F1昇格の夢に大きく近付いた岩佐歩夢選手
「今、最もF1に近い日本人」を挙げると、言うまでもなくFIA F2参戦中の岩佐歩夢選手です。
11月の最終戦1ラウンド2レースを残して、現在選手権3位。このまま行けばF1昇格に必要なスーパーライセンスの取得は、まず間違いないところです。
では来季すんなりとF1デビューできるのか。今回はそのあたりの動向を、見ていこうと思います。
前戦、モンツァでの岩佐選手は、いわば崖っぷちの状況でした。夏休み直前のスパ・フランコルシャンのフィーチャーレースからオランダ・ザンドフォールトの2レース、そしてモンツァのスプリントまで、4レース連続ノーポイント。5戦目となるモンツァでのフィーチャーレースも15番グリッドからのスタートで、ここで入賞を逃すようだと選手権3位からの陥落も十分にあり得ました。
ミディアムタイヤでのスタートは一種の賭けでしたが、上位勢の早めのピットイン後に前2台を一気に抜いて一時はトップに立ちます。しかしピットインでタイヤ交換作業が遅れ、10番手まで後退。履き替えたスーパーソフトの劣化は予想以上に早く、このままでは入賞も難しい状況でした。
それでも上位勢の接触事故などで徐々に順位を上げ、終盤には3番手に浮上。そして4回目のセーフティカー明け直後、タイヤの利点を活かして2番手テオ・プルシェールを抜き去り、そのままチェッカー。まさに起死回生の2位表彰台獲得で、選手権3位の座を守ったのでした。
F2で示している岩佐歩夢選手の底力とは
Getty Images
岩佐選手は2021年のFIA F3時代から見て来て、折に触れて話も聞いてきました。僕たちメディアへの話しぶりは、ひとことで言えば理詰めで、非常に明快。冷静にレース展開を振り返ってくれます。
コース上の岩佐選手も、基本的にその印象から大きく変わることはありません。マシン戦闘力が劣っていても、トラブルに見舞われても、落ち着いてそれなりの結果をしっかり出す。
所属先DAMSはフランスのチームであり、スタッフもフランス人が多い。今季、モナコ出身のアーサー・ルクレールが加入して、チーム内のやり取りがほとんどフランス語になった時も、チームとしてあるべき環境は何なのかを走りで示してきました。
今季中盤以降はそれに加えて、これまであまり見られなかった思い切りの良さも出てきました。
今回のモンツァでのレース序盤、ジェハン・ダルバラとジャック・ドゥーハンがトップ争いをする状況下、背後からタイミングを見極めての2台抜き。そして終盤、スーパーソフトがほんの一瞬グリップを回復したチャンスを逃さず、テオ・プルシェールから2位を奪い取ったオーバーテイクは、その典型でした。
ライセンス条件を満たしても厳しい岩佐選手の現状
Red Bull Content Pool
岩佐選手は今季を5位以上で終えれば、F1昇格に必要なスーパーライセンスポイントの40点を満たします。
選手権2位フレデリック・ヴェスティとの差は14点まで縮まっており、最終戦でヴェスティを下して2位に上がれば、注目度はさらに上がるでしょう。
ただ、ライセンス取得条件を満たしたとしても、残念ながら現状ではすぐにF1デビューできる可能性はかなり低いと言わざるをえません。
岩佐選手の場合、F1への昇格はアルファタウリ一択になるわけですが、二つしかないシートを角田裕毅、ダニエル・リカルド、リアム・ローソンが争っている状況で、岩佐選手がそこに入り込むのは正直非常に難しい。
今季のローソンのように(そしてかつてのピエール・ガスリーのように)レッドブルレーシングのリザーブドライバーを務めつつ、スーパーフォーミュラに参戦するのが最も現実的な選択肢でしょう。
レッドブルジュニアのままよりも、明るいかもしれない進路とは?
Getty Images
ただ、一つ逆転技を挙げるとすると、アストンマーティンからのF1デビューということもあるかもしれません。
ホンダは2026年からはレッドブルに代わってアストンマーティンと組むわけですが「若手育成システムについても、将来的にはレッドブルに代わるものになる」と、HRC関係者が言明しています。
現在は2022年のF2王者フェリペ・ドルゴヴィッチがリザーブドライバーですが、そこに岩佐選手が加わることは契約的にそれほど難しいことではないはずです。
不振をかこつランス・ストロールが、今季いっぱいで現役引退するという噂も出ています。少なくともレッドブルジュニアでいるよりは、将来への展望は開けると思うのですが……。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第16戦:シンガポールGP※日本時間
9月15日(金)18:30~フリー走行1回目
9月15日(金)22:00~フリー走行2回目
9月16日(土)18:30~フリー走行3回目
9月16日(土)22:00~予選
9月17日(日)21:00~決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |