2024年の第3戦オーストラリアGPでは、マックス・フェルスタッペンが序盤でリタイアとなり、カルロス・サインツが今季初優勝を果たした。一方で角田裕毅が7位入賞で今季初入賞となるなど、多くの注目を集めたレースとなった。
このレースは57/58周目走行中、ジョージ・ラッセルがターン6でクラッシュしたこともハイライトに。このクラッシュについては、すぐ前を走っていたフェルナンド・アロンソの減速が要因になったとして、スペイン人ドライバーには20秒のタイムペナルティが課された。
この一件について、レーシングドライバーの中野信治氏がレーサーならではの見解を示している。クラッシュを誘発したアロンソに非があるというスチュワード裁定になったが、減速については走行データの面でも明白だったようだ。
アストンマーティンのアロンソは42/58周目に第3スティントへと入り、ここから最後まで走り切る流れとなった。ラッセルは46周目にピットインを行い、アロンソの3秒後方でトラックに復帰。ここから前にいるP6アロンソとの差を、ラッセルがどんどん詰めていく。残り7ラップの52/58周に入ると、両者の差はDRS圏内の1秒まで詰まる。アロンソとラッセルはこの後もバトルを続けた。
Getty Images
ラップリーダーのサインツが58周のファイナルラップに入った直後、57周目のラッセルがターン6でクラッシュし、すぐさまバーチャルセーフティーカーに。追い抜き禁止のまま、レースはフィニッシュとなった。
イギリス人ドライバーはマシンが傾きながらストップしたあと「I'm OK」とチーム無線で口に。マシンは大きく壊れたものの、自身は無事だと報告している。
ラッセルはDNFとなり、アロンソはそのまま6番手でチェッカーを受けた。だがレース後、アロンソは57周目のターン6手前で不必要な減速をしたとされ、後ろのラッセルがクラッシュする要因を創出したとのスチュワード裁定に。アロンソには20秒のタイムペナルティが課され、8位降格。また、3点のペナルティポイントも受ける運びとなった。
DAZN
このワンシーンについて『DAZN』の『WEDNESDAY F1 TIME #5』ではアロンソとラッセルに何があったのか検証。映像を見ながらレーシングドライバーの中野信治氏、番組MCであるサッシャ氏が、ターン6手前の駆け引きについて言及した。
アロンソが57周目に操作した、実際のデータを中野氏は確認したという。
中野「かなり(ターン6の)手前でブレーキを踏んでいるなと。(後ろにいるラッセルとの)近づき方を見ていても、それは明確ですよね」
サッシャ「これがルール的には20秒のタイムペナルティということは、ブレーキテスト的な危険なドライブに認定されてしまったと」
中野「実際にデータを見ても確かに手前の地点で(ブレーキを)踏んではいますし……。ただ、言い方を変えるとテクニックの一つでもあると思うんです。手前でブレーキを踏んでいるんですけど、アロンソももちろんベテランだしわかっているので。追突されるような距離感では実際になかった。ブレーキテストをしたって言われると、それは違うよ、という感じだと思う」
中野「コーナー出口に向けて、相手のダウンフォースを失わせて、コーナーの出口で自分のほうが(トラクションを)稼いで相手のスピードを殺すためのテクニックでもある」
DAZN
実際に映像を見ながら、番組ではアロンソの走行について検証。52周目からラッセルがクラッシュした57周目まで、ターン6に至るアロンソのオンボードにあるリアカメラを、6ラップぶん並べながら紹介した。アロンソが走行中、何速に入れ、スロットルとブレーキをいつ操作したのか、速度は何キロ出ているのかもすべて可視化されている。
するとターン6のかなり手前で、57周目だけアロンソはブレーキを踏んだ。そして一度はブレーキを離し、他のラップでは270キロ台で通過する区間で、245キロまでスピードは低下。これで後方のラッセルがアロンソの後ろに近づいてくる。
DAZN
そしてターン5~6の間にあるアラムコのゲートを過ぎたところで、アロンソは一度ギアを7から6に落とす。番組MCのサッシャ氏は入れているギアの映像表示を見ながら「7、7、7、7、7、6……これ、カジノだったらジャックポットにならないです」と、57周目だけ、アロンソはギアを7から6に落としていたと強調した。
中野氏もターン6のかなり手前で6速に入れた映像を見ながら「ダウンシフトするような区間ではないですよね。結局スピードが落ちてくると回転も落ちてくるんで。(ターン6の)出口に合わせて回転を落とすということもあるんですけど。この後ブレーキをまた踏んでいるのに(6速から7速に)シフトアップしているんです」
アロンソはターン6のかなり手前でブレーキを踏み、速度を30キロ以上落としてから、今度は7速に戻していたことがわかる。
中野「結局回転が6速だと高くなりすぎてしまうので“あ、やっぱダメだな”となってもう一回(ギアを)上げた」
DAZN
そしてターン6に差し掛かるところで、アロンソは57周目だけ226キロまで落としていた。他の52~56周目までは240~275キロで走行していたことを踏まえても、57周目だけ突出して減速していたことになる。
サッシャ「ラッセルにしてみると50キロも速度が違う。(57周目のターン6で)近づきすぎて、これでおそらく乱気流もあってリアを失った」
中野「ここは元々若干バランスを崩しやすいコーナーでもあるんですよ。コーナリングしながらブレーキもしていくんで。空力が変わりやすいんですよね。それプラス(前のマシンに)近づきすぎるとダウンフォースを失いますから。その状態でいつもと同じスピード感で、思いのほか近づいてしまった」
サッシャ「普通のコーナーだったらワイドに走っても(コース上に)戻って来られるけど、あのコーナーだったんで、グラベルもあるし、壁に当たってしまった」
DAZN
アルバート・パーク・サーキットのターン6はエスケープの行き場がなく、コースアウトが即グラベル+クラッシュに直結するセクションでこのような結末になってしまった。中野氏が「追突されるような距離感では実際になかった」と見解を述べたように、アロンソ本人はラッセルをクラッシュに追い込む意図ではなく、残り2周でP6を守り切るため、ターン6からの立ち上がり~セクター2区間における対メルセデスを意識した、減速の駆け引きだった可能性が高い。
結果的に6位死守とはならずペナルティで8位降格となったものの、百戦錬磨アロンソのレース巧者ぶりを示したワンシーンと言えるのかもしれない。
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 2月29日(木) ~3月1日(金) | 3月2日(土) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月7日(木) ~8日(金) | 3月9日(土) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月22日(金) ~ 3月23日(土) | 3月24日(日) |
第4戦 | 日本GP | 4月5日(金) ~ 6日(土) | 4月7日(日) |
第5戦 | 中国GP | 4月19日(金) ~ 20日(土) | 4月21日(日) |
第6戦 | マイアミGP | 5月3日(金) ~ 4日(土) | 5月5日(日) |
第7戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月17日(金) ~ 18日(土) | 5月19日(日) |
第8戦 | モナコGP | 5月24日(金) ~ 25日(土) | 5月26日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月7日(金) ~ 8日(土) | 6月9日(日) |
第10戦 | スペインGP | 6月21日(金) ~ 22日(土) | 6月23日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 6月28日(金) ~ 29日(土) | 6月30日(日) |
第12戦 | イギリスGP | 7月5日(金) ~ 6日(土) | 7月7日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月19日(金) ~ 20日(土) | 7月21日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 7月26日(金) ~ 27日(土) | 7月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 8月23日(金) ~ 24日(土) | 8月25日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 8月30日(金) ~ 31日(土) | 9月1日(日) |
第17戦 | アゼルバイジャンGP | 9月13日(金) ~ 14日(土) | 9月15日(日) |
第18戦 | シンガポールGP | 9月20日(金) ~ 21日(土) | 9月22日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月18日(金) ~ 19日(土) | 10月20日(日) |
第20戦 | メキシコGP | 10月25日(金) ~ 26日(土) | 10月27日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月1日(金) ~ 2日(土) | 11月3日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月21日(木) ~ 22日(金) | 11月23日(土) |
第23戦 | カタールGP | 11月29日(金) ~ 30日(土) | 12月1日(日) |
第24戦 | アブダビGP | 12月6日(金) ~ 7日(土) | 12月8日(日) |