レーシングドライバーの中野信治氏が、2022年第6戦スペインGPにおけるジョージ・ラッセルvsマックス・フェルスタッペンのバトルについて、レーサーならではの視点で見識を示している。
スペインGPではレース前半、シャルル・ルクレールがトップを快走し、2番手をジョージ・ラッセルが走行する。マックス・フェルスタッペンは9周目にターン4でコースアウトした影響もあり一度ポジションを下げ、3番手でラッセルを追う状況となっていた。
フェルスタッペンは予選終盤にも発生したDRSがうまく開かないトラブルにも悩まされ、トラック上でなかなかラッセルに並びかけることができず。そんな中、24/66周目のターン1でDRSが機能したフェルスタッペンは、インにラインを取ったラッセルよりもさらに内側へと飛び込む。だがラッセルは冷静にラインを一度外に振り、フェルスタッペンよりも外からターン1に入っていった。
ターン1進入角度のきついフェルスタッペンはブレーキを早めたことからトラクションがうまくかからず。一方のラッセルはなめらかな加速でターン1のアウトから続くターン2のインへと入っていった。フェルスタッペンはラッセルの後ろに再度付き、ターン3ではラッセルの外側からオーバーテイクを目論むも、ラッセルはクリーンにフェルスタッペンを抑え、ポジションを守った。
この時の両者について中野氏は『DAZN』の生中継で「うまいなーこの2人。素晴らしいバトルですね」と感嘆の声を上げていた。そして『WEDNESDAY F1 TIME #11』において改めて「ラッセルは本当にスゴい」と発言。イギリス人ドライバーが見せたテクニック、及び両者のクリーンな姿勢に賛辞を贈っている。
「ラッセルはターン1(のライン取り)で抑えられるなと思ったけど、その内側まで(フェルスタッペンが)入ってきた。ここまで(インに)来られると無理だと思って、すぐに外へ振る判断をしているんです」
「(フェルスタッペンをライン取りで)止められないなと思って(ターン1へ飛び込む前に)1回左に行っている。1コーナーで自分がベストのラインを取れるところに戻っているんですよ。出口でもう一度仕掛けられるかどうかわからないけど、作戦を変えた」
「ここ(ターン1の飛び込み)でフェルスタッペンがブレーキを遅らせてくるかと思ったら、意外に(ブレーキポイントが)手前だったんですよ。(ブレーキが遅れて)ラインをつぶされたらラッセルは行けなかったんですけど、思いのほかフェルスタッペンが紳士的なラインを取ったわけです」
「(スペースが空くかどうか)それを瞬時に判断したラッセルが(ターン1で)外側から行った。この瞬間の判断ってすごいんです。1/1000秒とか、そこで相手の動きを見ながら、ここで(ターン1のアウト側から)オーバーテイクを仕返したんです」
中野氏は右、左と続くターン1~2のあと「ここからがまたすごい」と語り、ゆるやかに右へと曲がるターン3の駆け引きが圧巻だったと強調した。
「フェルスタッペンは若干ロスしたので、クロスラインで(ターン3で外から)スキを狙っていきますよね。ここで細かく見るとわかるんですけど、ラッセルはこの後ずっとミラーで見ているんです。(背後にいる)フェルスタッペンの動きを」
「どこにフェルスタッペンがいるのかを確認しながら、スピードを落とさない程度にラインをフェルスタッペンに残している。フェルスタッペンも寄ってきちゃうと当たるので、ずっと(ラッセルはミラーを)見ているんです。当たらないように。まだ行けるな、まだ行けるな、と」
「(もしも両者が)当たるとなると(ラッセルは)スロットルを抜かなきゃならないので。その抜かなくていいギリギリのところ。フェルスタッペンは外側の緑のところ(縁石の外にあるアスファルトのライン)まで走れちゃうので、ここまでだったら行っても大丈夫だなとキッチリ確認しながら、抑えているわけですよ。相手を牽制しながら、できるだけ自分がスロットルを戻す量を少なくして、うまく牽制しながらやっているバトルなんです」
「このコーナー(ターン3)は4Gとか4.5Gとかかかるコーナーで、とんでもないGなんです。スピードも高いですし。なのであんまりよそ見しながら走るところじゃないんですけど。余裕がないはずなのに、ラッセルって何がすごいって見えているんですよ。外側から来るってわかっていて、完全に押し出さないギリギリのところで牽制した。そしてフェルスタッペンを抑えた」
フェルスタッペンは結局、直接のバトルでラッセルを抜くことができなかった。だがピットストップのタイミングがラッセル&セルジオ・ペレス/フェルスタッペンで違ったことから、フェルスタッペンは45/66周目にピット戦略でラッセルの前へと出ることに成功。ルクレールがリタイアしたこともあり、結局フェルスタッペンはトップでフィニッシュチェッカーを受け、今季4勝目をマークした。2位にペレスが続いてレッドブル1-2となり、ラッセルは3位表彰台に上がっている。
昨季はフェルスタッペンが初のドライバーズタイトルを獲得。今季は6戦を終えた段階ながら、フェルスタッペンvsルクレールというタイトル争いの構図となっている。そして今季よりメルセデスのレギュラードライバーとなったラッセルも、ドライバーズランキングで4位に付け、フェルスタッペンとルクレールを追う展開に。今季ここまでドライバーズランキングトップ4に入っているフェルスタッペンとルクレール、ラッセルの3人は全員24歳。いずれも今後のF1界をけん引していくであろうトップドライバーとしての評価を得ている。
少年時代のカートコンペティションから、トラック上で何度となく戦ってきたフェルスタッペンとラッセル。それだけにスペインGPで見せた両者のバトルは中野氏が口にしたように、互いの力とクリーンな姿勢を信頼しているからこそ生まれた、超絶技巧の集約したワンシーンだったと言えるのかもしれない。
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月18日(金) ~19日(土) | 3月20日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月25日(金) ~26日(土) | 3月27日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 4月8日(金) ~4月9日(土) | 4月10日(日) |
第4戦 | エミリア・ロマーニャGP | 4月22日(金) ~ 23日(土) | 4月24日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月6日(木) ~7日(土) | 5月8日(日) |
第6戦 | スペインGP | 5月20日(金) ~21日(土) | 5月22日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月27日(金) ~ 28日(土) | 5月29日(日) |
第8戦 | アゼルバイジャンGP | 6月10日(金) ~11日(土) | 6月12日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月17日(金) ~ 18日(土) | 6月19日(日) |
第10戦 | イギリスGP | 7月1日(金) ~ 2日(土) | 7月3日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 7月8日(金) ~9日(土) | 7月10日(日) |
第12戦 | フランスGP | 7月22日(金) ~23日(土) | 7月24日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月29日(金) ~ 30日(土) | 7月31日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 8月26日(金) ~ 27日(土) | 8月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 9月2日(金) ~3日(土) | 9月4日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月9日(金) ~ 10日(土) | 9月11日(日) |
第17戦 | シンガポールGP | 9月30日(金) ~10月 1日(土) | 10月2日(日) |
第18戦 | 日本GP | 10月7日(金) ~ 8日(土) | 10月9日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月21日(金) ~ 22日(土) | 10月23日(日) |
第20戦 | メキシコGP | 10月28日(金) ~ 29日(土) | 10月30日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月11日(金) ~ 12日(土) | 11月13日(日) |
第22戦 | アブダビGP | 11月18日(金) ~ 19日(土) | 11月20日(日) |