F1伝統のモナコGP
北イタリアが甚大な豪雨被害に見舞われ、エミリア・ロマーニャGPがまさかのキャンセルとなってしまいました。3連戦で幕を開けるはずだったヨーロッパラウンドが、いきなり出鼻を挫かれた格好です。でもすぐさま“F1の華”モナコGPが控えています。
なぜ数あるグランプリの中で、モナコGPが“F1の華”と称されるのでしょう。歴史的な古さでいえば、モナコの第1回が1929年(昭和4年)に対して、1921年(大正10年)のイタリアGPの方が古い。
ただしイタリアGPの舞台があちこちのサーキットを点々としたのに対して、モナコ公国の公道を使用するモナコGPは、当然ですがずっと同じ場所で開催されています。さらに驚異的なのは第1回から現在まで、コースレイアウトも全長も基本的に同じということです。
考えてみるとこれは凄いことで、狭く曲がりくねったエスケープゾーンのほとんどない約100年前とほぼ同じコースを、今は700馬力のモンスターマシンが駆け抜けていくわけです。
しかも舞台は王宮やカジノなど、石造りの歴史的建築群が建ち並ぶモナコ公国。マリーナには大型クルーザーが停泊し、世界中の富豪たちが観戦する。現在のF1には計7つの市街地サーキットがありますが、モナコの他にはない特別さが、それだけでも理解していただけるかと思います。
約100年に渡る歴史を持つ
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ちなみに1929年第1回大会での勝者ウィリアム・グローバー=ウィリアムズ(1903~1945)の最速タイムは、1周2分15秒でした。そして去年2022年のモナコGP決勝レースで最速だったランド・ノリスは、1分14秒693。93年の間に、ほぼ60秒速くなったことになります。
ブレーキ、サスペンション、空力、エンジン、そして何よりもタイヤの進化が、これだけのタイム短縮を可能にしたのでしょう。
W・ウィリアムズの駆った2300ccスーパーチャージャー搭載のブガッティT35Bが、どんなエンジン音を立てていたのか。それは想像するしかありませんが、たとえ今より60秒遅かったとしても、さぞ迫力ある走りだったはずです。
モナコGP現地取材でF1に魅了される
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僕の初めてのモナコ取材は、1987年でした。中嶋悟という日本人が初めてF1初参戦するというニュースを聞き、当時はTVディレクターをしていましたが休暇をもらって出かけていきました。自動車レース自体が人生初体験の僕には、モナコGPは驚きの連続でした。
約2時間のレースを走り終えた中嶋選手は、約4000回のシフトチェンジで右手の皮がべろりと剥け、しばらく口もきけないほどの疲労困憊状態でした。「F1は格闘技だ」そう思ったものです。
そのチームメイト、当時27歳の若者だったアイルトン・セナが、その年の勝者でした。ウィリアムズやマクラーレンに比べて圧倒的に戦闘力の劣るロータス・ホンダを駆っての、モナコ初勝利でした。
これですっかりF1の魅力にはまってしまった僕はF1取材の副業を本格的に始め、モナコにも通い続けました。首位独走中にポルティエでクラッシュし、そのまま自宅に帰ってしまった88年、ナイジェル・マンセルと歴史的なデッドヒートを繰り広げた92年。
そして1994年のモナコGPは、非業の死を遂げたイモラの2週間後の開催でした。マルボロ主催の木曜日のパーティでは、マクラーレン・ホンダでモナコを疾走する生前の車載映像に涙しました。今も破られていないモナコ最多記録の6勝全てを現場で目撃したことも含め、僕のモナコはセナと分かちがたく結びついています。
今回のモナコはどのような結末となるのか
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その後もモナコでは、数えきれないほどの名勝負が繰り広げられてきました。悪天候やクラッシュ、マシントラブル、あるいはチームの戦略ミスなどによる波乱の展開も、確かにモナコの見どころのひとつでしょう。一方でほとんど抜きどころがないモナコでの決勝レースは、ポールシッターがそのまま優勝することが多いのも事実です。
でもそんな一見単調なレースでも、なぜかモナコだと1周1周を凝視してしまいます。セナの思い出も含め、わずか3km余りのコースに刻み込まれた約100年のレースの痕跡が、そうさせるのかもしれませんね。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第7戦:モナコGP※日本時間
5月26日(金)20:30~フリー走行1回目
5月27日(土)0:00~フリー走行2回目
5月27日(土)19:30~フリー走行3回目
5月27日(土)23:00~予選
5月28日(日)22:00~決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
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第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |