アルファタウリのトスト代表が今季限りで退任
第3戦オーストラリアGPに続いて、第4戦アゼルバイジャンGPでは角田裕毅選手が2戦連続の10位入賞を果たしました。
マシンの戦闘力不足に苦しむ今季のアルファタウリを、本当に力づける健闘だったと思います。そんな角田くんの活躍の陰で、ちょっと気になるニュースが報じられました。
アゼルバイジャンGPが始まる直前、フランツ・トスト代表の今季限り「勇退」が発表されたのです。
67歳という年齢、そして前身のトロロッソが2006年に創設されて以来、17年もチーム代表を務めてきたことから、退任は間近いのではという噂は確かに流れていました。
とはいえ、まだ2023年シーズンは始まったばかり。このタイミングで発表されたことに唐突感は否めません。
なぜこの時期に退任発表なのか
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フェラーリでスポーティングディレクターを務めるローラン・メキエスが後を継ぐとのことですが、フェラーリのフレデリック・バスール代表は「具体的なことは何も決まってない」と表明し、肝心のメキエスもノーコメントでした。
これを受けてトスト代表はバクーで急遽会見を開き「イタリアのスポーツ紙が報道しそうになったので、発表を早めた」と、釈明しました。
さらに「(レッドブル創業者)ディートリヒ・マテシッツがまだ元気だった2年前から話し合って、最終的に私が決断した」と、自らの意思による退任を強調しています。
しかしトストさんは「レースに人生を賭けてきたから、家庭を持つことなんて考えもしなかった」と、かつてモンツァで一緒にジョギングした僕に語ったほどのレース大好きな仕事人間です。
一方で去年の暮れ、マテシッツ亡き後の新しいマネージメントが、2022年の選手権9位という成績不振を受けて、トスト代表に辞任を迫ったのは事実のようです。それをトスト代表はなんとか、今季いっぱい指揮を取るという妥協案を呑ませた。というのが真相なのではないでしょうか。
ただ重要なのは勇退か更迭かではなく、トストさんがラストシーズンを最高の形で締めくくることでしょう。セバスチャン・ベッテルやマックス・フェルスタッペンを育て上げてきた彼にしても、最後の弟子ともいうべき角田くんのいっそうの活躍を期待しているはずです。
新代表となる後任メキエスとは
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ではトスト代表の後任となるメキエスとは、どんな人物なのでしょう。
フランス生まれの46歳。パリの技術工科学校と英国の大学で自動車工学を学んだ技術者で、2003年からミナルディでマーク・ウェバーやジャスティン・ウィルソンのレースエンジニアを務めました。
そして2006年、ミナルディがトロロッソに生まれ変わったことで、トスト代表が新たなボスになったわけです。
メキエスで思い出すのは、佐藤琢磨をめぐる一件です。今から15年前の2008年、スーパーアグリの撤退でF1のシートを失った佐藤選手はトロロッソと交渉に入り、9月から12月にかけて計3回のヘレステストに参加しました。実力を測るオーディションというべきもので、担当したのが当時チーフエンジニアだったメキエスでした。
佐藤選手は11月のテストで連日トップタイムを叩き出し、確かな速さを見せました。僕たち日本の報道陣も「これでトロロッソ入り確定か」と大いに盛り上がったものでした。しかし結果は落選。納得できない僕はメキエスに「なぜだ?」と詰め寄りました。
するとメキエスは「タクマは本当に速い。それは認める」と答えたものの、ではなぜ採らないのかはっきりした説明は最後までありませんでした。
かつては佐藤琢磨をテストで試すも採用には至らず
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当時のトロロッソは今以上にレッドブルのジュニアチームの性格が強く、レッドブル育成プログラムで選別された若手ドライバーがF1キャリアを始める出発点のチームという位置付けでした。
トロロッソ以前のミナルディ時代には、すでにベテランだった片山右京や中野信治が在籍していたこともあって、僕たち日本メディアは佐藤選手にも十分チャンスはあると思い込んでいました。
しかし冷静に考えれば、30歳を過ぎ、レッドブルと縁もゆかりもない佐藤選手がシートを得る可能性は極めて少なかったということです。
メキエスはすでに結果が決まっていたテストを繰り返し、そのたびに日本メディアとチーム上層部のいわば板挟みになっていたわけで「その辺り、察してよ」と、思っていたことでしょう。そんな状況でありながら僕らに対し、できるだけ誠実に接してくれていました。
エンジニアとしても優秀だったメキエスが、来季以降アルファタウリでどんなリーダーぶりを発揮するのか。そして角田くんとどんな関係を築いていくのか。ぜひ注目したいと思います。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第5戦:マイアミGP※日本時間
5月6日(土)3:00~フリー走行1回目
5月6日(土)6:30~フリー走行2回目
5月7日(日)1:30~フリー走行3回目
5月7日(日)5:00~予選
5月8日(月)4:30~決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
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第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |