2024年マクラーレンのリザーブとして平川亮選手が契約
今年の日本GPでは、舞台裏のパドックでなかなか興味深い光景が展開されました。トヨタの豊田章男会長が元F1ドライバーの中嶋一貴、小林可夢偉選手らとともに、姿を見せたのです。
さらに同じタイミングで渡辺康治HRC（ホンダ・レーシング）社長も鈴鹿サーキットを訪れており、2人が並んでガッツポーズ。図らずも両社がF1に参戦していた2008年以来となる、トヨタとホンダのF1現場での2ショットが実現したのでした。
この日、トヨタドライバーの平川亮選手が、マクラーレンのリザーブドライバーに選ばれたことが正式に発表されました。
Getty Images
豊田会長の訪問はそれに伴ってのものですが、世界的自動車メーカーの首脳がそのためにわざわざ鈴鹿までやって来たというのは、かなり異例のことです。なので集まった報道陣は一時「トヨタがついにF1に復帰する？」と、色めき立ったりしたのでした。
そんな騒ぎになることを、豊田会長は十分見越していたのでしょう。こちらからの質問に余裕の笑顔で「今日はトヨタ会長ではなく（レースを愛する）モリゾウとして来ました」と前置きしたのち「あくまでトヨタドライバーをサポートし、ひいてはモータースポーツ全体を発展させたいという思いからやって来ただけです」とコメント。トヨタ復帰の可能性については、すっかり煙に巻かれた形になりました。
トヨタのドライバーがなぜマクラーレンF1と契約することに？
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それにしてもトヨタがF1に参戦していたのは、もう十数年も前（2002年～2009年）のことです。そのトヨタに所属し、フォーミュラよりもむしろ耐久レースで実績を残してきた29歳のベテランドライバーがマクラーレンF1と契約するというニュースには、かなり驚かされました。いろいろ裏がありそうだと思う方が普通でしょう。
しかしその後、関係者への取材を重ねていくと、そんな先入観を覆す証言も出て来たのでした。
まずきっかけですが、平川選手自身はずっとF1への夢を捨てずにいました。そこにマクラーレンがドライバー養成プログラムを拡充する動きが起き、両者を取り持つ仲介者も見つかって、交渉が始まったというのが大まかな流れです。
もちろんマクラーレンにしてみれば、業界の巨人であるトヨタとの提携に魅力を感じないわけはありません。実際、アンドレア・ステラ代表は「トヨタとの今後の交流にも興味がある」と期待を隠していませんでした。
平川亮、マクラーレンのシミュレーターでは好タイムを連発
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とはいえF1で日々熾烈な戦いを続けるマクラーレンが、実力のないドライバーをトヨタとの提携欲しさだけでリザーブに採用するはずもありません。トヨタドライバーということで他よりは門戸は広かったかもしれませんし、ル・マン24時間レース優勝（2022年）という実績もありますが、そこから先は純粋に実力の世界です。
で、平川選手はマクラーレンのファクトリーでシミュレーターのテストに臨みました。「初めてのF1マシンの運転で、最初はかなり苦労していた」と、立ち会った関係者の一人が教えてくれました。
「でもすぐに複雑な操作や、F1マシン独特の挙動にも慣れていってね。最後にはレギュラードライバーと遜色のない速さを出していたよ」
“そこまで行ったのは翌日とか？”と尋ねると「いや、朝から始めて、昼前にはそのタイムを出していた」とのこと。これにはマクラーレンのスタッフも驚いていたようです。
現在29歳平川亮がマクラーレンと契約…この事実が示すこととは
Masaki CHIBA
その速さと適応能力が決め手となって、マクラーレンのリザーブドライバーに抜てきされたということでしょう。10月中にはスペインのカタルーニャ・サーキットで、2年落ちのマシンによる実走テストを敢行。今後はシミュレーター作業の他に、初年度のグランドエフェクトカーを使ってのサーキットでのテストも予定されているようです。
もちろんこれですぐに「F1ドライバー平川亮の誕生」とはいかないでしょう。しかし日本人のF1に至る道が、これまでのようなホンダ一択でない可能性が出て来たことは確かですし、その意味は非常に大きいと思います。
何より近年、20代前半でのF1デビューが普通になってきた中、29歳の平川選手が今回成し遂げたことには、ある種の爽快さがありました。
鈴鹿に来ていた松下信治選手も「僕も頑張らないとな……」と独り言を言ってましたが、国内で活躍する日本人ドライバーたちの間でもかなりのインパクトがあったと想像します。
「若い方が速い」というこの業界の思い込みを、平川選手にはぜひひっくり返してほしいものです。
文・柴田久仁夫（しばた・くにお）
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第18戦：カタールGP
10月6日（金）22:30～フリー走行
10月7日（土）2:00～予選
10月7日（土）22:00～スプリントシュートアウト
10月8日（日）2:30～スプリントレース
10月9日（月）2:00～決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
| レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
|---|---|---|---|
| 第1戦 | バーレーンGP | 3月3日（金） ～4日（土） | 3月5日（日） |
| 第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日（金） ～18日（土） | 3月19日（日） |
| 第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日（金） ～ 4月1日（土） | 4月2日（日） |
| 第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日（金） ～ 29日（土） | 4月30日（日） |
| 第5戦 | マイアミGP | 5月5日（金） ～ 6日（土） | 5月7日（日） |
| 第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日（金） ～ 20日（土） | 5月21日（日） |
| 第7戦 | モナコGP | 5月26日（金） ～ 27日（土） | 5月28日（日） |
| 第8戦 | スペインGP | 6月2日（金） ～ 3日（土） | 6月4日（日） |
| 第9戦 | カナダGP | 6月16日（金） ～ 17日（土） | 6月18日（日） |
| 第10戦 | オーストリアGP | 6月30日（金） ～ 7月1日（土） | 7月2日（日） |
| 第11戦 | イギリスGP | 7月7日（金） ～ 8日（土） | 7月9日（日） |
| 第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日（金） ～ 22日（土） | 7月23日（日） |
| 第13戦 | ベルギーGP | 7月28日（金） ～ 29日（土） | 7月30日（日） |
| 第14戦 | オランダGP | 8月25日（金） ～ 26日（土） | 8月27日（日） |
| 第15戦 | イタリアGP | 9月1日（金） ～ 2日（土） | 9月3日（日） |
| 第16戦 | シンガポールGP | 9月15日（金） ～ 16日（土） | 9月17日（日） |
| 第17戦 | 日本GP | 9月22日（金） ～ 23日（土） | 9月24日（日） |
| 第18戦 | カタールGP | 10月6日（金） ～ 7日（土） | 10月8日（日） |
| 第19戦 | アメリカGP | 10月20日（金） ～ 21日（土） | 10月22日（日） |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日（金） ～ 28日（土） | 10月29日（日） |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11月3日（金） ～ 4日（土） | 11月5日（日） |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日（木） ～ 17日（金） | 11月18日（土） |
| 第23戦 | アブダビGP | 11月24日（金） ～ 25日（土） | 11月26日（日） |