ベルギーGPはフェルスタッペン圧勝…一方でフェラーリの粗が際立つ結果に
後半戦を展望した前回のコラムで僕は「フェラーリの度重なるミスや信頼性の低さなどが、一気に改善されるとは考えにくい」として、タイトル争いはこのままマックス・フェルスタッペンが逃げ切るだろうと予想しました。
とはいえ後半戦初戦のベルギーGPでは、少なくともレッドブルとフェラーリが接戦を繰り広げると思っていました。ところがマックス・フェルスタッペンがまさかの圧勝で、予想は大外れとなった形です。
さらにいえば「メルセデスがこの2強に絡んで、3チーム6人がポイントを食い合う」という予測もしていましたが、これまたスパ・フランコルシャンではそんな状況にならず、メルセデス勢は表彰台にかすりもしませんでした。
同じレッドブルマシンを駆るセルジオ・ペレスもフェルスタッペンに全くかなわない状況で、このまま行けばフェルスタッペンは「辛くも逃げ切る」どころか、早ければ10月の日本GPで連覇を確定させてしまうかもしれません。
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なぜベルギーでのフェルスタッペンは、一人だけこんなにも強かったのか。
最大の要因は、RB18の空力効率の良さでしょう。スパ・フランコルシャンは高速区間のセクター1、3で最高速を稼ぐため、基本的にはローダウンフォースのセッティングを施します。
しかし、そうすると曲がりくねった中速コーナーの続くセクター2で、挙動を乱してタイムロスしがちです。ところがレッドブルはウィングに頼らずとも、フロア下で十分なダウンフォースを発生させることで、オールマイティな速いマシンに仕上がったということです。
一方でチームメイトのペレスとの比較で言うと、フェルスタッペンは初日フリー走行の段階から、セクター2の速さに照準を定めてセッティングを重ねていたように見えます。その結果予選Q3では、セクター1、3でもコンマ1秒速いのに加え、セクター2ではコンマ4秒以上という大差を築いて、予選最速タイムをマークしたのでした(※フェルスタッペンはパワーユニット交換に伴うグリッド降格が確定していたため、ポールポジションは予選2番手タイムのカルロス・サインツ)。
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今回のレッドブルの圧倒的速さに関しては、主にフェラーリ陣営が「予定より前倒しで軽量化を施している」という疑惑を抱いているようです。もしそうだとしたらペレスも速くないとおかしいわけですが、軽量化がフェルスタッペンのマシンだけだった可能性もあります。
今回のフェルスタッペンは14番グリッドからライバルたちをコース上で次々に抜きまくって、レースの3分の1に満たない12周目に早くも首位に立っています。走行ラインを外してのオーバーテイクを繰り返したにもかかわらず、タイヤへのダメージはほとんどなく、15周目のピットインまでペースは落ちませんでした。
これも確かに、車体の軽さが影響していた可能性があります。高温によるタイヤの熱だれで、いっそうパフォーマンスの落ちたフェラーリにしてみれば、いろいろ文句を言いたくなるところでしょう。
そんな車体軽量化の真偽は別として、今回のスパのコースにレッドブルRB18の車体特性とフェルスタッペンのドライビングがドンピシャリだったことは確かです。一方で車体性能に限ればレッドブルと互角かそれ以上だったはずのフェラーリは、まったく太刀打ちできませんでした。それどころかメルセデスにも、ヒタヒタと差を詰められている。レッドブルを追い詰めるはずが、コンストラクターズ選手権2位の座も危うくなっている状況です。
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さらにフェラーリは今回も、いろいろやらかしてくれました。まず予選Q3では、グリッド降格が決まっているルクレールに貴重な新品ソフトを履かせてアタックに出しました。
「このタイヤは何なんだ?」と問いただすルクレールに「ごめん。ミステイクだ」「ひとまずこのラップに集中しよう」とチームは返しています。ですが予選終了後、フェラーリのレースディレクターであるローラン・メキエズは「問題なかった」との見解を示しました。
そして決勝レース終盤では「ここでリスクを冒したくない」というルクレールの訴えを無視してピットインさせ、最速タイムも出せない上に5位の座も失ってしまいました(※ピットレーンの速度違反により5秒のタイムペナルティが科され6位降格)。
この二つの出来事と、その後のマッティア・ビノット代表のコメントからは、ドライバーへのリスペクトの欠如に加え「フェラーリが誤りを犯すはずはない」という意地のようなものさえ感じられます。
今のフェラーリの惨状は、ジャン・トッド/ロス・ブラウン/ミハエル・シューマッハ体制以前のどん底だった時代を思い出させます。才能あるドライバーが結果を出せない現状を正すには、かなり根本的な組織改革が必要かもしれません。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第15戦:オランダGP※日本時間
9月2日(金)19:30~フリー走行1回目
9月2日(金)23:00~フリー走行2回目
9月3日(土)19:00~フリー走行3回目
9月3日(土)22:00~予選
9月4日(日)22:00~決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月18日(金) ~19日(土) | 3月20日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月25日(金) ~26日(土) | 3月27日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 4月8日(金) ~4月9日(土) | 4月10日(日) |
第4戦 | エミリア・ロマーニャGP | 4月22日(金) ~ 23日(土) | 4月24日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月6日(木) ~7日(土) | 5月8日(日) |
第6戦 | スペインGP | 5月20日(金) ~21日(土) | 5月22日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月27日(金) ~ 28日(土) | 5月29日(日) |
第8戦 | アゼルバイジャンGP | 6月10日(金) ~11日(土) | 6月12日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月17日(金) ~ 18日(土) | 6月19日(日) |
第10戦 | イギリスGP | 7月1日(金) ~ 2日(土) | 7月3日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 7月8日(金) ~9日(土) | 7月10日(日) |
第12戦 | フランスGP | 7月22日(金) ~23日(土) | 7月24日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月29日(金) ~ 30日(土) | 7月31日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 8月26日(金) ~ 27日(土) | 8月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 9月2日(金) ~3日(土) | 9月4日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月9日(金) ~ 10日(土) | 9月11日(日) |
第17戦 | シンガポールGP | 9月30日(金) ~10月 1日(土) | 10月2日(日) |
第18戦 | 日本GP | 10月7日(金) ~ 8日(土) | 10月9日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月21日(金) ~ 22日(土) | 10月23日(日) |
第20戦 | メキシコGP | 10月28日(金) ~ 29日(土) | 10月30日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月11日(金) ~ 12日(土) | 11月13日(日) |
第22戦 | アブダビGP | 11月18日(金) ~ 19日(土) | 11月20日(日) |