アルピーヌ首脳が次々に離脱する事態に
7月末に発表されたアルピーヌ幹部の突然の解任劇には、かなり驚かされました。
オットマー・サフナウア代表が成績不振を理由に更迭されるのではという噂は、確かに少し前から出ていました。にしても同代表が就任したのは、わずか1年半前。評価の見極めを急ぎすぎた印象です。ベルギーGP初日の、これからフリー走行が始まろうというタイミングでの退任発表にも、唐突感が否めません。
さらにびっくりしたのが、ベテランエンジニアのアラン・パーメインの退任でした。パーメインは1989年のベネトンF1入社以来、ルノー、ロータス、再びルノーワークス、そして現在のアルピーヌへとチームオーナーが変わる中、34年間在籍し続けた生え抜きの人材です。
約10年前にレース現場の要であるスポーティングディレクターに就任してからは、その手腕はライバルチームからも高く評価されていました。
アルピーヌの公式リリースでは「相互の同意のもと、今回の決定に至った」とありますが、しかしこういう場合、普通ならあるはずの二人の退任コメントがないことからも、今回の人事は「解任」という表現が適切でしょう。
アルピーヌ内部にあるフレンチエリートの事情とは?
Getty Images
ではアルピーヌはなぜ、このような人事を断行したのか。その根底には「フランス人エリートたちの驕り」があると、僕は思います。
ご存知の方も多いと思いますが、フランスには大学とはまったく別系統の「グランゼコール」(Grandes Ecoles)と呼ばれるエリート養成機関群があります。
フランスを代表する企業の重役たち、もちろんルノー幹部の多くもその出身者で、前CEOだったあのカルロス・ゴーン、ルノーF1のチーム代表だったシリル・アビテブール、そして先月までアルピーヌCEOだったローラン・ロッシもそうでした。
僕の知るグランゼコール卒業生たちは確かにとてつもなく優秀で、それゆえに強烈なエリート意識を隠さず(もちろん謙虚な人もいましたが)、何度も辟易させられたものです。
スペシャルアドバイザーとしてルノーF1に迎えられたものの、ロッシとの意見の相違から昨年離脱したアラン・プロストは「ロッシはF1のすべてを理解していると思い込み“勝つことなど簡単だ”と何度も言っていた」と、強烈に批判しています。ロッシへの個人的な悪感情を差し引いても、プロストのコメントはフレンチエリートの典型的な一面を語っている印象です。
時間を要するも完全復活とはいかず
Getty Images
その点、アビテブールの方が、まだF1で頂点に立つことの難しさをわかっていました。しかし2016年のルノーF1ワークス復帰後、チーム代表に就任したフレデリック・バスールを、1年も経たず辞任に追い込んでいます。
ちなみにバスールもグランゼコール出身者ですが、卒業後すぐにレーシングチームを立ち上げ、多くのカテゴリーを制覇してきた生粋のレース屋であることが、ロッシやアビテブールとの決定的な違いでしょう。
その後はアビテブールがチームの指揮を執りますが、成績は低迷。初表彰台は、復帰から5シーズン目の2020年でした。アビテブールは不振の責任を負う形で、アルピーヌにブランド変更した2021年、ロッシに交代します。
野心満々のロッシは「100グランプリプラン」つまり5年以内にタイトルを獲得するという計画をぶち上げますが、今季になっても5位マクラーレンにほぼダブルスコアの差をつけられ選手権6位に低迷。
ついにルノーグループ総帥のルカ・デメオが乗り出し、7月にロッシを更迭してしまいます。今回のサフナウア、パーメインの解任は、その流れの一環と捉えていいと思います。
現アルピーヌが先々、大転換となるシナリオも?
Getty Images
振り返ればルノーF1の黄金時代というべき2000年代の彼らは、フラビオ・ブリアトーレという“怪物”にチームの舵取りを任せるだけの懐の深さがあり、それが2年連続(2005年、2006年)の両タイトル獲得に繋がりました(最後はクラッシュゲートという壮絶な裏切りに遭うわけですが)。
しかし今のルノー・アルピーヌは自分たちの指導力に絶対的な信頼を置きすぎたことで、空白の8シーズンを浪費している状況です。
最新の報道では、2026年からのF1参入を申請中のアンドレッティ・キャデラックがアルピーヌ買収を計画し、株の買い占めを進めているとか。
トヨタやフィアット、VW(フォルクスワーゲン)グループでのし上がり、超現実主義者と評されるイタリア人のデメオ率いる今のルノーなら、そんな方針大転換もありうるかもしれません。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
************
【レース情報】
F1 第14戦:オランダGP※日本時間
8月25日(金)19:30~フリー走行1回目
8月25日(金)23:00~フリー走行2回目
8月26日(土)18:30~フリー走行3回目
8月26日(土)22:00~予選
8月27日(日)22:00~決勝
************
関連記事
直近のDAZN番組表(F1)DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。
● 【番組表】直近の注目コンテンツは?
● 【お得】DAZNの料金・割引プランは?
チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |