2季目に入った角田が示す、確かな成長とは
第12戦フランスGPにアルファタウリは待望の大幅アップデートを投入しました。前回が開幕直後、序盤の4月でしたから、かなり待ちかねたマシン改良でした。
一方、ライバルたち、中でも予算が比較的潤沢なアルピーヌやマクラーレンは、ほとんど毎戦と言っていいほどの頻度でアップデートしています。
その結果、アルファタウリの相対的な戦闘力はずるずると落ちていき、6月上旬のアゼルバイジャンGPの5位(ピエール・ガスリー)を最後に、完走してもポイントには届かない状態が普通になっていました。
ライバルマシンに比べるとダウンフォース不足が致命的で、モナコのような低速コース、アゼルバイジャンのような直線+直角、低速コーナー主体のコースならなんとかゴマカシが効きましたが、シルバーストンやレッドブルリンクはまったく歯が立ちませんでした。
フランスGPの舞台であるポールリカールも、これまでのアルファタウリマシンだったら、到底期待できないコースのはずでした。
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ところが角田裕毅選手は、その苦手なはずのポール・リカールで、第8戦アゼルバイジャンGP以来となるQ3進出を果たしました。本人が口にした「コースに出て行ってすぐに、まったく別物の車になってるのがわかった」というコメントからも、今回のアップデートでAT03はかなり戦闘力を取り戻したと考えて良さそうです。
対照的にピエール・ガスリーは、初日2回のフリー走行では5、7番手タイムを出しながら、二日目に失速。予選16番手で、Q1落ちを喫しました。そしてレースでもペースが伸びず、12位完走に終わっています。この両者の違いは、どう捉えたらいいのでしょう。
予選後のガスリーは「初日の速さ、快適な挙動が、二日目には再現できなかった」「とにかく遅かったし、低速コーナーで滑りまくった」「でも理由はまったくわからない」とコメントしています。
標高400mの台地の上にあるポール・リカールは強風が吹き荒れることで有名ですが、ガスリーはその影響には言及していません。考えられる理由の一つは、大幅なアップデートで変更箇所が多岐に及んだために、セッティングが煮詰めきれなかったという可能性があります。
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一方の角田選手は、初日は旧仕様でガスリーと比較作業をしたため、新仕様は二日目からのぶっつけ本番でした。にもかかわらず、いきなりの速さを発揮できました。角田選手の方がガスリーより、対応力やセッティング能力に優れているから? もしかしたらそうかもしれませんが、むしろ改良を加えたマシンの挙動が、角田選手のドライビングにより合っていたと考えるべきでしょう。これが二つ目の理由です。
車体規約の大きく変わった今季のマシンは、これまでに比べてアンダーステア傾向が強くなったと言われます。それに加えてアルファタウリはダウンフォース不足のために、いっそう曲がりにくい、加えてコーナリング中の挙動が不安定なマシンだったようです。
それが今回のアップデートで、フロントがしっかり食いついてくれるようになった。角田選手本人が言うところの「F2のように振り回せる」車に近くなったと言えるでしょう。
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決勝レースでもオープニングラップのターン8でエステバン・オコンにぶつけられていなければ、入賞していた可能性は高い。今回は久々に予選、レースを通じて、チームメイトを凌ぐ速さを披露した週末になるはずでした。
今季ここまでの12戦での角田vsガスリーの戦績を見てみると、予選は4勝8敗。レースは入賞回数はともに3回ながら、ポイント数は11-16と、いずれも負けています。
とはいえ、去年は予選が1勝21敗、レースの獲得ポイント32-110だったことを思えば、両者の差が大きく縮まっていることは確かです。
二人はコース外ではかなり仲が良さそうですが、ドライバーとしてのガスリーとなると「倒すべきライバル」と見てしまうようです。カナダの自滅、イギリスの同士討ちは「ピエールを意識し過ぎたから」と『DAZN』のインタビューでも語ってましたしね。
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でも対するガスリーも、角田の成長に穏やかならざる気持ちを抱いているであろうことは、オーストリアの予選での振る舞い(※予選Q2のラストアタック直前、ガスリーが前方にいた角田を追い抜き、予選アタック順が入れ替わった。この影響で角田はタイヤの温度が下がり、ターン1でオーバーラン。ベストタイムを更新することができなかった。角田本人もこのことについて「ガスリーに邪魔された」と言及している)からも明らかです。その辺りの対抗心がいい方向に向かって、相乗効果になってくれるのが理想ですね。
何しろ今季ダブル入賞を達成できていないチームは、アルファタウリとウィリアムズだけですから。純粋なマシン戦闘力でいえば、少なくともアルファロメオと6位争いをしていてもおかしくないだけに、これはあまりにもったいない結果です。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第13戦:ハンガリーGP※日本時間
7月29日(金)21:00~フリー走行1回目
7月30日(土)0:00~フリー走行2回目
7月30日(土)20:00~フリー走行3回目
7月30日(土)23:00~予選
7月31日(日)22:00~決勝
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日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月18日(金) ~19日(土) | 3月20日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月25日(金) ~26日(土) | 3月27日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 4月8日(金) ~4月9日(土) | 4月10日(日) |
第4戦 | エミリア・ロマーニャGP | 4月22日(金) ~ 23日(土) | 4月24日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月6日(木) ~7日(土) | 5月8日(日) |
第6戦 | スペインGP | 5月20日(金) ~21日(土) | 5月22日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月27日(金) ~ 28日(土) | 5月29日(日) |
第8戦 | アゼルバイジャンGP | 6月10日(金) ~11日(土) | 6月12日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月17日(金) ~ 18日(土) | 6月19日(日) |
第10戦 | イギリスGP | 7月1日(金) ~ 2日(土) | 7月3日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 7月8日(金) ~9日(土) | 7月10日(日) |
第12戦 | フランスGP | 7月22日(金) ~23日(土) | 7月24日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月29日(金) ~ 30日(土) | 7月31日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 8月26日(金) ~ 27日(土) | 8月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 9月2日(金) ~3日(土) | 9月4日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月9日(金) ~ 10日(土) | 9月11日(日) |
第17戦 | シンガポールGP | 9月30日(金) ~10月 1日(土) | 10月2日(日) |
第18戦 | 日本GP | 10月7日(金) ~ 8日(土) | 10月9日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月21日(金) ~ 22日(土) | 10月23日(日) |
第20戦 | メキシコGP | 10月28日(金) ~ 29日(土) | 10月30日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月11日(金) ~ 12日(土) | 11月13日(日) |
第22戦 | アブダビGP | 11月18日(金) ~ 19日(土) | 11月20日(日) |