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【コラム】第22回「フェルスタッペンは、ついに”本性を見せた”のか」|F1解説者ムッシュ柴田のピットイン

【コラム】第22回「フェルスタッペンは、ついに”本性を見せた”のか」|F1解説者ムッシュ柴田のピットインDAZN
【F1 コラム】解説者も務めるモータースポーツジャーナリスト、柴田久仁夫がF1の今に迫る。
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サンパウロGPでは各ドライバーの思惑が露骨に交錯

第21戦サンパウロGPはメルセデスが今季初優勝を飾り、チームとしても2年ぶりのワン・ツーフィニッシュという結末に。実際のレース展開も凄かったですが、ドライバーの無線のやりとりも実に聴き応えがありました。

まずは、キャリア初優勝を果たしたジョージ・ラッセルの無線です。ルイス・ハミルトンがレース序盤、マックス・フェルスタッペンに接触されて一時は8番手まで後退しました。ですがそこから次々に先行車をかわし、45周目にはセルジオ・ペレスも抜き去って2番手に復帰しました。

さらにその後のセーフティーカー導入で、10秒あった両者の差は一気に1秒以内まで縮まります。ここで先頭のラッセルは、担当エンジニアのリカルド・ムスコーニにこう尋ねます。

ラッセル「どうするの? 1-2をキープするの? それともレースするの?」

ムスコーニ「レースする。ただしお互いのリスペクトを、忘れずにね」

2022-11-17 Russell Hamilton Mercedes F1 Formula 1Getty Images

基本的にメルセデスは露骨なチームオーダーは発しないし、いくらハミルトンが7度の世界チャンピオンとはいえ、ラッセルに「順位を譲れ」と指示するはずがないのはラッセル自身もわかっています。一方で自分の首位がこのまま安泰とも思っていない。それで一応、こう訊いたのでしょう。ムスコーニの返答は、ラッセルにとっても想定内だったはず。

そしてレース再開直後、ほぼ同じライフのソフトタイヤでヨーイドンした二人でしたが、ラッセルは終始ハミルトンを凌ぐペースでミスなく走り切り、1.5秒差をつけてチェッカーを受けたのでした。文句なしの、まさしく実力で勝ち取ったキャリア初勝利と言っていいと思います。

2022-11-17 Leclerc Sainz Ferrari F1 Formula 1Getty Images

対照的にモヤモヤしまくりの無線だったのが、フェラーリとレッドブルでした。

シャルル・ルクレールからチームに入った無線は、セルジオ・ペレスを抜いて4番手に上がった終盤64周を過ぎてからでした。

ルクレール「順位がこのままだったら、チャンピオンシップのことを考えてくれ!」

パドロス「了解した」

この時点の3番手はカルロス・サインツ。ルクレールはドライバーズ選手権2位の座をペレスと激しく争っていますが、前回メキシコで3位に後退したばかりでした。ペレスがズルズルと順位を下げているこのレースは、2位に返り咲く絶好のチャンス。「順位を譲ってくれ」という、婉曲なお願いだったわけです。

とはいえサインツも、3位表彰台がかかっています。いったんは「了解した」と答えた担当エンジニアのグザビエ・パドロスでしたが、最終的に「(順位交代は)リスクが大きすぎる」と拒否します。

その返答に「すごいジョークだね」と返すルクレール。彼にしてみれば、不可解なレース戦略や判断の遅れで、今季さんざん迷惑を被ってきた。これぐらいしてくれても、という思いだったでしょう。

結果的にルクレール4位、ペレス7位で、ルクレールは同ポイントながら2位(※同一ポイントの場合は優勝回数の多いほうが上)を奪い返した形に。しかし彼の不満は、明らかに収まってませんでした。

パドロス「チャールズ、4位だ。素晴らしい仕事だ」

ルクレール「なんだって?」

パドロス「素晴らしい仕事だ、と言ったんだ」

ルクレール「素晴らしい?……確かにね」

2022-11-17 Verstappen Perez Red Bull F1 Formula 1Getty Images

そしてサンパウロGPにおける最大の驚きが、フェルスタッペンの無線でした。

レッドブルは初のドライバーズランキング1-2が懸かっていることもあり、7番手まで落ちたペレスに1ポイントでも多く取らせたい。そのためフェルスタッペンのレースエンジニアを務めるジャンピエロ・ランビアーゼは、5番手のアロンソを抜きあぐねているフェルスタッペンにこう指示します。いや、指示というより、懇願の口調でした。

ランビアーゼ「マックス、チェコ(ペレスの愛称)を先に行かせてくれ。マックス、お願いだから」

フェルスタッペン「(無言)」

ランビアーゼ「マックス、どうしたんだ」

フェルスタッペン「前にも言っただろう。僕にそういうことは、二度と頼まないでくれ。わかったか?前に理由は言ったし、それが正しいと僕は思っている」

すでに年間タイトルを確定させているフェルスタッペンにしてみれば、6位が7位になっても大した問題ではないはずなのに、まさかの絶対的な拒否でした。結局そのままの順位で、チェッカーが振られました。

バード「マックスは譲ってくれなかった」

ペレス「そうか、それは本当にありがとう」

ホーナー代表「チェコ、本当に申し訳ない」

精一杯の皮肉で返すペレス。そして最後に、こう付け加えました。

ペレス「彼の本性が、よく見えたよ」

正確には、ペレスは「It shows who he really is.(彼が本当はどんな人間なのか、ということだね)」と言っています。かなり強烈なひと言です。

レース後のインタビューでも「彼が二つのタイトルを得られたことは、僕に感謝してくれないとね」と、吐き捨てるように語っていました。あまり感情を露わにしないペレスにしては、非常に珍しいことです。

2022-11-17 Verstappen Perez Red Bull F1 Formula 1Getty Images

一方フェルスタッペンは「前に言った」という"譲らない理由”を、インタビューでも明らかにしませんでした。これですっかり評価が下がってしまいましたが、とはいえレーシングドライバー、中でもF1の世界チャンピオンになろうという人たちは、エゴの塊のような存在であることは、心に留めておくべきでしょう。

過去にはアイルトン・セナ、最近では4連覇当時のセバスチャン・ベッテルも、チームメイトに酷い仕打ちをしています。円満な人柄のジェンソン・バトンでさえ、間近に接していたベテラン広報の女性が「ジェンソンのことは大好きだけど、冷酷さがなくてチャンピオンになれるはずがないでしょう」と言っていたことが、強く印象に残っています。

その辺りは言うまでもなくペレスも十分承知しているでしょうし、初タイトル獲得の意思を隠さない来季に向けて、更なるモチベーションになったんじゃないでしょうか。

文・柴田久仁夫(しばた・くにお)

1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。

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【レース情報】
F1  第22戦:アブダビGP
11月18日(金)19:00~フリー走行1回目
11月18日(金)22:00~フリー走行2回目
11月19日(土)19:30~フリー走行3回目
11月19日(土)23:00~予選
11月20日(日)22:00~決勝

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チーム・ドライバー

日程・番組表

 レースフリー走行・予選決勝
第1戦バーレーンGP 3月18日(金) ~19日(土)3月20日(日)
第2戦サウジアラビアGP 3月25日(金) ~26日(土)3月27日(日)
第3戦オーストラリアGP 4月8日(金) ~4月9日(土)4月10日(日)
第4戦エミリア・ロマーニャGP 4月22日(金) ~ 23日(土)4月24日(日)
第5戦マイアミGP 5月6日(木) ~7日(土)5月8日(日)
第6戦スペインGP 5月20日(金) ~21日(土)5月22日(日)
第7戦モナコGP 5月27日(金) ~ 28日(土)5月29日(日)
第8戦アゼルバイジャンGP 6月10日(金) ~11日(土)6月12日(日)
第9戦カナダGP 6月17日(金) ~ 18日(土)6月19日(日)
第10戦イギリスGP 7月1日(金) ~ 2日(土)7月3日(日)
第11戦オーストリアGP 7月8日(金) ~9日(土)7月10日(日)
第12戦フランスGP 7月22日(金) ~23日(土)7月24日(日)
第13戦ハンガリーGP 7月29日(金) ~ 30日(土)7月31日(日)
第14戦ベルギーGP 8月26日(金) ~ 27日(土)8月28日(日)
第15戦オランダGP 9月2日(金) ~3日(土)9月4日(日)
第16戦イタリアGP 9月9日(金) ~ 10日(土)9月11日(日)
第17戦シンガポールGP 9月30日(金) ~10月 1日(土)10月2日(日)
第18戦日本GP 10月7日(金) ~ 8日(土)10月9日(日)
第19戦アメリカGP 10月21日(金) ~ 22日(土)10月23日(日)
第20戦メキシコGP 10月28日(金) ~ 29日(土)10月30日(日)
第21戦サンパウロGP 11月11日(金) ~ 12日(土)11月13日(日)
第22戦アブダビGP 11月18日(金) ~ 19日(土)11月20日(日)