破壊的な音を残し、白球が一筋の線のようになってすっ飛んでいく。ポランコのバットが、剛球自慢が居並ぶパ・リーグの投手を相手にする交流戦での鍵を握る。
とにかく勤勉で、礼儀正しい男だ。日々、試合前練習が始まる時には、顔を合わせる人全てに会釈をする。監督、コーチ、ナイン、裏方さんだけでなく、スタンドから取材を続ける我々報道陣にだって目が合えばペコリとお辞儀しながら愛くるしい笑みを振りまく。試合が始まれば、第1打席に向かう際に審判や相手ベンチにも頭を下げる。「尊敬の意味を込めてのあいさつを必ずしています」とメジャー時代から続けているこの助っ人の流儀だ。
プレー面でも、素直に周囲の声に耳を傾ける。メジャーでは過去に大型契約もつかみ、通算96発&98盗塁の堂々たる実績を誇りながら、それを鼻にかけることなく日本の野球に順応するように日々、努めている。5月上旬には打率が2割3分台と不調な時期もあったが、阿部作戦兼ディフェンスチーフコーチや他の選手に自ら助言を求め「体が開かないようにして、最短でバットを出すことを心がけた」と修正に努めて乗り越えた。
12日のDeNA戦(横浜)での第2打席で左翼席へアーチを放つと、そこから2つの四球を挟みながら9打数連続安打をマーク。1988年のクロマティに並ぶ巨人の外国人選手最多記録となった。
開幕直後は他球団も一、二塁間に3人の内野手を配置するなど極端な守備隊形に敷くこともあったが「1ヶ月間くらいは引っ張りばかりで、相手のシフトも右寄りになっていたんですけど、自分の中で大事なのは置かれているところで適応することだと思うので」と中堅から反対方向への打撃も意識するにつれ、打撃も安定感を取り戻した。5月は27日の日本ハム戦(札幌ドーム)開始前時点で、打率3割3分3厘、4本塁打と好調をキープしている。
そんなポランコが最も大事にするマインドが透けて見えたシーンがあった。5月18日の広島戦(東京ドーム)。巨人が昨季から苦戦する床田の内角高めの直球を捉え、先制となる8号ソロを右翼席へ突き刺した。同じく床田から3ランを放った盟友・ウォーカーと共に試合後のお立ち台に上がると「ジャイアンツ ハ ツヨイ!」と日本語で絶叫した。
巨人ファンのハートをわしづかみにしたこの言葉こそ、背番号23の原動力となっていると個人的には思っている。助っ人陣と日々、コミュニケーションを取る原監督が代弁する。「ポランコはなんか、ピッツバーグでは経験出来なかったことが出来ているって言うんだよね。『強いチームにいると、こんなに一つの勝利に向かってみんなで団結し、勝利を喜び、負けた時に悔しがる。もう、それがたまらない』って言うんだよ」。
ポランコがパイレーツでメジャー初昇格を果たしたのは2014年シーズン。14、15年こそナ・リーグ中地区2位となりワイルドカードゲームに出場したが、いずれも敗れて地区シリーズ進出は逃す。16年以降は下位に沈み、特に19年から21年までは地区最下位と優勝争いとは無縁のチームとなっていた。
今季、移籍した巨人は、開幕直後から首位を快走。故障者が増えたことで苦しい時期もありながら、現在も激しい首位争いを演じている。ポランコにとっても新鮮に感じ、刺激になっている日々なのだろう。常に全力疾走を怠らず、味方のホームランや得点時には、ベンチ前で飛び跳ねて喜びを表す。誰よりも勝利に飢え、誰よりも勝利に執念を燃やす。だから言いたい。あなたのような献身的な助っ人がいるから、ジャイアンツは強い、と。
文・西村茂展
1980年5月19日生まれ。41歳。2003年に報知新聞社入社。アマ野球、巨人、メジャー担当を経て、今年は巨人担当キャップ4年目。
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