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勢いのオリックスか、経験のロッテか…専門家が占うパ・リーグ優勝争いの行方は|プロ野球

勢いのオリックスか、経験のロッテか…専門家が占うパ・リーグ優勝争いの行方は|プロ野球時事通信
【プロ野球 インタビュー】後半戦を迎えている2021シーズンのプロ野球。DAZNで解説を務める飯田哲也氏にパ・リーグの優勝争いの展望を語ってもらった。
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今年のペナントレースもいよいよ佳境を迎えている。パ・リーグでは、好調のオリックス・バファローズと千葉ロッテマリーンズがリーグを牽引。前評判が高かった東北楽天ゴールデンイーグルスや王者の福岡ソフトバンクホークスが苦戦を強いられている。

そこでDAZN NEWSでは、解説を務める飯田哲也氏に優勝争いの展望を語ってもらった。

※インタビューは9月1日に実施

王者がまさかの大苦戦

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──混戦だったパ・リーグも徐々に上位と下位の差が開き始めていますが、優勝争いはどのチームまでに絞られているとお考えですか?

飯田哲也氏(以下、飯田 ) 今のパ・リーグはオリックスとロッテの調子がいいですね。楽天とソフトバンクがそこにどれだけ食い込めるかという様相になってきました。現時点で見ると上位2チームが有利に見えますが、個人的にはまだ波乱があると思っています。

──具体的に波乱とは?

飯田  上位3チームは、ソフトバンクが怖いと思っているはず。ここ数年の強さを見ていると、後半戦の戦い方を最も熟知しているチームです。昨年も9月10月に、一気に勝ち越して優勝を決めました。

今年はそのソフトバンクの調子がなかなか上がってきませんが、それでも他の3チームは怖さがあるはずです。特にオリックスが最もソフトバンクを警戒しているでしょう。後半戦最初の対戦では、先発ローテーションを変えて山本由伸投手と宮城大弥投手といった一番手と二番手の投手をぶつけてきました。そこはソフトバンクの怖さを知っているからこそで、調子が上がってこない今のうちに叩いておこうという感じに見えますね。

週末にも同じカードがありますが、ソフトバンクにとってはこの3連戦の結果が大きく優勝を左右することになるでしょう。

──今季のソフトバンクはかなり苦しんでいる印象ですが、低迷の要因は?

飯田  ソフトバンクのパターンは、先制して逃げ切る形です。それは中継ぎが強力だからこそできる戦い方ですが、今年はケガ人が多く、後を任せる投手が定まっていません。その結果、先制しても逃げきることができない、らしくない戦いが続いています。

今はモイネロ投手や森唯斗投手といったキーマンが不在で、岩崎翔投手も抹消されました。ここまで核となる選手がいなくなると、それはきついですよね。

──打線もグラシアル選手のケガなどがあり元気がないように見えます。

飯田  爆発力がないですね。今の打線は柳田悠岐選手や栗原陵矢選手への依存度が高いです。彼らが打てないと勝てないという戦いが多い。1番、2番は出塁していると思いますが、肝心な3番、4番で返せていないのが現状ですね。

打線に活気が戻るためには、グラシアル選手がケガから復帰し、中村晃選手にあたりが戻ることが必要。今は3番、4番へのマークがキツくなっているので、かなり厳しい戦いになっています。

──連覇は限りなく難しい状況になっている?

飯田  残り40試合弱の状況で、3位に入るチャンスはまだまだありますが、優勝となるとタイムリミットは近づいています。

今年は本当に勝ちきれない試合が多いですね。引き分けが多いことは、悪いことではないですが、今年の内容を見てみると本来は勝てていた試合が引き分けになっている場面が多い。そこで勝てていれば、こういう展開にはなっていないでしょう。8回、9回を投げる投手がいないのでこの結果は仕方ないかもしれないですね。

前評判高かった楽天も苦しい戦いに

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──楽天も優勝を争うチームだと見られていましたが、現在3位です。ここまでの戦いぶりはいかがでしょうか?

飯田  今年の楽天は田中将大投手が復帰して、強力な先発陣が揃ったと言われていました。しかし、いざシーズンに入ると涌井秀章投手が抜けて、岸孝之投手も抜けて、田中投手も思ったような成績が出せていない。なんとかAクラスを保っていますが、今の順位から抜け出せない要因はそこにあると思います。

──楽天が浮上するきっかけを掴むために必要なことは?

飯田  今挙げた先発陣もですが、抑えの松井裕樹投手が足首を痛めて1カ月の離脱となりました。優勝を争う上で、松井投手が戻ってこないと話にならないですね。

ソフトバンクの低迷もそうですが、抑えというポジションは重要です。調子の良し悪しに関係なく、何年も経験している選手じゃないと耐えられないようなプレッシャーがかかるポジションです。「今は調子がいいから君が抑えね」で務まるポジションではない、とても難しい役割です。楽天がここから巻き返すためには、早く松井投手に戻ってきてもらうことが大事になるでしょう。

オリックスとロッテの差は経験

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──首位に立つオリックスは、投打に隙がないチームになり、今は勢いもありますね。

飯田  野手の若手が飛躍していますね。元々投手力があるチームですし、死角はないと思います。しかし終盤になると優勝のプレッシャーがかかってくる。そういった状況を味わったことがない選手がほとんどなので、どうなるかなと。今の勢いのまま突っ走る可能性もありますし、プレッシャーに潰れてしまう可能性もある。ここはとても予想しづらい部分ですね。個人的にはこのままの流れでいけるとは思っていなくて、もう1波乱、2波乱あるかなと思います。

──優勝争いの経験で言うとロッテは優勝からは離れていますが、CSを経験しています。これはアドバンテージにある?

飯田  そういった優勝争いの経験は、シーズン終盤に出てきます。そもそも優勝を意識するなというほうがおかしなことで、誰でも気になるものです。ただロッテは野球がうまいですし、優勝争いをしてきた経験があります。その点で、ロッテの方がオリックスよりもこの状況に慣れている。今のメンバーも優勝争いの経験者が多いので、ここから大きく崩れることはないでしょう。

──ロッテはまだ追いかける立場なので、目の前の試合をしっかりと戦うなど目標を設定しやすいですね。

飯田  実際に今のロッテはそういう戦いをしているように感じます。一方でオリックスは、色々と意識している気がしますね。ここ数年Bクラスにいて、今年は絶対にチャンスだと思っているはず。そこで、一番怖いソフトバンクを叩いておこうという監督の意図が見える。ロッテは普段通りに、目の前の試合を戦っていこうという戦い方です。

──そのオリックスですが、今年はラオウこと杉本裕太郎選手がブレイクし、打線の破壊力が格段にアップしています。

飯田  成長して自信にもなっていると思います。吉田正尚選手がいるから気楽に打てる部分もあると思いますが、4番というプレッシャーがかかるなかでよくやっています。

チームとしては、すごくいい流れの打線が組めています。1番の福田周平選手、2番の宗佑磨選手がすごく調子が良くて、3番の吉田選手、4番のラオウで走者を返す。プレッシャーがかかってくる終盤でも、この流れができるかがポイントでしょう。1番、2番の出塁が減ってしまうと、得点力が下がるのでそこに注目したいですね。

──投手のキーマンは?

飯田  やっぱり山本投手ですね。彼が投げた試合は、絶対に落とせない。山本投手はカードの初戦に投げるので、相手のエース級と投げ合う。そこで勝ちを拾えないようになると、ずるずるいくパターンもあると思います。

──追いかけるロッテのキーマンはいかがでしょう?

飯田  僕はずっと1番を打っていたので、各チームの1番バッターが気になります。ロッテは荻野貴司選手に期待していますね。実際に1番がいいチームが、上位にいる印象を受けます。オリックスも福田選手が1番に入って、チームも上がっていきました。ロッテも荻野選手が調子がいいと上位に来ている。1番は大事な打順で、そこが得点に絡むと流れも良くなるし、チームも乗っていけます。

──ロッテ打線は足も使える、本塁打も打てる、繋ぎもできるなど、相手からすると非常に嫌な打線です。まさにチームスローガンである「この1点を、つかみ取る。」を体現していますね。

飯田  荻野選手だけでなく、中村奨吾選手もいいですし、外国人はマーティン選手とレアード選手がいて迫力があります。若手では走り屋として期待に応える和田康士朗選手がいます。全体的に駒が揃っている感じがしますし、少ないチャンスをものにする力が一番あるなと感じますね。

相手チームからすると嫌だと思いますよ。先制してもしつこく追いついてくるチーム。いやらしい野球をする。そういう相手との対戦は嫌ですよ。

──投手陣についてはどのように評価されていますか?

飯田  先発の駒は揃っていて、ゲームを壊す投手もいなくてそつがない印象です。石川歩投手や二木康太投手などは、もう少し結果を期待されていたと思いますが、全体的に最小失点で抑える投球をしています。

──中継ぎは盤石だと思います。中でも佐々木千隼投手の活躍が素晴らしいですね。

飯田  期待されて入団しながらも結果が出ずにいましたが、中継ぎという自分の生きる道を見つけて、頑張っていますね。これまでは「先発じゃなければいけない」という思いがあったかもしれないですが、今は「どうやったらプロで長く野球をやれるか」の答えを見つけた感じがします。

どこにでもチャンスは落ちていると思います。例えば左腕ならワンポイントの道もあるでしょう。野手で足が早ければ、代走があります。守備がうまければ、守備固めの道がある。チャンスはいろいろなところに落ちていることを佐々木君は教えてくれましたし、希望を与えてくれていると思います。

優勝を左右するのは下位との対戦?

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──この2チームの今後の戦いはいかがでしょうか?

飯田  残り40試合ほどになったなかで、下位チームへの負け越しは大きく響いてきます。ここまできたら相性云々ではなく、優勝するためには勝たなければいけません。ただ、下位のチームが上位チームと対戦するときは気合が入るものです。「絶対負けないぞ」という気持ちで向かってくるので、チームの雰囲気が良くなります。

逆に上位のチームは、ふと力が抜けることがあります。そこを監督、コーチ、首脳陣が切り替えさせて選手の力を発揮させることが大事です。ここからは首脳陣の力も大事になってきます。気楽に戦ってくる相手に対して、こちらは負けられない。これからはそういった本当に厳しい戦いが続きます。

──下位との戦いも目が離せない?

飯田  逆に下位との戦いを落としてしまうと、優勝争いから脱落してしまうよと。なので皆さんにはそこも見て欲しいですね。

──下位チームでいうと5位の西武は爆発力があり、最下位の日本ハムは若手が勢いに乗ると面白いかもしれません。

飯田  それこそ西武は気楽になって、逆に打ち出す怖さもありますよね。また、若手は優勝争いとか関係なしに、常に一生懸命プレーします。対戦相手としては一生懸命が怖い。ミスをしても、向かってくる姿は嫌ですね。

──オリックスやロッテからすると上位対決が大事なのは当たり前で、下位との対戦で足元をすくわれないようにすることが優勝に向けて大事なことになりそうですね。

飯田  だからこそ、オリックスがローテーションを変えてきたことは少し疑問です。何度も言っているように、オリックスがソフトバンクをマークしているからこその策だったと思います。しかし、そこに戦力を集めると、他の部分で苦しくなる。

例えソフトバンクに勝っても、西武や日本ハムに負けてしまえば同じです。残り試合が10試合や、勝たなければいけない直接対決の時にローテーションを組み替えることはあります。ただ、残り40試合あるなかで、そこまでしてローテーションを変更する必要があったかなと思いますね。とはいえ、結局は勝ちきればなんとでも言えます。実際に週末のソフトバンクとの3連戦をオリックスが勝ちきれば、優勝争いから1チームが脱落することになります。なので、これからは各チームがどのような意図を持って戦うかが見ものですね。

インタビュー・構成=川嶋正隆

1986年5月9日生まれ、福岡県福岡市出身。大学卒業後に携帯サイト『超ワールドサッカー』のライター兼編集者として勤務。2018年からフリーライターとしての活動を開始し、『フットサル全力応援メディアSAL』の立ち上げに参画。2018年には、Fリーグに参戦したロベルト・カルロスの単独インタビューを行った。現在は『ABEMA TIMES』などに寄稿している。

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