3週間にわたって繰り広げられた日本生命セ・パ交流戦2022。東京ヤクルトスワローズが、14勝4敗でパ・リーグ6球団全てに勝ち越す完全優勝で幕を閉じた。
圧倒的な強さを見せたヤクルトの中でさらに輝きを放ったのが村上宗隆。打率.351、6本塁打、13打点の好成績に加え、勝ち越し打が2本、逆転打が2本、サヨナラ打が1本と印象的な結果を残してMVPを獲得した。
そこでDAZNで解説を務める秦真司氏に村上の凄さについて分析してもらった。
（インタビューは6月14日に実施）
──圧倒的な強さで交流戦を優勝したヤクルトですが、特に村上宗隆選手の活躍が光りました。圧倒的な成績を残して交流戦のMVPを獲得しています。
秦真司（以下、秦） 本当にすごい活躍ぶりでしたね。歴史に名を残すバッターになると思います。
──以前のインタビューでは三冠王に近いとおっしゃっていました。実際にここまで打率.295はセ・リーグ4位ですが、19本塁打、53打点はトップの成績です。
秦 村上のよさは軸がブレずにスイングができ、かつ強いボールを逆方向にも打てる点です。アベレージだけでなくホームランも狙える。そこがすごいところですし、だから三冠王は夢じゃないと思っています。
──パ・リーグのパワーピッチャーたちでも村上を抑えるのは難しそうでした。
秦 どんな投手でも村上との対戦は嫌だと思います。それは村上が対応力を持っているから。いいバッターは真っ直ぐを待っていてもカットボールやカーブ、スライダーなど変化球を打つことができます。村上もそういう好打者と同じように、真っ直ぐを待ちながら変化球に対応できる。さらに一般的には安全と言われているアウトローの球も打ってしまう。村上を抑えるためには、緻密な配球が必要になります。
──球界を代表するバッターになりました。
秦 昔はセ・リーグなら山田哲人、パ・リーグなら柳田悠岐がトリプルスリーで注目を集めるなど、野球界を引っ張る存在でした。しかしこれからは村上がその立場になる。彼が両リーグを代表するバッターになってくれるでしょう。
──ホームランの質も日本人離れしている印象です。特にソフトバンク戦のホームランは大谷翔平選手のような弾丸ライナーでした。
秦 大谷の打球速度が180キロを超えていたことで盛り上がりましたね。村上も打球に力があり、逆方向にも力強いバッティングができるなど大谷と似ている部分は多いですね。
──村上選手が活躍するとSNSではファンが“村神様”と言って盛り上がっています。ファンに愛される選手になりましたね。
秦 それくらいの活躍ぶりですよね。ぜひ皆さんにも聞いてほしいのが、村上の打球音です。他の選手と全く違います。ボールが潰れる音をぜひ聞いてほしいですね。
──この交流戦では特に勝負強さが光りました。勝ち越し打が2本、逆転打が2本、サヨナラ打が1本。絶好調です。
秦 村上の勝負強さを引き立たせたのが、脇役たちの存在だと思っています。今のヤクルト打線はそんなに目立った選手がいません。交流戦でも3割を打っていたのは村上だけです。ただ、チームとして勝負どころをわかった野球をしています。
下位打線や塩見泰隆、山崎晃大朗は村上に回せばなんとかなると思っているでしょう。今の村上はヤクルトの核です。存在感が大きくなっていますし、信頼度も増している。脇役たちがしっかりと自分の役割を全うし、チャンスで打席を回してもらった村上がしっかり期待に応える。これができているからこその結果です。
──交流戦を優勝して勢いに乗るヤクルトは、2位の巨人に7ゲーム差をつけています。すでに独走状態ですが、今後の展望は？
秦 ヤクルトの強い部分ばかりを話してきましたが、正直にいうとペナントはまだまだわからないと思っています。良くも悪くも中継ぎ次第。ここが崩れてくると落ちてくるでしょう。逆に他のチームは、ヤクルトの中継ぎを攻略できないと厳しいですね。
──夏場を越えると昨年からの勤続疲労も出てくるのでは？
秦 個人的には、昨年の疲労があるので今年のヤクルトは厳しい戦いになると思っていました。ここまでは地力がついたことを証明していますが、8月には1つの山がくるでしょう。他のチームもこのままでは終われないと思っているはずです。
特に交流戦で阪神が本来の力を取り戻しました。かなり怖い存在になると思います。DeNAも今永昇太が戻ってきて、ノーヒットノーランを達成するなど調子がいいです。一方で心配なのが広島と中日。この2チームに取りこぼさないチームがAクラスに入ってくると思っています。
──話にもあるように、阪神が勢いに乗っています。
秦 阪神は青柳晃洋が素晴らしい投球を見せています。彼が開幕からいなかったことは悔やまれますね。チームとしても開幕戦の大逆転負けの尾を引いてしまった。しかし雰囲気さえ変われば優勝を争えるだけの力があるチームです。交流戦では見事に流れを変えましたね。これからの戦いに注目したいと思います。
インタビュー＝ 川嶋正隆
1986年5月9日生まれ、福岡県福岡市出身。大学卒業後に携帯サイト『超ワールドサッカー』でライター兼編集者として勤務。2018年からフリーライターとしての活動を開始し、2020年からは念願かなってDAZN NEWSでプロ野球を担当している。
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