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【コラム】鷹の求道者・長谷川勇也へ贈る言葉「たくさんの感動と興奮をありがとう」|プロ野球

【コラム】鷹の求道者・長谷川勇也へ贈る言葉「たくさんの感動と興奮をありがとう」|プロ野球時事通信
【プロ野球 コラム】福岡ソフトバンクホークス一筋15年の長谷川勇也外野手が、現役引退を発表した。ホークス取材20年目となる田尻耕太郎氏は、長谷川の涙をどのように見たのか。
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ホークス一筋15年の長谷川勇也が、10月8日に突如、今季限りで現役を引退することを表明した。翌9日には引退会見に臨んだ。

まさか、嘘だろ……。この報を聞いて最初、思わずそう声が出てしまった。

10月2日に出場選手登録を抹消されていたが、今季もホークス打線の中で確かな存在感を示していた。近年は代打稼業の多かったが、5月29日のジャイアンツ戦では今季5度目のスタメンに「5番レフト」で名を連ねると、自身約3年ぶりとなる1試合2本塁打の活躍を見せた。

前半戦は49試合に出場して、打率.289、3本塁打、18打点、出塁率.388を記録。

「技術でしか相手に勝つことは出来ない。打席に入ったら自分の技術を出し切れるかどうか。それだけです」

年齢を重ねた中でどうしても体力や筋力でカバーできなくなる。だからこそ、より「打撃の技術」という本質を磨くのだ、と語っていた。

本拠地PayPayドームで打席に向かう際には、必殺仕事人のイントロの中に刀の効果音が鳴り、そして桜吹雪と「打撃一閃」の4文字が巨大ビジョンに映し出される。

ちょっとクサい特殊演出。他の選手ならばそんな風に感じるかもしれない。しかし長谷川にそれは一寸も感じない。むしろ惚れ惚れするくらい本当に格好良かった。

しかし後半戦。長谷川のバットから、しばし快音が消えた。東京五輪中断明けは20試合全て代打出場で、打率.133しか残せなかった。長打はゼロ。ただ、四球は4つ選び出塁率.300をマークしたあたりはさすがだった。

そして、先述したように今月2軍落ちした。そのわずか2日後、4日の月曜日には引退を決めて、球団や監督らに報告をしたのだと会見の中で明らかにした。

まだやれるはずなのでは……。

そう見る向きは少なくなかったはずだ。しかし、実際は違っていた。長谷川は引退会見の中で、決断の理由を次のように告白した。

「今シーズンのキャンプ初日に足がロックしたんですよ。歩けないくらいロックしたんですよ。でも、足首との付き合いも長いので、その時は自分で治すことができた。だけどシーズン中もたびたびあった。ちょっと違うなと違和感もあって、交流戦に入った頃からですかね。あー、ちょっとおかしいなと感じていました」

その言葉を聞いて、ここ最近疑問に思っていたことが解決したような気がした。

誰もが見て分かる通り、長谷川は気迫を前面に押し出してプレーをする男だ。象徴的なシーンとしてファンの心に刻まれているのが、昨年の日本シリーズ第3戦で見せた一塁へのヘッドスライディングだろう。間一髪で惜しくもアウトになり、地面を叩いて悔しがった。

また、凡退した後や敗戦後に、ベンチでわなわなと体を震わせて悔しさを表すシーンをこれまでに何度も目撃した。今年の前半戦にもあった。

しかし、この夏以降はそのような姿が見られなくなっていた。

「1年1年が勝負と思って、毎シーズンやっていました。やっぱり足がボロボロになったと自分で実感しましたし、それが打撃にまで影響してしまった。それが決断に至った一つです」

会見では男泣きした。冒頭の挨拶から涙が止まらなかった。長谷川本人はそれを予感していたらしく、ハンカチを2枚用意して臨んでいたそうだ。

また、このご時世のためにオンライン形式による会見で、その場に居合わせることができた報道陣も一部代表者に限られていた。そのため、会見が終わると、長谷川はドームのスタンド記者席へ足を運び、番記者1人1人に挨拶を行った。

そのままネット裏最上段の記者席に腰を下ろして、ホークスの練習をじっと見つめていた。

会見でも「引退すると決めてから、野球を見るのが楽しくなった。2軍にいる時は野球中継を見るのが嫌だったけど、今はプレーボールから試合終了までずっと見ていられる。一ファンとして」と話していたが、この時もまた「一ファンの目線ですよ」と話していた。

だけど、本人の言葉とは裏腹に眼差しは鋭いまま。ほとんど目線を外すことなく、若い選手たちの打撃練習をじっと見入っていた。

長谷川は卓越した打撃理論を、若手たちに惜しみなく注ぎ込んできた。無愛想に映りがちだが、一聞いたことに十で答えるタイプ。ファーム調整の頃、ある育成野手が風呂場で思いきってアドバイスを求めた。その場で熱く語るだけでは足りず、汗を流したばかりなのにもう一度練習着に着替えて室内練習場で打ち込みに付き合ったこともあった。

影響を受けた若鷹は数多いる。現在では一軍で主軸を打つ栗原陵矢もその一人だ。引退発表の日に行われたナイターでは、打席に入る時の登場曲を、かつて長谷川が使用していた「Do It/Tuxedo」と「前に!/SMAP」に変更して感謝の気持ちを表した。

15年間の現役生活。若手時代には指を骨折し、骨がくっついた後も真っ直ぐに戻らないままプレーを続けた。そして、右足首の大きな怪我によって運命は狂わされた。

「順調というか、きれいな道ではなかった。山あり谷あり。でも、ぼくだから、この山を登って、谷を越えてこられたと思います」

今後については「少しゆっくりします」としたが、「ずっと野球ばかりしてきたんで、ゆっくりはできないかな」と照れたような笑顔も浮かべた。

指導者として後進育成を望む声が上がるのは至極当然だ。筆者もそれを大いに期待している。

でも、ひとまずはお疲れ様でした。そして、たくさんの感動と興奮をありがとう、ハセ。

文・ 田尻耕太郎

1978年生まれ、熊本市出身。法政大学卒。ホークス球団誌の編集を経て、2004年夏にフリーに。一貫して「タカ番」スタイルの現場主義を大切に取材活動を続けており、2021年にちょうど20年目のシーズンを迎えた。「Number」など雑誌・ウェブ媒体への執筆のほか、ラジオ出演やデイリースポーツ特約記者も務める。

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