今回のテーマは「新外国人選手」。助っ人外国人と言うほうが耳馴染みが良いかもしれない。
海を越えて日本の地に活躍の場を求めた彼らの働きは、チームの成績を左右すると言っても過言ではない。当たるか外れるか博打のような外国人選手の存在は、ファンにとっても非常に興味深いものだ。
今季は新型コロナウイルスの影響により現時点では来日できていないが、一足早く今季期待の新助っ人外国人選手を紹介していく。第7弾は楽天のルスネイ・カスティーヨだ。
ルスネイ・カスティーヨ(東北楽天ゴールデンイーグルス)
外野手/右投右打/キューバ出身/34歳
MLBのメディアは、古傷をえぐるような企画が大好物だ。特に頻繁に特集が組まれるのが「球史に残る不良債権」と題した高額の長期契約に関する失敗例の掘り返し。
長期契約への警鐘を鳴らす意味で興味深い企画だが、取り上げられる選手にしてみれば「もうそっとしておいてくれ」というのが本音だろう。その不名誉な特集に元ヤンキースの井川慶らとともに必ず登場するのが、今季から楽天でプレーするルスネイ・カスティーヨだ。
近年は野球大国キューバの有力選手たちがアメリカに亡命し、メジャーでのプレーがないにも関わらず長期契約を結ぶケースが多く見受けられる。例えばキューバ国内リーグの最強打者として日本のファンにも名が知れていたホセ・アブレウは、2013年にシカゴ・ホワイトソックスと6年6800万ドルの契約を結び、同じくキューバ代表の中心選手として09年のWBCで日本とも対戦したヨエニス・セスペデスは、12年にオークランド・アスレチックスと4年3600万ドルでサインした。
前者はMLBでも猛打を発揮し続けて昨季はア・リーグのMVPに輝き、後者も近年はからっきしだが16年までは毎年30本前後のホームランを放っており、契約時の年俸はむしろ格安に思えるくらいだ。このようにメジャーを代表するバッターに成長してくれれば何の問題もないが、もちろんそう簡単にはいかない。カスティーヨはそのダメな典型的な例だった。
カスティーヨの国内リーグにおける成績は文句のつけようがなかった。デビューイヤーの2008年から4年連続で打率3割以上を記録し、パワーに加えて3年目に盗塁王を獲得したように足でも魅せる。また、守備でも外野の花形であるセンターを守り、俊足を生かしてダイビングキャッチやホームランボールをもぎ取る派手なプレーを披露するなど、走攻守三拍子そろった好素材として各球団の注目の的となった。
しかし実際のところはカスティーヨをレギュラークラスの中堅手と見るスカウトがいる半面、第4の外野手レベルと評価する球団もあったようだ。カスティーヨは13年に亡命し、音楽プロデューサーのジェイ・Zが経営するエージェント会社と代理人契約を結び、彼の実力に対して「レギュラークラス」の立場を取っていたボストン・レッドソックスと14年に7年総額7250万ドル(約75億円)の大型契約を結んだ。
この契約はアブレウの総額をも上回り、亡命したキューバ人選手に与えられた高額契約ランキングの1位に今も君臨している。メディアはこの大盤振る舞いを「球団の未来へのギャンブル」と書き立てた。
8月末の契約締結から1カ月も経たない9月17日、カスティーヨはマイナーを経験することなくメジャーデビューを果たす。すると第二打席で二塁打を放ち実力の片鱗を見せると、そこから4試合連続で安打を記録。閉幕間際には4試合で2本塁打・8安打と打ちまくり、来季への期待を抱かせた。実際に2015年版の『ベースボール・アメリカ』選出のプロスペクトランキングではMLB全体の21位にランクされている。レッドソックスのファンは、まさかこの時がカスティーヨの絶頂になるとは夢にも思わなかっただろう。
15年は開幕早々に肩の怪我でDL入り。5月末に復帰後はコンスタントに出場機会を与えられるも打撃はパッとせず、守備でもエラーを連発するなど、ハイレベルなア・リーグ東地区に所属する名門レッドソックスのレギュラーとして物足りなさを露呈した。
翌年からはムーキー・ベッツ(現ドジャース)、ジャッキー・ブラッドリー Jr.(現FA)、アンドリュー・ベニンテンディ(現ロイヤルズ)のトリオが大きな怪我もなく外野3ポジションに君臨したため出る幕がなく、16年に9試合に出場したのを最後に、カスティーヨはメジャーの舞台から姿を消した。
17年以降はレッドソックス傘下のマイナー球団でプレーを続けるも上から声はかからず、それでも年俸約12億円が支払われている状況が、メディアの格好のネタになった。結局、2020年に契約が満了するまでにカスティーヨがメジャーで残した数字は99試合の出場で打率.262・7本塁打・35打点。1試合あたり約7500万円という空前絶後のコスパの悪さだった。
前述の通り16年以降はマイナーが主戦場となったカスティーヨだが、大きな故障やスランプは無く、マイナー最上位の3Aで毎年安定した成績を残していた。通常なら昇格してもおかしくない成績なのにお呼びがかからなかったのは、「マイナーに置いておく限りはどんなに高年俸でもメジャーのチーム総年俸に組み込まれることはなく、ぜいたく税を減らしたいレッドソックスが意図的に昇格させなかったのが原因」と見る向きもある。
それゆえに実力が錆びついたわけではないカスティーヨが日本でブレイクを果たす可能性は大いにある。その証拠に、16年以降の4シーズンは467試合に出場し、打率.293・42本塁打を記録。また、盗塁も51個を決めるなど、スピードが衰えていないことも証明した。打者としては初球からガンガン振ってくるフリースウィンガーだが、この手の選手には珍しく三振がべらぼうに多いわけではない。
逆方向のライトスタンドに放り込むパワーを持ち合わせるが、ホームランバッターと言うよりは二塁打を量産する中距離タイプだ。守備もセンターは厳しいにしても、両翼ならまだ及第点の守りは期待できるはずだ。
昨季はコロナ禍でマイナーリーグの全試合が中止となり、春季キャンプ以降はプレーする機会すらなかったカスティーヨ。オフに契約満了となり、ついにメジャーの舞台にカムバックできないまま、レッドソックスでの7年間を終えた。
ボストンだけでなく球界全体の黒歴史として不名誉な形で名を残してしまったカスティーヨは、日本の地で名誉を挽回することができるだろうか。史上最悪の不良債権と騒がれた男の今季年俸は格安の推定6800万円。契約には1億円を超える出来高が付いているが、それが支払われるほどの活躍を見せれば楽天にとってはいい買い物だ。
2021新助っ人外国人選手名鑑
- ジャスティン・スモーク(巨人)
- エリック・テームズ(巨人)
- メル・ロハス・ジュニア(阪神)
- ドビダス・ネバラスカス(広島)
- ドミンゴ・サンタナ(ヤクルト)
- コリン・レイ(ソフトバンク)
- ルスネイ・カスティーヨ(楽天)
- アダム・コンリー(楽天)
- アデイニー・エチェバリア(ロッテ)
- ロビー・アーリン(日本ハム)
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