじゃっているんです。今年のクルマはこういう時ダウンフォースの変化が大きいので、余計にクルマの姿勢が崩れやすくなるんです。だから着地したときに安定性を失ってますよね。コントロールができず、跳ねて逆に向いてしまった」
ルクレールがバリアにヒットする直前の映像を見ながら、中野氏は「ちょっと最後にワザを見せているんですよ」と、モナコ人ドライバーが見せた瞬時の判断とテクニックが、驚異的だったと強調した。
「一瞬ブレーキを離して(タイヤを)転がすんですよ。当たる角度を、真横から(タイヤバリアに)当たるように、ここでワザを見せているんです」
「ブレーキを踏んだまま行くと、リアから(タイヤバリアに)当たってしまう。そうなるとクルマにダメージがあったと思うんです。そうならないように一瞬ブレーキを離して、クルマの向きをヒュッと変えているんです。これ、スゴいワザですよ」
スピンを喫し、コントロールを失ったルクレールの状況を踏まえ「この角度からだとヤバいな、と感じて、ブレーキを離してクルマを転がし(マシンの)角度を変えているんです。(当たる直前に)もう一回ブレーキを踏んで、真横から当たるようにした」と窮地のルクレールが一瞬の判断&ドライビングスキルで、被害を最小限に抑えたと分析している。
「このワザ、スゴいんですよ。もしこれがなければ、ポイント取れるところまで行けなくて、クルマが壊れたかもしれない」
松下氏も「こういうレースしている時って、アドレナリンがマックスの状態で、あっ!となった時は、感覚的にゆっくりになりますよね。ゾーンに入っている瞬間と言うか。(ルクレールは)ぶつかる、と思っているでしょうけど、本人はゆっくり感じているかもしれない」とトラック上でレーサーが経験している特殊な感覚について述べた。
中野氏は「ミスはあったけど、その被害を最小限に抑えて、最後にきっちりポイントを取ったところは、持っているなと。運もあるでしょうけど、ワザもあっての結果だったんで。ただのミスで終わらなかったところは本当にスゴい」とルクレールの手腕に賛辞を贈った。
今シーズンは4戦を終え、86ポイントでドライバーズランキングのトップを独走しているルクレール。2位のマックス・フェルスタッペンとは27ポイント差と、1レースでは届かない大差を築いている。第4戦は終盤のスピンにより順位を下げ、6位フィニッシュとなってしまったが、中野氏が語ったとおり被害を最小限に抑えたうえでの8ポイント奪取だったと言えるだろう。
ルクレールはレース後「この結果はすべて僕の責任。自分に腹が立つよ。この(失った)7ポイントがシーズンの最後に響くかもしれない」と語った。
今季レースは19戦残っている。まだまだ先は長いものの、ルクレールが見せた瞬時の超絶テク&リタイアを回避しての8ポイント奪取が、今季終了時のドライバーズランキングにどう影響するのか、今季の戦いは引き続き見逃せない展開が続きそうだ。
Getty Images
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月18日(金) ~19日(土) | 3月20日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月25日(金) ~26日(土) | 3月27日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 4月8日(金) ~9日(土) | 4月10日(日) |
第4戦 | エミリア・ロマーニャGP | 4月22日(金) ~ 23日(土) | 4月24日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月6日(木) ~7日(土) | 5月8日(日) |
第6戦 | スペインGP | 5月20日(金) ~21日(土) | 5月22日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月27日(金) ~ 28日(土) | 5月29日(日) |
第8戦 | アゼルバイジャンGP | 6月10日(金) ~11日(土) | 6月12日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月17日(金) ~ 18日(土) | 6月19日(日) |
第10戦 | イギリスGP | 7月1日(金) ~ 2日(土) | 7月3日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 7月8日(金) ~9日(土) | 7月10日(日) |
第12戦 | フランスGP | 7月22日(金) ~23日(土) | 7月24日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月29日(金) ~ 30日(土) | 7月31日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 8月26日(金) ~ 27日(土) | 8月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 9月2日(金) ~3日(土) | 9月4日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月9日(金) ~ 10日(土) | 9月11日(日) |
第18戦 | シンガポールGP | 9月30日(金) ~10月 1日(土) | 10月2日(日) |
第19戦 | 日本GP | 10月7日(金) ~ 8日(土) | 10月9日(日) |
第20戦 | アメリカGP | 10月21日(金) ~ 22日(土) | 10月23日(日) |
第21戦 | メキシコGP | 10月28日(金) ~ 29日(土) | 10月30日(日) |
第22戦 | サンパウロGP | 11月11日(金) ~ 12日(土) | 11月13日(日) |
第23戦 | アブダビGP | 11月18日(金) ~ 19日(土) | 11月20日(日) |