レーシングドライバーの中野信治氏が、2023年第21戦サンパウロGPにおけるフェルナンド・アロンソが見せた対セルジオ・ペレスの駆け引きについて、レーサーならではの視点で見識を示している。
2023年のサンパウロGPでは、マックス・フェルスタッペンが今季17勝目をマーク。2位にはランド・ノリスが入った。表彰台残り1つの枠はフェルナンド・アロンソとセルジオ・ペレスが争う状況に。
71周の決勝レースにおいて、アロンソとペレスはラストスティントでソフトタイヤを装着。3番手走行のアロンソを、4番手ペレスが追いかける展開となった。残り16周となる56/71周時点で両者の差は1秒以内になり、ペレスはDRSを使ってアロンソを抜きにかかる。だが42歳の大ベテラン、アロンソはここからペレスの猛追を防ぎ、終盤まで3番手の座を守り続けた。
残り2周となる70/71周のターン1で、アロンソはペレスに抜かれ、4番手に順位を落としてしまった。するとファイナルラップのターン4でアロンソはDRSを使って抜き返し、再度P3に浮上。最後は最終セクションの立ち上がりでアロンソはペレスの追い上げをしのぎ切り、0.053秒差で先着。この結果アロンソが3位表彰台、ペレスは4位となった。
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レース後、アロンソは会見の場で「とても激しいレースだった。今季、一番接戦だったのは間違いない」と述べ、ペレスとの戦いを回顧している。
「まったく気が抜けなかったし、タイヤを温存しつつチェコ(ペレスの愛称)のDRSに備え、バッテリーもセーブしながら走っていた」
「最後のスティントではラスト5周までコントロールできると思っていたんだ。そして最後の5ラップはプッシュし始めたんだよ。タイヤも残っていたし大丈夫だと思ったんだけど、彼も同じくプッシュしてきたね。残り2周で抜かれたときには“これで表彰台を逃した”と思ったよ。でも最後にチャンスが巡ってきたんだ」
すぐ後ろでペレスにDRSを使われながらも、長らくポジションを守り続けることができたため“DRSなしでなぜ戦えたのか?”と問われると「前を走ったほうがダウンフォースも多いし、クリーンエアも得られる。タイヤマネジメントという点でも有利に働くんだ」とアロンソは返答している。
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「僕の後ろを走る彼はターン10~12にかけて苦しんでいた。そこが勝負のカギだったと思う。その3つのコーナーが(ターン1での)オーバーテイクには重要で、前のマシンのほうがグリップが良いんだ。だからそこでは絶対にミスしないよう心がけた。ミスしたらチェコに接近を許してしまうからね」
「それとストレートでもチャンスを与えないようにしていた。ライン取りに関しては同じラインを走らないようにしていたし、チェコに明確な攻略法を示さないようにした」
「ラインを変えることでクリーンエアを得つつ、彼のノーズに乱流を与えるようにしていたんだ」
今季のチャンピオンマシンであるレッドブルRB19はDRSによる効果的なオーバーテイクを各サーキットで見せており、アストンマーティンのAMR23で前のポジションを守り続けるのは至難の業と見る向きも強い。
この時の両者について中野氏は『DAZN』生中継の解説で「アロンソは通るラインが違う」「レッドブルのDRSをしのぎ続けている。これは本当にすごい技術を駆使している」と感嘆の言葉を口にしていた。
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そして『DAZN』の『WEDNESDAY F1 TIME #36』において、中野氏は改めて「もはや神業に近い」「すごすぎる」と発言。2度の世界王者アロンソがインテルラゴスで見せたテクニック、及び両者のクリーンな勝負に賛辞を贈っている。
セクター2区間終盤とセクター3区間の序盤、ターン10~12にかけてのライン取りが、アロンソはエイペックスに付けてのアウト・イン・アウトではなく、膨らみながらアウト側のラインを選んで通過していたという。
番組MCのサッシャ氏が「ここですね。ターン10、11、12が違う」と語りつつ、スロー映像を再生させる。この場面を見ながら中野氏は「ここ、バンクがついているんですよ」と、アロンソの走行ラインを見ながら解説した。
中野「アロンソ本人も(会見で)勝負どころだと言っていたんですけど(ターン10で)インに付いていないですよね」
サッシャ「本当だ。これ(オンボード映像は)ペレスです。前がアロンソ。ペレスは通常のラインで、中の縁石に乗せようとしている」
中野「アウト・イン・アウトの正しいというか、(ペレスは)通常のレコードラインと言われるラインですよね」
サッシャ「(アロンソは)全然インを走っていない」
中野「まったく(インを)走っていないんです。よく見ていただくとわかるんですけど、ここバンクが(ターン10のアウト側に)付いているんですよ。バンクが結構付いていて、バンクにうまく沿って、アロンソは走っているんですよね」
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中野「通常なら、距離がものを言うわけです。(走行する)距離は短いほうがやっぱり速い。でもこの場合、バンクって付いた後にバンクがなくなるんです。そのなくなるところで、クルマってトラクションが一瞬抜けるんです。それを、アロンソは外側をずっと走ることによって、抜けを減らすんです。アールが緩くなっている分、ステアリングのアングルが少ない。それ(ハンドルを傾ける角度)が少なければ少ないほど回転も上げられるし、もちろんトラクションも掛けやすくなる」
中野「そしてプラスアルファ、次が左コーナー。大回りしていっても(ターン11、12と)左コーナーが続くので、あまりロスがないんですよね」
サッシャ「バンクで外側を走るのはインディとかのオーバルコースで、オーバルのトラックってイン側を走らないですよね。上側を走っていますよね」
中野「(ステアリングの)舵角を少なくしたほうが速いという考え方で、それはバンクが付いているからできるんです」
サッシャ「(アロンソは)インディ500とか(オーバルコースを)出ていますよね」
中野「経験しているんです」
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F1に限らず、ル・マンやインディカーなど、各コンペティションで戦ってきたアロンソ。それだけに、トラック上にあるオーバルのバンク効果を熟知していたようだ。だからこそ、定石であるアウト・イン・アウトではなく、バンクを使ってアウトに膨らみながら走行していた模様。
アロンソの狙いとしては、ターン10、そしてターン12からの立ち上がりでトラクションの加速を重視し、ペレスにストレート区間で迫られないよう、戦い続けていたとのこと。
サッシャ「(映像をターン10に)戻してみると、クリップで(アロンソとペレスの差が)かなり縮まる。これが一番近いところかな」
中野「アロンソはもう出口重視(ターン10からのトラクション)になっている」
サッシャ「(ターン10で)ここまで迫ったのに、その後(ターン11~12にかけて)アロンソが小さくなりましたよね。ということは、コーナーを使って差を広げたと」
アロンソはターン12でも外に大きく膨らんで通過していた。これはターン13、14、15からストレートエンドのターン1に向けての布石となっていた模様。
中野「最終コーナーも(アロンソは)思いっきりアウトに行って。同じ考え方ですよね。(ステアリングの)舵角を少なくして。(ストレートエンドの)1コーナーに向けてスピードを乗せる、ということを考えると、これはアリなんですよね。考え方としては」
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インテルラゴスの抜きどころはストレート区間のDRS終りとなるターン1とターン4となる。アロンソは後ろから迫るペレスとの接近戦を避けるため、レース終盤はストレート前のトラクションを重視する戦術で、3番手を守り続けた。
そして一度ペレスに抜かれたものの、ファイナルラップのターン4で抜き返し、3番手の座を取り戻している。結果としてアロンソは0.053秒差で3位表彰台を確保した。名勝負と評されたアロンソvsペレスの戦いは、アロンソのレース巧者ぶりによって実現した“極限の戦い”と言えるのかもしれない。
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |