日本生命セ・パ交流戦2022が5月24日に開幕する。新型コロナウイルスの影響により2年ぶりに開催された昨年の交流戦は、オリックス・バファローズが11年ぶり2回目の優勝。リーグ間の成績は、セ・リーグが12年ぶりに勝ち越して幕を閉じた。
今年は千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希の完全試合に始まり、福岡ソフトバンクホークス・東浜巨がノーヒットノーランを達成。中日ドラゴンズ・大野雄大は延長10回の2アウトまで“完全試合”を達成するなど圧倒的な『投高打低』となっている。
そこでDAZN NEWSでは、DAZNの解説陣にセ・パの注目選手についてインタビューを実施。今回は秦真司氏が「三冠王に最も近い」という、東京ヤクルトスワローズの村上宗隆について伺った。
※成績は5月12日時点
村上の成長は「準備力×対応力」
──いよいよ5月24日から日本生命セ・パ交流戦2022が開幕します。前回の岡本和真選手に引き続き、今回は村上宗隆選手について伺いたいと思います。ここまで打率.268、本塁打9、打点31を記録し、先日は2試合連続の満塁本塁打を放ちました。
秦真司（以下、秦） ボールの飛距離もさることながら打率も残し始めていて、個人的には三冠王に一番近いバッターだと思っています。左バッターであり足も遅くないので、内野安打も計算できる。そう考えると、岡本よりも三冠王に近いですね。
今年も岡本と村上が打撃部門を争っています。この戦いはこれからも続くでしょう。右の岡本、左の村上は日本を代表するレベルの高いバッターです。
──ホームランランキングトップの岡本選手と打点トップの村上選手。2人が高いレベルで争っています。
秦 彼らに共通しているのは、下半身の踏ん張りです。そういったフィジカル面も一流ですし、最近はメカニックの部分も超一流の域に達していると思います。この2人による高いレベルの争いを、これから何年もみられるのかと思うと楽しみです。
──今シーズンの村上選手の活躍をどのように見ていますか？
秦 オープン戦は少し元気がなくて、本塁打も遅かったですね。ただ、村上はスイッチを入れ気持ちを高めていくのが上手い選手です。レギュラーシーズンに入ってぐっと燃える部分があるのか、調子をあげています。シーズンインの時だけでなく、優勝争いや優勝が決まる瞬間、東京五輪の時など、ここぞのところで心の強さ、負けん気の強さを発揮して結果を出していますね。そこは岡本と違う部分です。
──技術面で昨年と変わった部分は？
秦 入団当初から逆方向に強い打球を打てましたし、ホームランも放っていましたから、威力についてはそれほど変わっていません。変わった点は、ヤクルトの野球を理解して洗練されたバッターになったことです。
──ヤクルトの野球とは？
秦 考える野球です。複合的に状況を判断して狙い球を絞る。打席に立った時の状況、投手の球筋や捕手の配球の癖などから、相手の特徴を理解する。こういうことを常に考えて打席に立っています。
特に捕手との駆け引きはかなり意識しています。「捕手が変われば野球が変わる」と言われるように、捕手によって配球の癖はあります。そこを意識して攻略することが大事であり、ヤクルトはそこを考えてプレーさせています。
さらに村上のなかには、ここまでの対戦経験が蓄積されています。その経験とヤクルトの野球が融合することで、対応できる場面が飛躍的に増えました。今の村上を抑えるのはかなり洞察力が必要かと思います。
──ヤクルトの準備力と村上選手の対応力によってバッターとして成長している。
秦 そうです。やはり相手もプロなので、全ての球に対応しようとすると難しい。狙い球、狙いから外す球をしっかりと見極めないと結果はついてきません。ヤクルトの選手たちには、そういった準備力が備わっています。
さらに村上自身のあらゆる球に対する引き出しが増えています。個人的に、村上はヤクルトに入ってよかったと思っています。
山本由伸にリベンジなるか？
時事通信
──今回はあまり対戦経験がないパ・リーグの投手が相手ですが？
秦 岡本よりも村上の方が成績を残すと思っています。パ・リーグの投手たちとは対戦が少ないですが、その経験の部分をヤクルトの野球が補ってくれるでしょう。首脳陣はビデオを見せて、どう攻略するかのイメージ作りをしていると思います。
プロ野球選手であれば、甘い球を仕留めることはできますが、そもそもそんなに甘い球はきません。だからこそ準備段階から相手の狙いを明確にする。打席では状況を考えて、狙い球を絞って勝負する。4打席で村上のなかに経験が蓄積されて、対応できるようになる。やはりヤクルトの準備力と村上の対応力が1つの見どころですね。
──気になる対戦相手は？
秦 岡本の時にも言いましたが、佐々木朗希との対戦は注目です。彼の場合は、わかっていても空振りする真っ直ぐを投げてきます。あの真っ直ぐに村上の対応力が通用するのか。真っ直ぐだけ投げるのであれば、対応できるでしょう。ただ、150キロに迫るフォークもある。変化球の可能性もある状況で、あの真っ直ぐをどう捉えるのか楽しみですね。
他にはやはり千賀滉大や山本由伸ですね。かなりの球威を持っている千賀の真っ直ぐと村上の『力vs力』の対決は面白いです。
──山本投手とは、昨年の日本シリーズでも対戦しています。
秦 第1戦の最初の対戦では村上がヒットを打ちましたが、後の2打席はともに三振しています。第6戦は4打数無安打と村上が山本に完璧に抑えられました。
当然、村上はかなり意識しているでしょう。負けん気の強い村上なので、打てなかった山本から打ちたいと思っているはず。オリックスも日本シリーズで敗れたヤクルトに勝ちたいと思っているはずなので、ヤクルトvsオリックスは注目のカードですね。そこで村上がどう結果を残すかに注目したいと思います。
インタビュー＝ 川嶋正隆
1986年5月9日生まれ、福岡県福岡市出身。大学卒業後に携帯サイト『超ワールドサッカー』でライター兼編集者として勤務。2018年からフリーライターとしての活動を開始し、2020年からは念願かなってDAZN NEWSでプロ野球を担当している。
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