ガールズケイリンの頂点を決める「ガールズグランプリ2021」の季節がやってきた。
今年は記念すべき10回目の大会。2012年から始まったガールズケイリンは年々急速な進歩を遂げ、実力、人気、そして注目度と、存在感は大きくなっている。1年を戦い抜いた末に選ばれた精鋭7選手が、富士山のお膝元で日本一の座を懸けて激突する。
今大会は12月28日に静岡県・静岡競輪場でメインレースとして行なわれる。1着賞金は1030万円（副賞含む）。当地で行なわれるのは18年以来3年ぶり2回目で、今年が区切りの10回目。第1回は今大会で6年ぶりのグランプリ出場を決めた小林莉子が制している。
女子の競輪は戦後すぐに男子とほぼ同時に始まったものの、15年で一度幕を閉じた。その後は長い間話題にならなかったが、21世紀になってJKA（日本自転車振興会）会長に就任した下重暁子氏が復活を打ち出し、女子の自転車競技者によるエキシビションなどを経て、プロの「ガールズケイリン」として復活した。12年のスタートから選手数は年々増え、現在は約160人（男子は約2200人）がいる。
スタートした2012年から年末には日本一を決めるレースとして「ガールズグランプリ」が創設。「ガールズドリーム」、「ガールズケイリンコレクション」など年間にいくつかあるビッグレースの中でも別格で、選手にとって最大の目標になっている。
出場選手は7人で、五輪の個人種目メダル獲得者、11月に福岡県・小倉競輪場で行われた 2つのトライアルレースのそれぞれの勝者、そして年間の獲得賞金上位者に出場権が与えられる。もちろん、トライアルに出場するためにはそこまでにトップクラスの成績を残さなければならず、ガールズグランプリに出場する選手はほんの一握りのスーパースターと言える。
ガールズケイリンが始まって10年。その魅力は年々増している。当初は「人寄せパンダ」的に見る向きもあったが、練習、レースに真剣に取り組む選手、指導者の努力が実り、わずかな期間に飛躍的にレベルアップした。普段はどこにでもいそうな女性が、いざレースになると全身全霊を懸けて戦うピュアな姿に惹かれるファンは多い。
男子の競輪の場合は、同県、同地区、同期などが縦に並んでラインというものを組み、まずはライン同士の団体戦から始まる。人間関係を知れば知るほど競技の“コク”が出てくるのだが、初心者には最初の敷居がやや高い。
その点、ガールズにはラインはなく、個と個の力勝負。脚質差や展開の有利、不利はあっても、最終的には強い選手、好調の選手、うまい選手が勝つ。単純明快さが大きな魅力だ。
今年の話題の中心は何といっても児玉碧衣の4連覇がなるかどうか。ここ数年のガールズ界を引っ張り、その脚力はもちろん、愛くるしいルックスと飾らない性格で人気も抜群。特に今年後半は向かうところ敵なし状態で、7月の静岡開催から現在34連勝中。断然の中心だ。
だが児玉の姉弟子（師匠は藤田剣次）で東京五輪代表の小林優香、妹弟子のニュースター・尾方真生の底力も侮れず、手の内を知っているだけに逆転も十分。また、児玉が西の横綱なら、人気、実力で東の横綱といえる高木真備の初優勝があっても全くおかしくない。
2017年の覇者・石井寛子、初代チャンピオンの小林莉子、新鋭・坂口楓華らも実力差は少なく、展開次第でどの選手にも上位進出の可能性がある激戦になりそうだ。
ガールズケイリンが人を引きつけるのは、最後まで諦めずにゴールまで必死にペダルを踏み込む姿勢だろう。それでいて、レースを離れればどこにでもいる元気で明るい女の子に戻る。このギャップも大きな魅力の一つ。ぜひレースに注目してもらって、彼女たちの輝く姿をご覧いただきたい。
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